機動警察パトレイバー the Movie。 | 江戸の杓子丸

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「機動警察パトレイバー the Movie」


98分 日  1989年


監督 押井守

製作 鵜之沢伸 真木太郎 久保真
原作 ヘッドギア
原案 ゆうきまさみ
脚本 伊藤和典
音楽 川井憲次
撮影 吉田光伸
出演 古川登志夫 冨永みーな 大林隆介 
    榊原良子 ほか



【完全ネタバレ】



出来すぎ?。☆☆☆☆★



〔ストーリー〕
 1999年の東京では、人型作業ロボット“レイバー”が工事現場や警察で導入され活躍していた。
また、湾岸ではそのレイバーを多数稼働させて東京湾改造計画“バビロン・プロジェクト”が遂行されているのだった。
 
 その頃、レイバーの暴走事故が相次ぎ、警視庁特車二課は計画的犯罪であることを知るが、その実行日はすでに迫ってきていて・・・。





押井監督は意外にバランスのいい人で、インタビューの動画とか見ると「たくさんの人に見て欲しい」とか「やはり映画館はお客さんがたくさんいないと・・・」という発言が多い。

勝手な印象で、「わからないヤツにはわからない」、「好きなものを作るだけ」みたいな監督かと思っていたら全然違った。

恐ろしいほどバランスが良くて面白い。
「パトレイバー」を見たことがない僕でも本当に面白かった。

以前、友達に観せてもらったのはこれだった。
その時の方がインパクト強かったな。

物語が少々テンポよく進みすぎるのかなぁ。
主人公・遊馬(あすま)巡査の挫折がないからか。

一度、調査にのめり込み過ぎて暴走し謹慎となるが、それくらい。
都合よく展開されているように感じてしまったかも。

かえって、こういう作品は記憶に残りにくいかもなぁ。

これ程素晴らしいストーリーテリングなのに、不満があるというのは何が足らないのだろう。
わからない。




押井監督独特の無機質感がすごくいい。

東京湾岸の一大プロジェクト「バビロン」。

工事現場で使われているロボット・レイバーに搭載されているOS「HOS」は天才プログラマー、帆場暎一が開発したものだったが、無人で暴走する事件が多発する。

遊馬の上司、後藤警部補が本庁の刑事にこの帆場の捜査を依頼。

真夏のギラギラ太陽の照るなか、刑事たちは帆場の住んでいた借家をまわる。


このシークエンスが最高で、以前観た時ここがホントに好きだった。

押井監督のなんというのか、乾いた寒々しい視点というか、ゴーストタウンの異様な空気というか、の演出がすごい。


冒頭の帆場の投身自殺や自衛隊レイバーの制圧シークエンスもタイトでかっこいい。

クライマックスの、野明(のあ)巡査が操縦するイングラム(パトレイバー)は血がかよっているような描写で、異常な無人の暴走レイバーとの対比が面白い。



キャラクターの面白さと潤滑油となる細かいギャグ、謎解きの楽しさ。
クライマックスの大破壊に、よく動くロボットの戦い。

すべてが理想的に揃っていて、物語はこうやって作るんだよと言わんばかりですごいな~と笑うしかない。


押井監督は監督として当たり前なんだろうけど、光と音に強くこだわる監督のようでDVDでは5.1chサラウンド化のため効果音やセリフを再録音していて、旧バージョンと両方楽しめる。

コントラストの強い絵や反射、パトレイバーの機体に強いグローがあったり、真夏の蜃気楼の表現など光の表現がすごいと思う。

クライマックスの、海上プラットホーム「方舟」において暗闇の中、車の限られた照明で疾走するシーンも良かったなぁ。

クライマックスの、台風や「方舟」に向かう際の波の表現もすごかった。



遊馬役の古川登志夫さんの声が80年代のアニメを感じさせるな(笑)

デザインも80年代を感じさせるけど、古さは感じない。
好きな絵柄だからかな。

ロボット、OSやコンピュータウイルスといったアイテムは今の僕にとっては理解できるけど、80年代当時の自分だったらなんだかよくわからなかったな。

コンピュータ社会への警鐘は、今観てちょうどいいという(笑)


聖書の引用が「エクソシスト(1973)」や「セブン(1995)」のような異様な雰囲気を出すのに一役買っていて、コンピュータの暴走による恐怖がより強調されているような気がした。