今年度の大きなニュースの一つは宮崎駿監督の長編作品引退宣言ですよね~。
なんとも残念でしょーがないo( _ _ )o
日本のアニメでは「ルパン三世」が一番好きなんですけど、ルパンやってくれないかなぁ。
30分くらいのでいいから。「カリオストロ」で完結しちゃってるかなぁ、宮崎監督の中で。
観たいなぁ。
そいで今まで観たことのなかった宮崎監督がかかわった作品で、
レンタルできるヤツをここんトコ見てました。
東映動画時代(1963~1971年)
【完全ネタバレ】
「わんわん忠臣蔵」
81分 日 1963年
監督 白川大作
製作 大川博
原案構成 手塚治虫
脚本 飯島敬、白川大作
音楽 渡辺浦人
撮影 杉山健児、吉村次郎
出演 木下秀雄 佐藤英夫 西村晃 ほか
宮崎監督は動画として参加。
☆☆☆★★
虎に母親を殺された子犬が人の街に降りていき仲間を集め復仇するというお話。
時の流れを四季で描いていて、忠臣蔵という所からとても日本っぽい。
犬のキャラクターが可愛いし、よく動くので観ていて本当に楽しかった。
オープニングクレジットが少し「となりのトトロ(1988)」を連想させるんですけど、このデザインがすごくいい。
テーマソングの「わんわん行進曲(マーチ)」が印象的。
「ガリバー宇宙旅行」
80分 日 1965年
監督 黒田昌郎
製作 大川博
脚本 関沢新一
音楽 冨田勲
撮影 稲葉郁三
出演 坂本九 宮口精二 本間千代子 ほか
宮崎監督は動画。
☆☆★★★
人生に希望を持てない少年テッドはある日、ガリバーと出会い宇宙へ飛び出して行く。
たどり着いた惑星にはロボットのような宇宙人たちがいて、かつて自分たちが生み出したロボットに苦しめられているのだった・・・。
宮崎監督はテッドが王女を助けるラストシーンの動画を担当。
ロボットだと思っていた王女の中から人間の本当の王女が出てくるというアイディアを出した事は有名。
正直ちょっと厳しかった(笑)
何度か寝てしまった。
それでも、キャラクターデザインとかおしゃれで今の日本のアニメとはまた違う。
この頃のアニメはおそらくディズニー映画の影響が残っていて、劇中ミュージカルのようになる。
歌が突然入るんですね。
そこはアニメの、絵の楽しさをしっかり観せるところでいいんだけれど、かえってテンぽが悪くなっていたような・・・。
「太陽の王子 ホルスの大冒険」
82分 日 1968年
監督 高畑勲
製作 大川博
脚本 深沢一夫
音楽 間宮芳生
撮影 吉村次郎 片岡幸男
編集 千蔵豊
出演 大方斐紗子 市原悦子 平幹二朗
堀絢子 東野英治郎 ほか
宮崎監督は場面設計、原画担当。
☆☆☆☆★
父を失った少年ホルスはその遺言に従い旅に出る。
とある村にたどり着くが、村人たちは悪魔グルンワルダに苦しめられていた。
ホルスは少女ヒルダと出会うが、この少女、実はグルンワルダの妹なのであった・・・。
冒頭からとにかくよく動く。
迫力のある絵がすごい。
制作期間は3年に及び会社側とスタッフはそのスケジュールや予算をめぐり、し烈な攻防を重ねたそうだ。
その時、労働組合がスタッフたちのコミュニケーションの場として大きく機能し正式な原画ですらなかった宮崎駿と高畑監督が出会う事になる。
全てのスタッフから意見を募る自由があったそうで、宮崎駿は膨大な量のアイディアやイメージボードを提供。
困難な原画を数多く手がけ、最終的に最も重要なスタッフとなる。
宮崎監督のアイディアだという冒頭、岩男が登場するシーンは「ネバーエンディング・ストーリー(1984)」を想起させて、とてもファンタジック。
ギレルモ監督作品「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー(2008)」に登場する地下都市への入口となる岩男はおそらくこの作品へのオマージュだと思う。
なんと言っても、少女ヒルダの心理描写が見所。
ホルスを迷いの森へと誘い込むが、ホルスが苦しみながらヒルダの心を読み抜き脱出するシークエンスはアニメならではの画だし、その展開や緊張感がすごい。
途中、相変わらずミュージカルが入り和やかになるんだけど、ここがちょっと冗長(笑)、
ただラストへの展開がとてもスピーディで無駄がなく、その大団円は恐ろしい程清々しい。
主人公ホルスのキャラクターデザインは大塚康生さん。
宮崎監督はグルンワルド、ホルスの父、岩男モーグ、ガンコ爺さん、氷マンモスをデザイン。
高畑勲監督にとって初の監督作品。
「長靴をはいた猫」
80分 日 1969年
監督 矢吹公郎(「演出」名義)
製作 大川博
原作 シャルル・ペロー
脚本 井上ひさし 山元護久
音楽 宇野誠一郎
出演 石川進 藤田淑子 榊原ルミ 小池朝雄 ほか
宮崎監督は原画。
☆☆☆☆★
長靴をはいた猫ペロはある日、少年ピエールと出会う。
城下町でローザ姫に一目惚れしたピエールは姫のムコ選びにニセ貴族となって乗り込む。
しかし、ローザ姫は魔王ルシファに結婚を迫られ怯えていた。
眼前でローザ姫を奪われたピエールはペロと共に魔王の城へとむかうのだった。
美術やキャラクターデザインがすごく好き。
なんというかディズニー映画「王様の剣(1963)」を連想させる絵なんだけど、ペロをはじめクライマックスではキャラクター達がのびのびと動いて、観ていて本当に楽しい。
宮崎監督はラストの魔王の城でのアクションを担当したそう。
魔王の城の舞台設定や高所の描写など宮崎駿の十八番が十二分に楽しめる。
ペロがローザ姫を前に何も出来ないピエールを助ける展開は「シラノ・ド・ベルジュラック」で、ピエールが身分を偽っていた事を告白するシーンはディズニーの「アラジン(1992)」も想起させた。
ペロを狙う殺し屋猫三人衆のギャグシーンや声優陣も面白い。
興行的にも成功し、ペロは東映アニメーションのシンボルとなる。
確かにこの猫の絵だけは知ってた(笑)
「空飛ぶゆうれい船」
60分 日 1969年
監督 池田宏(「演出」名義)
製作 大川博
原作 石森章太郎
脚本 辻真先 池田宏
音楽 小野崎孝輔
出演 野沢雅子 田中明夫 里見京子 岡田由紀子 ほか
宮崎監督は、戦車や巨大ロボット・ゴーレムの戦闘シーンの原画担当。
☆☆★★★
世界各地で大企業・黒潮コンツェルンに関係する貨物船の沈没事故が起こっっていたが、これらは謎の幽霊船が原因だと思われていた。
ある日少年・隼人は黒潮コンツェルン会長の命を救うが、幽霊船の使者だという巨大ロボットに両親を殺されてしまう。
亡くなる直前、自分は養子である事を知らされるが、隼人は仇をうつべく幽霊船と戦う決意をする。
黒潮会長を訪ねた隼人、ところがこの会長と巨大ロボットには意外な秘密があるのだった・・・。
正直、観ていて厳しかった(笑)
1969年か、当時では標準以上だったのだろうとは思うけれど。
それでも60分か、長く感じた(笑)
宮崎監督のアイディアであり原画を担当したという巨大ロボット・ゴーレムによって破壊されるビルのシーンは異常な程緻密だし、市街地に登場する戦車などはそれぞれ「天空の城ラピュタ(1986)」や「ルパン三世TV 2ndシリーズ」最終回「さらば愛しきルパンよ」を連想させるなぁ。
幽霊船の船長が実は主人公隼人の実の父親であるという展開やマスメディアを使った情報操作、表に決して出てこない悪の組織を倒すべく海中を行く幽霊船などワクワクするような物語ではあるのだけど。
「どうぶつ宝島」
78分 日 1971年
監督 池田宏
製作 大川博
原作 ロバート・ルイス・スティーヴンソン(「宝島」)
脚本 飯島敬 池田宏
音楽 山本直純
出演 松島みのり 天地総子 小池朝雄 ほか
宮崎監督はアイディア構成、原画。
☆☆☆☆☆
ひょんな事からフリント船長が持っていた宝島への地図を手に入れた少年ジムはネズミのグラン、赤ん坊のバブと共に宝島を目指す。
しかし、ブタの海賊船長シルバー一味、フリント船長の孫娘キャシーが地図を狙って立ちふさがるのだった。
もう痛快至極。
本当に子供に観せたいと思うような映画。
戦うシーンも表現が柔らかく、途中歌も入るので最後まで楽しい。
可愛らしいデザインの動物のキャラクターたちが、とにかくよく動く。
主人公ジムの前向きで真っ直ぐな心に触れたキャシーの心の壁が溶解していく描写やクライマックスの高所へのチェイス、尋常じゃない描き込みを観せる海賊船のバトルシーンなど宮崎監督を
感じさせるカットも多い。
しかし、「わんわん忠臣蔵」、「ホルス」、「長靴をはいた猫」、そしてこの「どうぶつ宝島」、どれもクライマックスは高所でありなんとも宮崎監督を感じてしまう。
ほとんどの宮崎監督作品のクライマックスシークエンスは高所へ高所へのチェイス、天空へと駆けていく展開となる。
そしてそこが夜空である事はほとんどない。
汚れが洗い流され、夜明けと共に現れ出てたお宝、クラリスの自由は背景の澄み切ったブルーで祝福される。
純白のウェディングドレスをまとうクラリスはもう束縛のない白雲のよう。
監督の空への渇望、もしくはそこへ誘ってくれる飛行機への愛情は一体何なのだろう?
自身、飛行機の免許を持っているとか飛行機を所有しているという話は聞いた事がない。
実際手に入れてしまったらおしまいなんだろうか。
まさに「土から離れては生きられないのよ!」
飛行機を買ってしまったらおしまいなのかな(笑)
「天空の城ラピュタ(1986)」、ラピュタへの入口に着いた際「父さんは帰ってきたよ!」と叫ぶカットはそのまま父親への愛情と尊敬なんだろうなぁ。
天があれば地がある。
そこは緑に萌えていてその庇護のもと人間は生きる事を許されている。
僕は森林などには興味がないけど、日本は他の国に比べて生活の中に自然を、神を取り込もうとする考えがあるんだろうなぁというのはわかる。
「風の谷のナウシカ(1984)」では、王蟲という自然と巨神兵という科学のガチンコ対決は王蟲のTKO勝ちとなる。
てゆーか科学は自滅しちゃう(笑)
ナウシカの死によって、また許されることによって調和がもたらされ、緑は戻りまた仲良しになって一緒に生きていく。
宮崎監督が自然に対して強い畏怖と関心を抱くようになったのはどうしてなんだろう?
実際あまり語られた事がないような気がする。
空についてはよく語られるけど。
当たり前の事じゃないか、という事なんだろうか。
フリント船長の孫娘、キャシーの思いつめたような、少しカゲのあるキャラクターがいい。
二丁拳銃がカッコよくて、ドタバタの中ひょうきんに動くブタのシルバー船長とちょうど対比になる。
宮崎作品におけて主人公の自分が信じるもの、愛するものへの動じない忠誠心は冒頭から貫かれるけれど、他のキャラクターたちがそこへぐ~と集約されていく展開がホントに気持ちいいですよね。
「未来少年コナン(1978)」のダイスやモンスリーが、やがてコナンの真っ直ぐな瞳に浄化されてゆくように、キャシーはジムを信じ心を許す。
ホントにいい映画だ。