マーティ Marty
91分 米 1955年
監督 デルバート・マン
製作 ハロルド・ヘクト
脚本 パディ・チャイエフスキー
音楽 ロイ・ウェッブ ジョージ・バスマン
撮影 ジョセフ・ラシェル
出演 アーネスト・ボーグナイン ベッツィ・ブレア
エスター・ミンチオッティ ジョー・マンテル ほか
【完全ネタバレ】
艶福家にゃわかるめぇ。★★★☆☆
〔ストーリー〕
ニューヨークの下町、ブロンクスの肉屋で働くイタリア系アメリカ人・マーティは34歳。
心根は優しいが太っていて醜男であることから上手く女性と付き合えない。一緒に暮らす母テレサや知人は早く結婚して家庭を持つよう口うるさく言うが、デートも思うようにならないのだ。
出会いを求めて行ったダンスホールでマーティは、容姿のせいで男性から置き去りにされたクララがひそかに泣いているのを慰める・・・。
1955年度第28回アカデミー賞最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、の4部門を受賞。
また、第8回カンヌ国際映画祭グランプリ・パルム・ドールも受賞。
う~む、なんとも華々しいけれど、映画そのものはそれほど派手ではない。
でも、文句なく楽しめる91分だった。
恋愛があり結婚がある。嫁姑のいざこざもあるかも知れない。
普遍のテーマが軽やかにさりげなく描かれたロマンティック・コメディ。
マーティという30歳を超えたモテない男の恋愛物語なんだけど、人ごとではないので身につまされながら観ていたけれど、ハッピーエンドはホント救いだ(笑)
マーティは長男。
夫を亡くした母と結婚をひかえた弟、3人の妹がいたため、除隊後望んだわけではないが精肉店で働き始めて十数年。
母や店のお客たちは「結婚しないの?」とあいさつのようにいつも聞いてくる。
ぶさいくで太っていることから、電話で女性をデートに誘うにも一大決心がいる。
傷つくことにはやっぱり慣れないもんな。
実際それほどマーティ(アーネスト)は太っていなくて、やけにネクタイが短いのは強調するための演出か。
マーティはとにかくいい人で母と二人暮らしだが、おばさん(母の妹)が嫁姑問題から引っ越してくることになるが二つ返事でOKする。
誰もが応援したくなるキャラクターだ。
精肉店のオーナーに店を買わないかと誘われているマーティは、会計士のいとこに相談をお願いする。
後日、母と嫁の板ばさみになった結果、母を追い出す事に罪悪感を感じて嫁にあたるそのいとこは一人怒ってマーティの相談に乗ろうともしない。
マーティの人の良さを強調するためだろうけど、周りの人間たちの傲慢さを描くのもホントうまい。
ある夜、マーティはダンスホールで女性クララと出会う。
デートの途中マーティの家に寄るが、母テレサも帰ってきて少し会話する。
テレサは妹の嫁姑問題について話すとクララは「仕方ないですよ。」と返す。
家を追い出されたその妹が「その女がマーティの嫁になったら、あんたも同じ目にあうわよ」と入れ知恵すると突然テレサはマーティにクララとの交際を反対し始める(笑)
クララと出会って恋が始まりウキウキのマーティと、結婚し子供を抱え嫁姑問題真っ只中のいとこ夫婦との対比が面白い。
明日はマーティもそうなるかも知れない。
人のいいマーティは、今やおばさんまで抱えている(笑)
母親は反対するし男友達はクララを悪く言うしで、マーティはクララに電話するのをやめてしまう。
週末の夜、男友達たちが横で「何する?」とくだらなくダベっていると、ハッと気付くマーティ。
俺はこんなところで何やってるんだ、と急いでクララに電話するラストシーンがさわやか。
長いカットが多くて、見入ってしまう。
カメラは大して動かないけれど、構図もなるほどなぁ、とうなずいてしまう。
マーティら男4人がマーティ家でダベるシーンがなんか好きだ。
このカットもやや長いのだけど、くだらなくていい。
「パルプ・フィクション(1994)」の、あのしょーもないベラベラの面白さに似ている。
一人はマーティが食事を取っているところへつまみ食いに手を伸ばしたり、一人は“スピレイン”とかいう作家をベタ褒めし続けたり。
「男は20歳若い女と結婚すべきだ。40になっても21の女と。」
「じゃ、20歳なら1歳の赤ん坊と結婚するのか?」
「そういうことだな。」
くっだらない会話がいい(笑)
実際、このシーンはラストシーンに活きる。
スピレインは実在するようだ。
“ミッキー・スピレイン”は米ハードボイルド探偵小説家の巨匠だそうで、有名な人なのか。
クララ役のベッツィ・ブレアが、そういう演出なのかな、表情がほとんど動かない。
能面みたいでどうも変。
この第28回アカデミー賞主演男優賞ではスペンサー・トレイシーが「日本人の勲章」という映画でノミネートされている。
観てみたいなぁ、その映画。