太平記 完全版 Disc.13。 | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書


太平記 完全版 Disc.13



126分 日  1991年(2008年完全版DVDリリース)



演出 田中賢二 佐藤幹夫 


製作 一柳邦久
脚本 吉川英治(原作) 池端俊策  
音楽 三枝成彰
撮影 杉山節郎 細谷善昭  
出演 真田広之 沢口靖子 陣内孝則 大地康雄 
    高嶋政伸 筒井道隆 ほか


江戸の杓子丸


【完全ネタバレ】



〔解説〕
 騒乱の南北朝時代を武家の棟梁・足利尊氏を中心に描いたNHK大河ドラマ第13巻。
 鎌倉時代末期、源氏の血を継ぐ足利尊氏は、さまざまな人物との運命的な出会いの中で成長し、腐敗した幕府打倒の決意をする。

 

 第48回「果てしなき戦い」、最終回「尊氏の死」を収録。





第四十八回 「果てしなき戦い」


観応2年(1351)。


足利尊氏(真田広之)は、直義(高嶋政伸)派に破れ帰京。


いくら敗軍の将とはいえ、征夷大将軍であることに変わりはない。


尊氏は賞罰についても自分が決め、高師直(柄本明)を暗殺した上杉氏も死罪に処す、と平然と言い切る。


直義(尊氏の実弟)の側近・桃井直常(高橋悦史)はこの会議の内容を知り、赫怒。


細川顕氏(森次晃嗣)と斎藤利泰(伊藤哲哉)は「将軍にすべて白紙に戻すようつき返して来いっ!」と桃井に怒鳴られ、尊氏亭へ。


「桃井に怒鳴られて参ったのであろう。」


一人薪割りをしている尊氏。すべてを察している。


「直義には、わしや義詮(尊氏の嫡男)を幕府から追い出す胆力はない。桃井も己が正しいと思うなら、わしを斬って捨てればよいのじゃ。」


尊氏の、武家の棟梁としての器量を垣間見、細川ら二人は言葉もない。



公家の勧修寺経顕(かしゅうじつねあき)が尊氏・直義両派を猿楽の宴に招待するが、口論になり義詮や桃井、勧修寺すら席を立つ。


一人、場に残される尊氏。



望まずとも足利の長に生まれ、数々の決断を迫られ数々の命を散らせた尊氏の孤独を表すいいカットだと思う。



舞台で舞っていたのは花夜叉(樋口可南子)であった。再会を喜ぶ尊氏。


「親子が行く末を案じることなく仲良く暮らせる美しい世を作れるのは、おん殿だけでござりまする。」



直冬〔尊氏の庶子〕(筒井道隆)が九州の豪族らを率い、九州探題を襲ったという報が入る。


義詮は直義派・桃井氏の暗殺を謀るが失敗。


それを知り、激しく叱責する尊氏。


すると、義詮は九州で見事に戦っている直冬に対するライバル心を吐露する。


が、尊氏は


「そなたは幕府の将軍にならねばならぬ。背負っっているものが比較にならんのじゃ。」

と諭して聞かせるのだった。



侍女役で常盤貴子が5秒くらい出演している。




江戸の杓子丸




最終回 「尊氏の死」


佐々木判官(陣内孝則)が南朝へ寝返ったとし、尊氏は近江に出陣。


また、義詮は赤松氏も寝返ったと播磨へ出陣する。


「まるで都を挟み撃ちするために出て行かれたような分かれ方じゃ。」


直義、軍勢を整えるため越前に向かう。


観応2年(1351)10月。


尊氏軍は南朝と和睦(正平の一統)し駿河、相模で直義軍を撃ち破り、熱海で直義を捕らえる。


鎌倉に幽閉された直義に尊氏は「戦をやめ、都へ戻ってくれ。頼む。わしはそなたを殺したくない。」


しかし「兄上にそれがしが殺せますかのぅ。」


直義は頑愚にひかない。



直義を奪回する動きがすでにあり、そうなれば戦さが終わることはない。


尊氏は決断する。


尊氏は永福寺の直義に菓子を差し入れ、昔話をはじめる。直義、茶を飲むと苦悶し体をねじる。


倒れこむ直義を受け止め抱きしめながら尊氏、絶叫する。


「殺してしもうた!弟を殺したぁーっ!!」



このシーンはむんずと心をつかまれた。


特に尊氏(真田さん)が「弟を殺したぁーっ!」と絶叫するところはすごい!


尊氏は、関わる人間それぞれの心情を受け止める側で、それに対し尊氏はいつも頭を下げ、謝っている(笑)


心情を吐露するような真田さんの見せ場は今まで意外と多くなかったと思う。


アクションや騎馬、ほとんど毎回真田さんアップカットでしめるなどもちろん出ずっぱりではあるけれど。



直冬、南朝と手を結び京へ。東寺に本陣を置く。


一方、にらみ合うように尊氏は東山に陣を敷く。


六花舞い散る本陣で、右馬介(大地康雄)は最後のご奉公を、と尊氏に願い出る。


直冬に兵を引くよう説得しに参りたい、と。



直冬と対峙する右馬介。説得が実らず、抜刀。


が、影ながら見守り続けた直冬を斬ることができない右馬介、警護の者に斬り倒される。


翌朝、直冬は「所詮、父上は斬れぬ・・・。」撤退を決める。


右馬介の説得が通じたのだった。



右馬介がこの「太平記」で一番好きなキャラクターだった。


直冬を説得する時の右馬介役大地さんの演技は鬼気迫るものがあった。


直冬をじっと見据え説き続ける時の、死を決した人間の凄みと悲しみがその目に宿っているようで、見入ってしまう。


尊氏は直冬が戦さを続ける限り、いずれ斬らねばならない。


弟まで手にかけた尊氏に、息子まで殺させまいという右馬介の滅私の奉公が涙を誘う。




桜が舞うある日、猿楽の宴が催される。


うつらうつらする尊氏は過ぎ去った数々の顔を思い出す。


「今となっては、敵味方もない。共にこの世を生きたのじゃ・・・。」



延文3年(1358)4月末。


足利尊氏、54年の生涯をとじる。




終わってしまった・・・。


脱力。さみしい。


うぁ~、面白かった!



尊氏の孫、義満が太平の世を実現させ、栄華を咲かせるのだ、と象徴として鹿苑寺金閣が映し出される。


そして、座する尊氏をバストアップまでズームイン。

メイン・テーマが高らかと奏でられ、閉幕。


大団円は少々へんてこだったけど、いかにも「完っ!」って感じでいいか(笑)



一話一話がホント早くて、何時間でも観れた。


非の打ちどころがにゃ~い。


何故、鶴さんの高時しか覚えていなかったんだ、こんな面白いのにっ(笑)!



ウィキペディアで見ると、武将役として大杉漣の名がある。

どこで出演しているのかわからなかった。


探すためもう一回始めから見返すか。


全然見れる(笑)





江戸の杓子丸




〈総評〉



「美しい世をつくるのは、血まみれた双手」★★★★★



第一回から、文句なくオモロイ。


一話一話の内容が濃いように感じるし、お金もかかっているなぁという印象。


徳川家は足利尊氏を、幕末の反幕府勢力は楠木正成を讃えたというけど、なるほどなぁと意味がわかった。


天皇の忠臣である楠木正成を戦後描くことはとてもむつかしい事だったはずで、ウィキペディアでチェックしてみたらそこんトコについて少し書いてあった。



「(この時代を映像化することが困難であるのは)皇室が積極的に関与する時代であるがため、南北朝・室町時代のドラマ化が戦後長年タブー視されてきただけでなく、歴史的にも極めて難解な権力闘争が繰り返される時期であるため」


また「(NHK)局内でも時期尚早ではないかとの意見はあったが、機が熟して取り上げられる時期が来るものわけでもないだろうと判断があった」


(ウィキペディア 太平記(NHK大河ドラマより)



のだそうだ。


また、番組終了後の名所旧跡を紹介する「紀行」コーナーは、このドラマから始まったのだそう。



今や時代劇はむつかしいというけど、TVドラマ「水戸黄門」も幕を閉じてしまうそうで。


演技のコトは皆目わからんけど、今の役者で時代劇はむつかしいとよく聞くし。


ただ今年の「江~姫たちの戦国~(2011)」が象徴的だとも言えるんだろうけど、この「太平記」を見たら時代劇云々ではなく、単純につまんないから誰も見ないんだと思う。


「江」は途中で観るのやめてしまったから、最終回まで観ずごにょごにょ言うのは違うだろうけど、もう天と地の差じゃないかなぁ(笑)


時代劇は現代をえぐるものでなければならないはずだけど、時代劇のていで現代劇をやってしまってはもうコントじゃんか。


しかし、アニメでは一人の男にカワイコちゃんいっぱいで、ドラマでは一人の女にイケメンいっぱいと棲み分けがはっきりしてて面白いですよね。


大河でそれをやっちゃあ、おしまいよと思うんだけどなぁ。



江戸の杓子丸


 
最も印象に残るのは、やはり主人公の足利尊氏(真田広之)で、その変わり様が面白い。


専横極める北条氏の世に悲憤慷慨、若気のいたりではやまることもあったけれど、武家の棟梁として立派に成長し見事倒幕を果たす。


けれど、征夷大将軍になってからはただただ問題処理に追われ、いつも頭を下げているような印象に(笑)


おおどかを装い奸智たくましい連中をかわしながら、いざとなったら熟慮断行する姿がかっちょいいけれど、時に痛ましく実弟・直義を毒殺するシーンはとても象徴的だと思った。


後半には父の遺言ともいえる倒幕を成し遂げても戦さはなくならず、あきらめにも似たさびしげなたたずまいの表情が続く。



源氏の嫡流で足利家の嫡子(実際は次男)という、生まれる前からがっちがちに決まっているその人生は、望まざるとも血にまみれるものなはずで純粋で美しいものに惹かれるという設定がうまいなぁと思った。


佐々木導誉(判官〔はんがん〕)は倒幕の際尊氏に従い、また足利政権の立役者でもあるけど、この二人は美への憧れという共通点をもって莫逆の友となる。


判官は文芸の保護者でばさら大名として知られるそうだ。



その風狂な言動が、生真面目な尊氏の印象を和らげるというか単純に観ていて面白くしてくれた。


演じてるのは陣内孝則で、もう最高(笑)



藤夜叉(宮沢りえ)は史実にはない人物で、直冬(尊氏の庶子)の母。


また、彼女は尊氏にとって美しいものの象徴で、輿望でもある。


尊氏と藤夜叉のしのびやかな恋がとてもロマンチックだった。


でも、単純にいえば男社長と愛人のロマンスみたいなもんで、男は観ていてオモロいだろうけど今は通用せんのかな(笑)