太平記 完全版 Disc.12
172分 日 1991年(2008年完全版DVDリリース)
演出 田中賢二 榎戸崇泰 尾崎充信
製作 一柳邦久
脚本 吉川英治(原作) 池端俊策
音楽 三枝成彰
撮影 杉山節郎 細谷善昭
出演 真田広之 沢口靖子 陣内孝則 大地康雄
高嶋政伸 柄本明 筒井道隆 藤村志保 ほか
【完全ネタバレ】
〔解説〕
騒乱の南北朝時代を武家の棟梁・足利尊氏を中心に描いたNHK大河ドラマ第12巻。
鎌倉時代末期、源氏の血を継ぐ足利尊氏は、さまざまな人物との運命的な出会いの中で成長し、腐敗した幕府打倒の決意をする。
第44回「下剋上」から第47回を収録。
第四十四回 「下剋上」
この回と次の回は相当オモロイ。
今やキャラクターがどんどん死んでいってしまい、さみしくなった。
けれど、尊氏の苦悩や苦労は耐えない(笑)
政務を担当する足利直義(高嶋政伸)派と軍事指揮権を持つ高師直〔こうの もろなお〕(柄本明)派の対立は深刻化していったが、直義による師直暗殺未遂によっていよいよ戦さとなる。
その兵、直義派4、5千に対し師直派5万。
猿楽にあけくれる足利尊氏(真田広之)に御台・登子(沢口靖子)や佐々木判官(陣内孝則)はあきれるが、尊氏は「ほどなく、直義はここに来る。そう手はずはうってある。」
直義派は、多くの裏切り者を出し意気消沈していたが、直義に尊氏より書状が届いていた。
「一所にて生死を共にせん。」
尊氏亭に逃げ込む直義ら。
すると、師直はなんと尊氏亭を5万の兵で囲み退路を断つ。
師直の要求は直義派が幕政から身を引く事であった。
直義は「これは兄上の謀りごとでござりまするな。」と察していた。
尊氏と師直は密かに通じ、これは直義派の大きくなりすぎた力を削ぐという計画で、尊氏としても執事解任に足らず師直暗殺を企んだ直義派の動きを捨ておく事はできなかったのだ。
「そちは公家や寺社に深入りしすぎる。そして、政務を足利一門で固め過ぎた。外様新興武士の不満がこの5万の兵となったのじゃ。武士が従わねば幕府は立ち行かん。身を引け。」
しかし、直義は聞き入れない。
尊氏は言う。「美しい世を作りたい、と北条氏を殺し、正成殿を殺し、義貞殿を殺した。わしの背後には屍が累々と折り重なっている。この手は血まみれじゃ。この上、弟までも殺せというのかっ!?」
直義役の高嶋政伸の熱演が目を引く。
出だしはちょっと思慮分別に欠けるキャラだった。
もっと沈着冷静なキャラだったら(古典「太平記」ではそうであったらしいけど)、子供のように「嫌じゃっ嫌じゃっ!」と泣き騒ぐさまはさらに印象深くなったのになぁ。
第四十五回 「政変」
東雲、5万の兵が取り囲む尊氏亭から直義一派は出撃を決意。
「命を惜しまず、名を惜しめ!」
直義らが抜刀する時、やや大袈裟にチャキーンと鳴る。
前回と同じカットだけど、佐藤幹夫演出の時はなかった。
人によって違うものだなぁ。
脇門から打って出ようとすると、師直側に寝返っていた佐々木判官が現れ制止。
尊氏と直義に、師直側にいっそのこと足利兄弟を討たんとする動きがある、と伝える。
幕府が倒れては元も子もない。
いよいよ直義、身を引くことを認めるのだった。
実はここまでが尊氏の計画だったが、師直は一度5万の兵を率いた経験から、尊氏を討つ、天下を取るという野望が頭をもたげ始める。
そして、南朝の工作員でもある師直の愛妾・二条の君(森口瑤子)がそれを煽動す。
養父・直義が失脚したことで、自身も長門探題を解任された直冬(筒井道隆)は逆上、逃亡する。
一方、嫡男・義詮〔よしあきら〕(片岡孝太郎)は鎌倉より上洛、尊氏や家臣らから温かく迎えられるのだった。
尊氏は右馬介(大地康雄)が見つけ出した直冬と対面し、自重せよと説得。
が、実らず直冬は
「それがしは義詮殿に負けませぬ。自分の力を試してみとうござります!」
寺を駆け出し闇夜に消えていくのだった。
第四十六回 「兄弟の絆」
直冬、九州で挙兵。
のち、直義も南朝吉野より綸旨を受け挙兵、京へ攻め上る(観応の擾乱)。
なんか物語上、南朝は兄弟喧嘩するための便宜で、どうでもいい存在になってしまっているような・・・。
第四十七回 「将軍の敗北」
実弟や息子、身内からも命を狙われる尊氏。
直冬追討のため出陣するが、直義が挙兵したことを受け、京へ踵を返す。
備前で京を出た義詮も合流。
その後、京を目指すが直義軍に次々と敗北。高師直・師泰兄弟の出家を条件に和睦。
直義側は師直の首を望むが、尊氏は許さない。
尊氏は今までの忠義に感謝し、「生きよ。」と自害せんとする師直を諭す。
師直、尊氏の広大な心に触れ号泣するのだった。
この時の師直役柄本さんの演技がどうしても笑える。
志村さんとのコントの印象が強いから、笑わせようとしていると見てしまう(笑)
高兄弟らは摂津にて、かつて師直に養父を殺害された上杉能憲に謀殺されてしまう。
また尊氏は近しい人間を失った。
「わしが目指した美しい世は、一体何だったのじゃ!こんな世を、誰が望んだ!?」
「太平記」の前半は足利家による北条家への復讐劇だけど、ここにも小さな復讐劇がある。
観応2年(1351)、尊氏は敗軍の将として帰京する。