太平記 完全版 Disc.11。 | 江戸の杓子丸

江戸の杓子丸

化け猫 杓子丸の大江戸見廻覚書


太平記 完全版 Disc.11



172分 日  1991年(2008年完全版DVDリリース)



演出 田中賢二 榎戸崇泰 尾崎充信 


製作 一柳邦久
脚本 吉川英治(原作) 池端俊策  
音楽 三枝成彰
撮影 杉山節郎 細谷善昭  
出演 真田広之 沢口靖子 陣内孝則 大地康雄 
    高嶋政伸 柄本明 根津甚八 藤村志保 ほか


江戸の杓子丸


【完全ネタバレ】




〔解説〕
 騒乱の南北朝時代を武家の棟梁・足利尊氏を中心に描いたNHK大河ドラマ第11巻。
 尊氏は倒幕を謀る新田義貞、楠木正成らと接触。後醍醐天皇の起こした元弘の変の鎮圧を命じられるが、反旗を翻し京を制圧する。
 

 第40回「義貞の最後」から第43回を収録。




北条氏が逝き、後醍醐天皇が逝き、お話は足利の兄弟喧嘩へ(笑)


話はこじんまりするワケだけど、不思議と面白さは変わらず。


身内が敵となるだけに、尊氏の苦悩はさらに深まる。




第四十回 「義貞の最期」


足利尊氏の庶子・不知哉丸〔いざやまる〕(筒井道隆)を尊氏の実弟・直義(高嶋政伸)が養子にしたいと願い出る。


尊氏の御台・登子(沢口靖子)もしぶしぶ承諾。


尊氏の母・清子(藤村志保)も不知哉丸あらため直冬(ただふゆ)がかわいいらしく様子を見ては登子にわからぬよう、尊氏に知らせに来ていた。


しかし、すべてを知っている登子は鎌倉にいる若殿・義詮(片岡孝太郎)が無視されているようで心苦しい。



高師直〔こうの もろなお〕(柄本明)が 慰めるように、「若殿に」と宋渡来の笛をプレゼントしてみせたりする。


この回から足利幕府の内紛へと話が移っていく。


直義VS師直という構図で、師直が登子に取り入るシーンともとれるけれど、登子が権力闘争に関わることはない。


物語上、悪役が必要なワケで師直が一手に引き受けているところがある。



延元3年・建武5年(1338)


越前で斯波軍を相手に新田義貞(根津甚八)、戦死。


矢を首に受け、田んぼの中で泥まみれになりながら散っていく。


勅書を口にくわえながら立ち上がるところは執念だ。


帝に裏切られ、北畠顕家(北畠親房の長男)にはシカトされながら最期まで戦い続ける姿は、楠木正成(武田鉄矢)の最期とは違い、より哀れに感じる。



義貞の死に様はインパクトあるけれど、何かチャッチャと片付けられた印象。





第四十一回 「帝崩御」


延元4年・暦応2年(1339)、吉野。


病床にあった後醍醐天皇が崩御。


義良親王(のりよししんのう)、のちの後村上天皇に帝位を譲り、朝敵・足利尊氏を討て、と遺勅を吐く。


何か太平の世云々より、もう執念だな。


武功めざましい佐々木判官(陣内孝則)や 高師直・師泰(塩見三省)兄弟などが京で傍若無人に振る舞い、数々の事件を起こす。


判官はささいないざこざから天台座主がいる東山・妙法院を焼き討ちする。


朝廷は判官の首を要求。


陣内さんが「しゃーっ!」と寺院に松明を投げつける時が何か笑える(笑)



尊氏は自宅で監禁状態の判官に会いに行く。


もうできあがっている判官は日頃の直義派への不満をぶつけ、
「何故、政(まつりごと)を直義に渡したっ!?世をまとめられるのは御辺(おまえ)しかおらぬっ!」
とぶつける。


尊氏は軍事を、実弟・直義は政治を担当。


命をかけて戦さをこなす判官らにすれば、直義ら官僚が偉そうにしているのが面白くない。



怒鳴るだけ怒鳴った後、ケロッと助命を頼むトコが判官らしくていい。



師直は二条の君(森口瑤子)を拉致、手籠めにする。


新興武士が公家の娘を力ずくで愛妾にする事が多かったそうだ。


この二条の君は南朝の大将となった北畠親房(近藤正臣 )の工作員になり、師直を惑わし足利を潰そうとする。





第四十二回 「母の遺言」


師直が塩冶高貞(浅野和之)の御台に横恋慕し、恋文を送ったり風呂へ覗きに行ったりする(笑)


しまいには御台を手に入れるため塩冶高貞が南朝と通じている事を突き止め、自刃させるに至る。


しかし、御台はあとを追うのだった。



御台をいやらしくじ~っと見る柄本さんの顔がすごい(笑)

なんか漫画のキャラクターみたい。



尊氏は塩冶が南朝と通じていた事を黙認、また彼を使い南朝と和議を結ぶよう秘密裏に画策していた事を直義に責められる。


が、尊氏は先帝が崩御し戦さの終わりが見えない中、政(まつりごと)だけを考え南北朝統一に心を砕かない直義を喝破する。



そこへ現れた師直を直義や家臣らの前で、尊氏は扇子でメッタ打ちにする。


平伏する師直に「そちは高家の惣領。頼りにしておるのじゃ。道を誤るな。」と諭す。


こうすることで直義はさらに師直を責めたてる事ができなくなる。


尊氏の優しさでもあるんだろう。



尊氏を見上げる時の柄本さんの顔は、笑わせようとしてるとしか思えない(笑)


すごい顔(笑)



尊氏の正室・登子(沢口靖子)は、直義の台頭で義詮(片岡孝太郎)の跡目が心配だと言いながらその実、直冬〔不知哉丸〕(筒井道隆)について面白くなく、つい尊氏の母・清子( 藤村志保)と口論になる。


登子は身寄りがなく孤独ゆえ、つい心底を吐き出してしまうのだった。



実際登場シーンが少ない登子役沢口さんの見せ場。


登子の「殿がどこぞの白拍子に生ませた子など、甥とは思えませぬっ!」にギクッと身のやり場に困ったような尊氏(真田さん)の表情が何か笑える。



病床の清子は遺言のように、亀裂が生じつつある尊氏と直義二人の手をとり握らせ「兄弟仲良うにのぅ」。


康永元年(1343)。清子、息をひきとる。





第四十三回 「足利家の内紛」


直義派(足利一族)と師直派(外様新興武家集団)の対立は深刻なものに。


尊氏は「和議を」と懲りずに南朝の北畠親房と密談するが無駄に終わる。


それを知った直義は激高。


もう政治に関わらないこと、また師直を執事職から解くことを要求する。


クビとなった師直は「誰が大殿(尊氏)をお守りするのかっ!?」と尊氏のもとへ怒鳴り込む。


尊氏は「時機を待つのじゃ。」となだめるのだった。