ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
MAN SOM HATAR KVINNOR/THE GIRL WITH THE
DRAGON TATTOO/MILLENNIUM: PART 1 - MEN WHO HATE WOMEN
153分 スウェーデン 2009年
監督 ニールス・アルゼン・オプレブ
脚本 ニコライ・アーセル ラスムス・ハイスタバーグ
音楽 ジェイコブ・グロス
撮影 エリック・クレス
出演 ノオミ・ラパス ミカエル・ニクヴィスト
スヴェン・バーティル・タウベ エヴァ・フレーリング ほか
【完全ネタバレ】
ダークなキャラだからこそ、その良心がまぶしい。
★★★☆☆
〔ストーリー〕
40年前、スウェーデンの資産家の邸宅から忽然と姿を消した少女がいた。少女の親族から捜索依頼を受けたジャーナリストのミカエル(ミカエル)は、背中にドラゴンのタトゥーを入れた天才ハッカー・リスベット(ノオミ)の協力のもと、事件解明に挑む。
原作は世界中で2100万部を売り上げた大ベストセラー小説だそうで、その原作が相当面白いのだろうな、と想像した。
映画は、最終的には何ともこじんまりしてしまった印象。
主人公の一人、リスベットはフリーの調査員。
情報収集能力に長け、推理力や記憶力にも優れハッカーとしても一流。
背にはドラゴンのタトゥー、ショートヘアでパンクなルックスがかっこいい。
彼女のトラウマ(過去)がはっきり提示される事はなかったけれど、自分の中のモンスター(過ち)に苦しみおびえながらも、核にはきちんと良心を持っている。
雑誌「ミレニアム」の記者で優秀なジャーナリスト、ミカエル。
リスベットがミカエルに接近するのは、不正を憎む彼の確固とした良心を信じての事だろう。
距離を保ちながら結びつく二人の関係が面白い。
ミカエルらは一人の少女ハリエットの失踪事件を調査する。
しかし、その失踪は40年前の話。
ミカエルにとってハリエットは子供の頃のちょっとした知り合いで、遊んでもらった経験があるという設定がうまい。
親しい人間でもないし、全くの他人でもない。ほどよく感情移入してしまうような距離。
また、その模糊とした記憶が調査に活きる展開もうまいと思った。
ハリエットは実は生きていた、というラストが物語を小さく感じさせる理由の一つではないかなぁ。
「な~んだ」となってしまう。
調査はやがて、過去の連続猟奇殺人事件を明らかにする事になる。
犯人の聖書を引用しての殺害方法は「セブン(1995)」を連想させるし、ラストシーン、画面向こうへ去っていくリスベットの画は「羊たちの沈黙(1991)」のラストシーンへのオマージュともとれる。
点が線となっていく過程は悪くないんだけど、少々淡々とし地味で盛り上がりに欠ける。
実際、調査とは淡々としたもので例えば劇中にある通り、手がかりとなりそうな写真を一枚一枚注意深くひたすら見ていく作業の積み重ねなんだろうな。
けれど、映画では画にもう少し動きが欲しいと思ってしまう。
ジャーナリストであるミカエルは淡々と着実でいいとして、リスベットの頭の良さや勘の良さをもう少しスピーディに演出できたんじゃないかなぁ。
犯人は元ナチ党の人間や、その息子で当たり前のように殺人を教えられ育てられた男で、被害者はユダヤ人であったりユダヤ名を持つ女性達という設定がなんとも説得力がある。
前半、リスベットは後見人で弁護士のニルスにレイプされるが、仕返しに「私はサディスティックな豚で、レイプ魔です」とニルスの腹にタトゥーを入れる。
リスベットを表す、とてもいいシークエンスだと思った。
けれど、前半のこういったシーンを丁寧に描きすぎたのが本編の長くなった理由かな、と思うが、どうも「パート2」、「パート3」で回収するためのようだ。
前半部でリスベットが酔っ払いの男達に殴られるシーンなど暴力シーンもテンションが高くて良い。
街や森また海のロングカットがキレイで、リスベットが海を向こうに一人タバコを吸うシーンが印象的だった。
↑米版ポスター。こっちの方がかっこいいな。