出版が「2兆円市場」と言われるようになったのは1989年(平成元年)からのことです。
出版物のなかには、書籍に雑誌を含めます。この2兆円という数字は、本と雑誌の合算です(1兆、2兆の売上規模というのは、他業界なら1社で売り上げる規模。近い業種では大日本印刷さんは1兆円超えてると思います。ソフトバンクが2兆円くらい?)。
市場規模が「2兆円割れ」という朝日新聞あたりの記事に過剰反応してるブログやサイトの記事をこのところちょくちょく見かけますが、そういう過剰反応君に限って、業界と直接の利害関係にないことが多い。
要するにネタにされてるわけですね(笑)
なかでも、「いよいよ電子出版の時代が本格化」なんて、恥ずかしくて目がつぶれそうな記事平気で書いてる御仁もいて、もう生きてるのがイヤんなるくらいです(爆)
NookとかKindleとか電子書籍リーダーを引き合いに出してるところが、まカワイイとゆーか、おマヌケというか。ただのアホです(爆)。
そもそもが、本なんかなくったって生きていくうえで支障ないってところから小一時間問い詰めるところから話を始めたい(爆)
それでも本をこさえて売ってる人がいるということに、感動してほしいわけ(爆)
そういう原生的物作りのなんたるかがわかってないまま、電子出版云々するのは100年早いって。
ともあれ、こないだの朝日などの記事で注目すべきなのは、
「2兆円割れ」なんかじゃなくて、実は新刊出版「点数」のほうです。
出版科学研究所から出ている『出版指標年報』を見れば、1959年からのデータがわかります。
1959年の新刊出版点数は11614点。月平均1000点未満です。一日平均30点程度。
これがどんどん増加の一途をたどり、1973年に20000点超え、「2兆円市場」と言われるようになった1989年には、38057点になり、以降4万点を超えるようになります。
1995年には6万点を超え、2002年以降7万点台で推移していきます。
2008年は76322点。10年前の2倍です。
「なのに」、「2兆円割れ」と朝日の記事は書くわけですが、出版点数が増えたのは出版社が増えていったこともその背景にはある。わかりやすいのが、たとえば「anan」創刊でスタートしたマガジンハウスさん。ここ社名のとおり、ごくごく初期には雑誌しかやってなかった。あとは、「新書」を出す版元が急増した。こんなこともあって、出版点数を押し上げてるわけで(出版社は休眠も含めて4000社くらい。社長さん一人でやってるとこも含みます)。
2002年以降の7年ほどは、そんなに点数が急増しているわけではないし、今後も7万点台で推移するでしょう。
89年と比較して2倍というのは、一種の外挿法であって、なかなか効果的な記事ではあります(笑)
しつこいですが、去年・今年になって急に増えたわけではないのです。
しかしもちろん、無問題であるわけはない。「黒字」倒産にはならない業界の仕組みは両刃の刃です。
小説などハードカバー単行本の文庫化は、よく知られた再生産の手法で、封切り映画のDVDレンタル開始に、適正なタイムラグがつけられてるのに似た、文庫化の作法みたいなものがあったのですが、これとっくの昔に崩れてます。書き下ろし文庫はいいとして、同じタイトルでも出版点数としてカウントされます。
「新書化」も同様。「書籍扱い」のムック、つまり雑誌もそうです。
なので単純増じゃないってところが、メガネやお米と違うところです。
生産力と市場の「組合い」が、確かにちょっと脱臼状態を起こしているかもしれないこの状況、「しゅっぱん2.0」にとっては、いまのところ幼稚な議論の多すぎる電子出版についても、ネットサイド\アウトサイドの面から深掘りしつつ、「本から」広がる「しゅっぱん」の可能性を構想するチャンスではあります。
