平成25年4月19日(金) 

 
昨日の『タロウ』の寝姿を別の角度から撮るとこう見える。食事がすんで、九時頃から、一時近くまで寝続ける。夜は、人間並みに寝るので、長い昼寝が、昼間は続く。家で飼われている猫たちは、安心して寝ているなと、彼らを見ながら、野良たちのいつもおどおど寝ている姿を思っている。家の猫は全員野良上がりなので、かつての彼らの生活が、つらかっただろうと、今の安心な生活が続くよう願っている。天災などから突然野良生活に放り出されることもあるわけだから。

                    *

 アデール華子さんの家で、お茶を飲みながら、宗像グループをつぶしたいと、恵美先生を中心に話してから、一か月の日がたった。綾先生の疲れは、単なる疲れとわかり、健康診断で、特に問題もなく、いつも通り精力的に動いていた。綾先生は、ほとんど研究所には姿を見せず、彼女自身の研究は、主に大学で続けているらしかった。そこで8人くらいのグループを組み、毒に関わる危険な研究をしていた。それだけに大学のような管理の行き届いた場所を選んでいた。 
 恵美先生は、サボテンから何を抽出しているのか、目的は何かよくわからなかった。しかし、恵美先生は、研究のサボテンをはじめ資料の大部分を研究室に保管して、彼女メインの働く場所は、研究所であった。洋子は、サボテンの管理をもう10年は続けている。洋子ですら先生の研究が何かわからないそうであった。智子は、なんとなく恵美先生の目的を感じていた。それは、智子の守護霊であるK-30とサボテンが関わっていたことによるせいかもしれなかった。『サボテンには意志がある』そこに答えがあった。
 智子のアロエの研究も、もうすこしすれば、皮膚への効果を科学的に分析できそうであった。智子も研究を研究室で続けていた。また自分の部屋に滅菌室を作り、何匹かハツカネズミとアロエベラなどを育てていた。研究室が、洋子たちのマンションに移ってからは、遠くに出かけることもなく、智子のマンションから、一分もかからず通えるので、同じマンションに住んでいるようなものだった。それは、宗像の事を気にしないでいいということであった。スイスイにいる弟夫妻も落ち着いて暮らしているようであった。弟だけは、たまに日本に帰国することあって、その時、二人の両親に会い、孫の写真などを見せて、もう少ししたらみんなで帰ってこられるっだろうと、伝えていた。根拠は特になかったのだが、そういう事で、年老いていく両家の両親に気落ちさせないようにしていた。
 九月半ばも過ぎ、時折寒いと感じる日もある頃、綾先生が、蔵王山に登るので、みんな参加してほしいと切り出した。『茶観悌』が、九月二十日から三日間、宗像女史も参加する、月山から蔵王山にかけて修行の登山をするとの情報を得たとのことであった。綾先生にとって、蔵王山には強い味方がいるとのことで、宗像女史の霊力を弱める絶好のチャンスということであった。彼女のグループは、30人くらいいるらしいのだが、強い霊能力者は、宗像と他に3人くらいで、あとは、東京に残り、参加者の多くは、素人のあつまりだそうだ。
 蔵王山には、綾先生の知り合いに霊力の強い山の研究者がいるとのことで、宗像女史の霊力を弱める絶好のチャンスと思われるので、こちらは、研究者4人と、大学の研究者4人の8人で向かうという事らしい。この情報は、二日前に知ったので、まだ煮詰めていないけれど、一度しかないチャンスと考えて、綿密に計画するつもりだという。綾先生もさすがに年中宗像女史を気にすることに疲れたと見える。
「どの山も二千メートル近いので、寒さを覚悟の仕事になるわ。でもこれがうまくいけば、その後の研究に没頭できるでしょう。みんな風邪などひかないよう当日にかけて、自制してくださいね」と綾先生は、日ごろ言わないようなことを言っていた。
 研究室から帰った智子は、K-30に聞いてみた。
「戦いって知っている?人が死ぬようなことがあるの?」
「人は死にませんが、精神面にダメージを受けるかもしれません。私は、自分の霊と話したことがありませんから、戦いは知りません。でも智子さんたちの霊と話すようになって、霊の戦いも知りました。火花を散らすという言葉がありますが、似たような現象も起きるようです。綾先生が言うように、精神面の戦いでも支えているのは、肉体ですから、体力を万全に保っている者の勝ちです。彼らは月山にも登りますから。蔵王山に来た時は、疲れていると思われます。それで先生は、絶好のチャンスと思われたのでしょう。彼らは、我々のような研究者が、山に登ってくるとは考えてないと思われますから、先日恵美先生が言っていた意表をつくという点も作戦として当たっているのではないでしょうか。

            平成25年4月18日(木) 

 
気持ちよさそうに眠っている。まるで胎児のように。

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『茶観悌』の本部の場所は知らないの?と洋子が姉の華子に聞いた。正しくは分からないけれど、富士の裾野のどこかね。箱根や熱海のサボテン公園がよく火事を出したでしょう。彼らの縄張りなのよね。華子は、ちらっと恵美先生を見て答えていた。
「彼らとのにらみ合いもそろそろ決着をつけたいわね。気配りに時間をとられて、仕事にもならないわ。綾先生の疲れもそこから出ているのですものね」恵美先生は、何か思うことがあるらしく、きっぱりと言った。
「実態との対決の事?」と華子が聞いた。
「そうね、どこでぶつかるかが問題だけれど、今まで、気配でお互い動いていたでしょう。向こう側も直接対決を避けているわね。先に仕掛けた方が勝つのではないかしら、まさかと思うタイミングでかかれば、『茶観悌』をつぶせるかもしれないでしょう」恵美子先生は、我慢ならないという意気込みで話している。
「そこまで深くかかわるつもりなの?そうなると、犠牲者が出るかもしれないわ。宗像女史のナンバー5の名前は分かっているのだから、彼らを一人一人骨抜きにするのはどうかしら、組織には相当なダメージを与えることになるわよ」と華子さん。
「その霊の戦いは、夜やっているのですか?」と智子さんが聞いた。
「どちらかというと、昼間かしら、外を出歩く時、あたりに気のバリアを張るのよ。もちろん霊たちの力を借りるので、昼間は寝ている霊も、起きていることになって、私たちの肉体はもちろん、精神面も疲れるというわけなのよ。宗像女史なんか、仕事に霊を取り込んでいるから、私たちよりもっと疲れているでしょうね。だから、直接対決になると、これが最後にしたいという彼女の死に物狂いの力が出されて、どんなことが起きるのか怖いぐらいよ」
「宗像グループに勝つには、何人くらい必要なの?」と洋子が心配そうに口を挟んできた。
「向こうは、今のところ女史を入れて強いのが6人ね。日々彼女の信奉者が増えるので、遅れると、私たちがやられるわね。今は互角かしら」と、華子さんが言う。「スイスの連中にだって、強い霊能力者はいるけれど、日本語での戦いには向かないでしょう」霊は、生きている人をねぐらにしていることを改めて感じた智子であった。
 一体、智子の霊は、どのくらいの力を発揮出来るのだろう。学問の方では、智子に多大な貢献をしてくれて、たった5年で、一流の植物学者になり、英語についても聞くには困らなくなっていた。スーパーのレジ係だったとは、誰も想像もつかないだろうと思われた。
「我々も一応5~6人の霊力をつなぐことができて、バリアを張る程度のことはできるけれど、もっと複雑で、彼らが解けないような、網を作る必要があるわね、それに守られて、宗像女史から彼女の霊力を抜くことができれば、『茶観悌』は、緩やかな健康茶の会で存続できるし、我々も落ち着いていつもの研究に没頭できるのよね」と恵美先生は、自分の研究の遅れが、宗像女史のせいであると、恨んでいた。
   
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            平成25年4月17日(水) 

 黄昏猫 3
「よっちゃん」後ろを気にしながら、庭に来る小鳥たちを見ている。

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 綾先生は、55歳になり、今回の引っ越しも体力的にこたえているらしかったが、恵美先生や竹さんもそれなりに疲れていた。その上、外に出れば、宗像女史のグループ達の目に止まらないように気配りをする必要があったので、気の休まる暇がなく、本来の仕事にも遅れが出始めていた。
「宗像女史の信者には、それほど強い霊能力者はいないのだけれど、三十代未満の若い人が多くて、体力的に負けそうになるので、二~三人研究所員を増やすことにしたのよ。彼らは、それぞれの研究室で、今までのような研究をつづけるけれど、ここにも出入りしてくると思うので、来週紹介するわ。三人とも男性職員なの。今回の霊との戦いは、強い体力がいるのよ、霊たちは、頭脳での勝負に力を貸してくれるけれど、結局、彼らを住まわせている我々の体力が、最後は力を見せる訳で、私たちが病気になったりしたら、バリアも破られるし、研究も盗まれるわ」と、恵美先生は、深刻そうに言っている。
「今、先生たちは、宗像女史と何を争っているのですか?」と智子は、どうも今回の事は、智子とはあまり関わりがなさそうだと思って聞いた。
「そうね、智子さんの名前にこだわっている時期は過ぎたわね。もう名前はいいのでしょう。信者も増えて、彼女自身まだ若いから、次の世代にこだわるのは止めて、自身の宗教を不動のものにしようという考えに変わったらしいのだけれど、われわれが彼らの事を知りすぎてえいるので、我々をつぶしにかかってきたというところかしら。だから、命がけの感じなのよ。竹さんの件が皮切りで、私たちの誰でもいいからダメージを与えようとしているらしいのよ。そうすれば、私たちが宗像女史の動きに手を出さないと思っているみたいね。私たちも、彼女の宗教が、健康を旗印にしているので、気になるのよね。お茶でがんが治るという簡単な理論は、昔から唱えられたやり方だけれど、法的に取り締まれないぎりぎりの路線で、目的はお金儲けでしょうね。鉄観音で、本当に体に効くお茶は、竹さんが先生にもらったあの鉄観音くらいで、あの価格だと、一般の人が買えるものではないでしょう。だから『茶観悌』のお茶は、ただのウーロン茶なのよ。彼らのうまいところは、見本にくれるお茶は、良質の鉄観音なので、竹さんが信じてしまったように、息子さんに少し良い兆候が出たのでしょう。ウーロン茶が悪いのではなくて、彼らが出している価格が問題なのよ。100グラム五千円しているでしょう。本物の鉄観音ならもっと高価だし、今のお茶は、、500円くらいの物でしょう。ほうじ茶くらいよね。彼らがそれで売っていることが違法ではないけれど、そういう事を我々が知っていることを彼女は気にしているのよ。まだ若いから、公で問題になった時白を切る気がないみたいね。それより、そういう事を話題にさせない方法の方を選んでいるとしか思えないわ」
「実際には、どんなふうに戦っているの?」と洋子が姉に聞いた。
「私たちは、彼らに気付かれないように暮らしている。『茶観悌』の信者で霊力のある人が近づくと、こちらの霊が先に気付き、彼らと接触しないで済むようにしているのよ。これが面と出会うと、火花が散るくらいの争いになりかねないのよ。いったん捕まると振りほどくのがたいへん。だから私達は、疲れているのよ。洋子や智子さんは、霊の事にまだ実感が薄いから、出来るだけこのエリアから出ないでほしいのよ。ここは、私たちの地霊が、他の日本の地霊と一緒になって守っているから彼らには、この建物そのものが見えてないはずなのよ。出入りの人たちについても、どの人も同じに見えるようになっているの。西洋人も同じ顔に見えるはず。そういう守りの地場なので、私たちは安心しているの。『茶観悌』の本拠地もそんなところにあるらしく、私たちでさえ見つけられすにいるわ」と珍しく華子さんが丁寧に話した。
   
  
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