平成25年4月22日(月)  

 〈わが家の茶模様の猫たち〉
今日も少し寒いので、『タロウ』と『よっちゃん』はくっついて眠っている。
『まる』ちゃんは、いつも遠慮がちだけれど、右手の方にストーブがあって、つい先ほどまでストーブにあたっていた。

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 華子さんは、同じマンションに住む綾先生を夜中に訪ねた。こうゆうことは珍しいことで、綾先生が、洋子の家に招待されることの方が多かったし、夜中の訪問は、初めての事であった。華子は、訪問について電話連絡もしなかったので、綾先生は、少し驚いていたが、すぐ部屋に招き入れて、華子さんの話に、耳を貸した。
 「今回の蔵王行の件で、私もお手伝いをしようかなと思ったので、その計画を伝えに来たのよ。夜は、霊たちが飛んでいるので、電話連絡もままならないから、突然の訪問でごめんなさい」
「華子さんが力を貸してくれると助かるわ。宗像とのかかわりは、もう終わりにしたいので、今回は、男性たちの力も借りるのよ。宗像も強力な男性霊能者をガードマンとして連れているらしいので、女だけでは、太刀打ちできそうもないから」綾先生は、華子さんには、本音を明かしている。
「意表という手段は有効だと思うわ。ただ、宗像女史のような性格の人は、他にも敵がいるはずで、今回の旅行の事がこちらに漏れたということは、他にも知っている彼女の敵がいるということも考えなければならないわね。みんなが意表という手段を使うとしたら、敵味方が入り乱れて、計算どうりにはいかないでしょう。だから、宗像たちの動静を広い範囲で見張る係りはいるわね。もし、別のグループが彼女に立ち向かっているとしたら、まずは、そちらに任せて、我々は引くという案はどうかしら。その時は、成果までは見ないで、すぐその場を離れて、彼女たちが勝てば、また次の機会にするか、負ければしめたものだし、宗教同士の戦いに宗像女史の関心が向けば、今後、綾先生の方を気に掛ける余裕がなくなるのではないかしら」
「今のところ、彼女の新興宗教に立ち向かっているグループについての情報はないけれど、我々の知らないところでの軋轢はあるかもしれないわね。そちらの戦いが感じられたら、すぐ山を下りましょう」
「私は、今晩中に、仲間を集めて、明日、蔵王山のあちこちに登ってもらうわ。そして宗像女史たちの廻りに不穏な動きがないか知らせてもらうことにするわ。全員ヨーロッパ系の男の人ばかりで、大学生や英会話の先生たちかな、外人の方が、疑われないでしょう。彼らの霊は、ヨーロッパの戦いの経験のある中世の霊たちだから、今回の偵察隊にはちょうどいいわね。私に貸しのある人たちだから、きっと協力してくれると思う。私も蔵王山に行くけれど、気にしなくていいわ。綾さんにだけ知ってもらっていれば、それも奇襲の一役になるかもしれないから」
「ありがとう。華子さんにバックアップしてもらえるなんて、幸運だわ。お互い気を付けましょうね。今晩は本当にありがとう。おやすみなさい」
 華子は、自宅に戻ると、大至急、友人の男どもに電話を入れ、宗像女史と綾研究室とのいきさつをかいつまんで話し、明日、大きな精神的戦闘が行われる件を伝え、それを見守る係りを引き受けてほしいと4人に伝えた。彼らは、運よく予定がなく、喜んで援助すると言ってくれた。分からないことがあれば、霊を飛ばしてくれれば、華子の霊が応じると言って、華子自身は、午前3時ごろには眠りについた。華子から電話をもらった男の子たちの霊は、十字軍やバラ戦争などに参加した家系の者たちで、戦いと聞くと、血が騒ぐのだった。きっと彼らの感覚が、今回役に立つと、華子さんは確信していた。
  

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平成25年4月21日(日) 

 
この二匹は、それぞれ6.5キロはあるでかい猫たちなのに、ものすごい甘ったれで、いつも寄りかかれる猫を捜しています。彼らより年上なのに4.5キロしかない雄猫は、このでかい猫を怖がって逃げ回っています。この二匹が歩く姿は、ライオンが、のしのしと歩く姿に似ていて、ねこ慣れしてない人にとっては、怖く感じるだろうと思います。拾った時から成猫でしたから、大きすぎて、里子に出せませんでした。今は、我が家でゆっくりした表情を見せて、眠っているのを見ると、これでよかったのだと思っています。
 
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 華子さんは、SFファンタジーの作家で、ペンネーム中祐一として名が知られていた。ファンタジーものは、読者がつきやすく、連載ものだと、その話が終わるまで何年も読者がついて来るので、華子さんは、裕福に暮らせていた。目白の大きなマンションを維持するには、サラリーマンの平均月収くらい必要であったので、この小説での稼ぎは大きかった。執筆は、別に借りているマンションの部屋を使い、目白の本家を編集者たちには知られないようにしていた。記者や編集者の中には、金持ちをねたむ傾向があるため、出来るだけ、小説家以外の生活を見えないようにしていた。しかし、稼いでいることは知られているのだから、持ち物や、衣服にはお金を使い、貧しい感じは見せなかった。借りてるとはいえ、執筆用のマンションの室内も、相応の家具を置き、編集者たちのもてなしのカップなどもマイセンやコペンハーゲンなど外国の有名工房の物を使っていた。それは、編集者を喜ばせて、中祐一の担当になりたがる編集者は多かった。本来なら、原稿をファックスで送れる時代にもかかわらず、どの編集者も原稿を受け取りに訪ねて来て、華子と、時には二時間くらい世間話をしていくのであった。彼女は、紅茶やスイスのクッキーなどを供して、彼らのご機嫌をとりながら、他の作家の噂話をそれとなく引き出していた。
 華子がSFファンタジーを書くようになったのは、彼女の霊の力によるもので、夫が亡くなって、スイスから戻り、熊本の実家で過ごしているうち、堀越家の地霊と話すようになっった。その霊が、ユーモアに富んでいることから、今までにない世界を展開する小説を手がける事が出来たのだった。霊に関すれば、洋子より華子の方がはるかに強かった。それで、今回、綾先生が、宗像たちのグループと対峙するのに山を選んだのはいいけれど、人けのない純粋に自然力があたりに満ちているところでの戦いの恐ろしさを華子は感じるのであった。熊本で華子が自分の霊に出合った時が、まさに熊本の山であったからで、人けのない場所で、亡くなった夫の事を考えていると、自分一人が生き残っていることのむなしさのようなものがこみあげて、このまま山から飛び降りて見たら楽だろうなんて考えているさなか、彼女の霊が現れ、今の彼女に導いてくれたのだった。霊は、本体が、生き死にを感じるそのぎりぎりに現れ、本体をできるだけ生かそうとする手助けをしてくれるのであって、戦いの力になるとは思えなかった。知っている霊は、綾先生、恵美先生、洋子、そして智子の霊であるが、一番戦いに向いているのが、恵美先生、他の霊は、学問の導きをする霊たちで、せいぜい知力を膨らませる手助けにしかならないのではと思われた。
「今回の旅は、油断がならないと思う。向こうは、まさか戦いを挑んでくるとは思ってないというけれど、修業の山行きでしょう。それに彼らの敵は、綾先生ばかりではなく、他の宗教団体とトラブルがないともいえないでしょう。それらを承知で宗像さんが動いているとしたら、万全の用意をしているかもしれない。綾先生は、戦いをどこに選んでいた?」
「蔵王のお釜だと思う」と、洋子も姉には一目置いているので、すこしおびえた目をしていった。
「詳しくは、話してないのね」
「今回、初めて男の研究者たちが4人来て、彼らが主になって動くらしくて、私たちが参加する理由もよく分からない」
「ただのおとりなのかしら?」と、華子さんは首をかしげた。彼女は、小説で冒険ものを構築するので、戦いについて、あれこれ想像できるらしかった。
「とにかく、綾先生には、勝算があると考えて、勝手な行動はしないようにね。自分の霊が、犠牲になる時は、体に電気が流れるような感じが出ると思う。本体は死にはしないけれど、今持っている能力の三割は失われると覚悟してね。霊を失うと、自分の寿命に影響が出るかもしれないわ。昔から[文武両道]というでしょう。これこそ体力と知力の事で、体力は、生きてる人間がつかさどり、知力は霊力と共に学ぶのよ。私も自分の霊力のおかげで、中祐一として活動できるのよ。洋子のアイディア料理も霊の助けがあってこそなの」
「そうですね。私こそ、K-30さんがいなかったら、まだどこかの契約社員として、パソコン入力くらいの仕事しかできてないでしょうね。今の私の力のほとんどが、K-30さんの知識ですから。今回、知識は、なんとか引き出せるとして、綾先生をどう助ければいいのでしょうね」と、智子は自分の事より、他の研究者たちの事が気になった。もともと宗像を引っ張り出してしまったのが 、智子だったので、今回、何としても宗像の霊を封じ込める戦いに勝ちたいと思っていた。
「意表をつく、というやり方ね。何があるかしら。月山も蔵王も霊山よね。それこそ地霊たちね。宗像さんのガードには、二人の男性霊能者がついているそうだけれど、彼らについては、何も知らないとか」
「お姉さんも、来て手伝ってよ」と、洋子がますます怯えた顔をして言った。
「今晩、私の霊と話してみるわ。参加するにしても、みんなには内緒に。それこそすべての人に意表をつく存在でありたいから。綾先生が決めたことでしょう。たいていは大丈夫だと思うけれど、私が言いたかったのは、浮かれ気分で出かけては駄目だという事よ」
 その日の夕飯は、和食で、明日の体力のために牛肉料理であった。そしてよく眠れるよう心を平和に保つジャスミンティで締めくくった。
    
       

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           平成25年4月20日(土) 

 
体を思いっきり伸ばしている『よっちゃん』座椅子が寝床になっている。そのため人間がテレビを見る時、この椅子が使えず、硬い椅子で姿勢よく見る結果になる。

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 九月二十日までには、残された時間がなく、綾先生が発表した時にはすでに、計画は進められていた。綾先生の研究員の中で、霊力の強い男性が4人選ばれて、彼らは、蔵王山のどこで出会うのが一番いいか計算しているとのことであった。月山も蔵王もかつて修験道の修業の場であって、『茶観悌』が、それらの山を巡るには、何らかの意味はあるのだろうが、どの山も二千メートルはなく、短時間で登山でき、頂上には、神社があった。彼らは、まず月山からのぼりはじめ、後、蔵王連山を超え、蔵王の主峰にあるお釜に到達する予定だろうと考えられていた。彼らの出発日は分かっていたが、旅程はつかめなかったという、それで、二日遅れの九月二十二日に綾先生はみんなと出かけると言った、ただ、グループを二人一組の四班に分けて、それぞれ各々が乗車券を購入して、二十二日の晩までに、蔵王温泉の宿に分かれて泊まることになった。
 智子は綾先生と組み、洋子は恵美先生と組んだ。男性たちもそれぞれ強弱の組み合わせをしたという。そうすることで、オーラを他人に感じさせないで済むのだった。
 明日出発という夜、智子は、華子さんから食事に誘われ、また彼らのマンションに出かけた。今回華子さんは参加しないで、こちらの研究所の留守番を引き受けていた。竹さんも、植物の世話ということで残り組であった。竹さんは、自分には、霊能力がないことをよく理解していて、同室の研究員を恨んだりは、決してしなかったので、綾先生は、竹さんを頼りにして、お金の管理を任せていたのだ。竹さんもこの職場を気に入っていたのと、霊力がないぶん気楽に暮らせることを、他の研究員を見てつくづくと感じていた。
 華子さんは、洋子と智子が今回の危険な任務に参加するので、どう危険なのか話しておきたいと思っていた。華子の家族は、九州・熊本の地霊に守られているので、今回東北の方に出かける洋子の事が気になっていた。地霊の土地に近いほど、守りは効くのだが、同じく宗像も地霊に守られた一族であり、彼女にしても本来の土地である福岡からは離れている土地で修業をしようという点では、不利であろうとは思われた。宗像女史は、綾先生が、彼女の霊力を失わせる実行に出たことを知らない分、綾先生側が有利とは思えたが、片方は、霊の力を宗教に移し、さらに力を強めようと努力している団体と張り合うのは、力不足なのではとも感じていた。

                              
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