anego / 林真理子 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

デジタル編集者は今日も夜更かし。

出版社に在籍していながら、仕事はネット、携帯などデジタル企画のプロデュース。

もし雑誌をやっていたら記事にしたかもしれない様々なネタを、ジャンルにこだわらずコラム風に書いてみる。アナログ志向のデジタル編集者は、相も変わらずジタバタと24時間営業中!

anego

オトナの女性たちが、男性について、恋愛について、本当のところどう思っているのか、それはボクたちにとって、大いなる関心事である。

身勝手な勘違いで分かったような気になっていた20代の思い上がった一時期を除いて、ずっと女のコの気持ちは謎だらけなのだから仕方がないのだけれど、25歳以上のいわゆるオトナの女性たちは、経験を積んだだけさらに謎が深まる。
恋愛に限らず日常の付き合いにおいても、自分自身もそれなりにオトナになって相手のことをおもんぱかる重要性が分かってくると、逆に中学生のように自信をなくし、根拠なく反省と後悔を繰り返すことになる。

たとえば、良かれと思って発したひと言に対する女性の反応に、思わず慌てることがある。いつでも、傷つけたくない、怒らせたくはない、と心から思っているのだから、不機嫌になって急に口数が少なくなったり、眉根に少しでもシワが寄ったりする否定的な反応には敏感なのである。時として、え?何で?どうして?何がいけなかったの?と本当に戸惑うが、そんなときにオトナの女性は、オトナの男に詳細を説明してはくれない。

『anego』は、“キャリア女性の恋愛バイブル”と銘打たれている。
本の帯によれば、丸の内OL(このカテゴリーがよく分からないが…)に大いに支持されたらしいこの小説には、つまり女性の気持ちが描かれているに違いない、と読み始めた。
すべての女性を十把一絡げにするつもりはサラサラないけれど、異性を理解するための一助となるのなら、努力を惜しまないのがオトナの男なのだ。

思いのほか、小説としておもしろかった。
三十三歳独身の主人公は、ファッションや体型にも気を抜かない見目麗しき一流商社勤務のOL。後輩からは姉御と慕われ、男性にもちゃんとモテる。
それでも心のどこかでゴールは結婚と信じている、いわゆる“負け犬”予備軍である。酒井順子氏の『負け犬の遠吠え』を読んでもさっぱり分からなかった女性のホンネが、より赤裸々に書かれているような気がする。
細かなエピソード毎に、おお!そんな風に考えるのか、とか、その行動にはそんな理由があったのね!とか、その言葉の意味はつまりそういうことだったのか…とか、とにかく、何となく分かった気になる男性諸氏のための“女性心理バイブル”のように思えてくる。

だがしかし、オトナの男は小心にして慎重なのだ。
それらを鵜呑みにはしない。林真理子を全面的には信用しない。なにせ、思春期突入以来、数々のマニュアルで勉強してきたにも関わらず、心ならずも傷つけ、怒られ、ヘソを曲げられてきたのだから。
女性は、この小説をどう読んだのだろう。未見だがドラマにもなった理由は、本当に“共感”だったのだろうか。信用して良いのだろうか、と疑心暗鬼になっているのもまた事実なのだ。

帯にはまた、“まさに、恋愛ホラーとも言うべき新ジャンルを確立した衝撃の長編小説。”とある。このキャッチを書いたのは、女性? “背筋まで凍り付くような…”とまで書いている。
どこがホラーなのか。もしかしたら、映画『危険な情事』を想像してる? 確かに恋愛経験としては、思わず(→o←)ゞあちゃーと叫びたくなるであろう「痛い体験」エピソード満載ではあるけれど、決してホラーなんかじゃない。確かにギョッとするラストではあるけれど、それは、純粋な恋愛の証のようにボクには思えた。もし、この恋愛の結末がホラーなのだとしたら、ボクはまだまだ女性の心理は分からないということ。素敵な恋愛小説として読んだボクは、間違ってますか?

■anego / 林真理子■