“瀬尾まいこ”×3作 Love! | デジタル編集者は今日も夜更かし。

デジタル編集者は今日も夜更かし。

出版社に在籍していながら、仕事はネット、携帯などデジタル企画のプロデュース。

もし雑誌をやっていたら記事にしたかもしれない様々なネタを、ジャンルにこだわらずコラム風に書いてみる。アナログ志向のデジタル編集者は、相も変わらずジタバタと24時間営業中!

seo_maiko

 

村上龍『半島を出よ』上下巻 と並行して、瀬尾まいこ氏の三作品を続けて読んだ。


かなり無茶な読書作法。

でも『半島を出よ』で精神的にかなりプレッシャーを感じていたので『幸福の食卓』 で初めて出会ってホンワカできた氏の作品を中和剤としたかったのだ。

おかげで、胃に穴が開くこともなく『半島を出よ』を読み終えた。

そしていまもどうにか希望を持って生きている(^^

 

『半島を出よ』は近未来を描く非日常的な小説であり、一方の瀬尾まいこ氏は、極めて日常的で穏やかな日々を描く。
しかし、自分にとっていまどちらの世界がリアルで身近に感じるか、と問われれば、ボクは迷わず『半島を出よ』と応えるだろう。

日本列島を取り巻く現状を見るとき、他国の兵士に国土の一部を占拠されるという非日常的な近未来と正面切って向き合わねばならない、とマジに感じている。

だから、『半島を出よ』は胃が痛くなる。そして、日本のリーダー(!)たちの顔を思い浮かべると、辛くなる…。

 

それに比べてこの三作品は、紆余曲折はあっても、それを乗り越えるだけの優しさに包まれ、穏やかな日常に溢れている。そこにある偶然の出会い、手が届きそうな幸せ。

でも、こんな日常がそうそう転がっていないことも同時にボクたちは知っているのだ。
非現実的だと思っているわけではない。こんな日本に、かつてボクも住んでいた。ここに描かれているような学園生活を送った思い出もある。

 

氏の小説は、誰と誰がどんな料理が並ぶどんな食卓を囲むか、という関係性のバリエーションだ。
4冊目の『幸福の食卓』 で、象徴的なそれがタイトルにもなるわけだが、処女小説『卵の緒』からず~っとその姿勢は貫かれている。社会性から隔離された小説は、何となく非現実的な、現実から目をそらせた夢物語になりがちだけど、じつは、この食卓や食べ物がリアルな世界との接点を保っている。小説が、小説として確立するための重要なファクターを担っているような気がする。


卵の緒/瀬尾 まいこ
「坊ちゃん文学大賞」受賞の表題作と、もう一編収録。せつなくなるほど優しさにあふれるている。子どもたちと周囲のオトナが、疑いもなく信頼関係を築いている安定した心地よさ。家族が、家族であるための要件が、何であるのかを思い切りストレートに描く。

 

図書館の神様/瀬尾 まいこ
もしかしたら、瀬尾氏の作品のなかでもイチバン好きかもしれない。本を読むこと、本を語ること、本に出会うこと。瀬尾さんは、本当に本が好きなんだろうな。そして、その素晴らしさをみんなと共有したくて、教師になったんだろうな(彼女は現役の中学校教師)。そして、もっともっと伝えたくて、小説を書いているんだろうな。主人公と、瀬尾氏のイメージがダブる心地よい読後感。

ニコっと微笑みながら、泣いた。

 

天国はまだ遠く/瀬尾 まいこ
シチュエーションは氏の作品としては異色だけど、でも底知れない優しさと、希望はここでも貫かれている。現実から逃れているようで、現実と正面切って向き合っている瀬尾氏のマジメさも滲み出る。


本棚に入りきらない文庫約2,000冊の山が書斎の片隅に積み上げてある。その文庫の山の上に、三作品を並べて撮影。単行本で読んだ小説も、その一部は文庫化されるとまた買って、何度も読み返したりする。瀬尾まいこ氏のこの三冊と『幸福の食卓』は、たぶん文庫化されればまた買うだろう。そして、心がしんどいときや、躓いたときに、また読み返すだろう。
優しくなれること、人を信じることは、本当に素敵だ。
皆さんの週末の食卓は、誰と囲み、どんな料理が並んで、どんな話が弾むのかな。