ブームのライトノベル系ばかり新人賞やらなんやらを総なめして五冠を獲得した、天才と呼ばれる高校生作家・日日日(あきらと読む)のデビュー出版作だ。本書は“第4回新風舎文庫大賞”大賞受賞作。日日日は、フツーのオトナには、まだまだ知名度はないが、斯界では既に大スターなのである。
ライトノベルだし、表紙はマンガだし、ジュブナイル・ホラーと紹介されているし、いつもなら食指は動かないのだが、でもまあ、縁起モンだから読んでおこうか、と手に取ってみた。きっと、マンガでイイじゃんのテキスト版か、魑魅魍魎だとか髑髏だとか(暴走族か京極夏彦氏なら分かるけど)やたら不条理に画数の多い漢字を使いたがる作文を覚悟していたのだが、とんでもなかった。
続けて2冊目の『私の優しくない先輩』を読み終わったばかりで、まだまだ信用をしたわけではないが、もしかしたら、この18歳は本物になれるかもしれない。
まず、なんといっても文章がこなれているのだ。だから、オトナの本読みが読んでも十分に耐えられる。ラノベだからといって、恐れることはない。どちらかといえば、古くさい言い回しが多かったりするのだが、決して背伸びをしているわけではなく、適切な箇所で抑制されて効果的に使われる。(“ご愛敬”はあるが許す…)
もし彼の出版ファンドがあるのなら、中期投資のつもりで資金を入れて、ボクのポートフォリオに組み込んでもイイ。なんといっても、デビュー前の2~3年で、17編の長編を書き上げたという安定性。デビュー作が出たばかりなのに、6月1日には文庫2冊が同時に発売される。
ネットのあちこちにある彼のインタビューを読むと、至極まっとうで、至極小生意気な少年だ。自信たっぷりで、受賞した各文学賞も、審査員や性格に合わせて作品を選んで応募したらしい。噂では、最終選考に残ったのに辞退した賞もあったと聞く。
きっと自信があったのだろう。いまでも、複数の作品を同時並行して書いているという。可愛い顔して、まったく謙遜をしていないところも、イケイケのチカラあるガキンチョらしくてとても好ましい。
『ちーちゃん~』は、幽霊好きの幼なじみの女のコと“僕”の物語。軽くホラーのジャンルか。
一方、『私の優しくない先輩』は、身体の弱い“私”の一人称純愛小説。
縁起モンなんで、どちらでも好きな方を手にとって読んでみてくださいな。
残念ながらまだまだ、ページをめくるのももどかしく先を読みたい、と思わせる物語性、パワーが足りない。テクニックはあるので、先を読んで結末を知りたくなるようには書かれている。
でも彼は、嘘がまだ上手につけないようだ。想像するに、きっと恵まれた人生を歩いてきたのだろう。想像力で虚構の世界を構築できる段階まで成長しきれていない。文章のスケッチで読ませる作家を目指すのなら今のまま書き込んでいけばいいのだろうが、できれば、もっともっと広く体験、経験を積んでいって欲しいな。
デビューの年齢とその巧さから、乙一と対比されることが多いが、日日日は、散歩をする刺青の犬を(マジ天才・乙一の“平面いぬ。”)妄想から産み出すタイプの作家ではないような気がする。
両作品とも、セツナイ結末。でも、オトナにはちょっと“狙い”がばれてしまう。二十歳前後の感性であれば、ぜひぜひオススメ、と共感したいところだが、そこが作者の若さ。
ただし、『私の優しくない先輩』のラストにはみ出した一行は、かなり小粋だ。
こんな素敵なセンスの一行が書けるだけで、オトナのボクも、日日日の将来性を大いに期待してしまう。
彼もまた、熟成を待ちたい作家の一人だと思うのだ。
食べ頃は、近いと思うけど。
■ちーちゃんは悠久の向こう/日日日■
■私の優しくない先輩/日日日■