「ばんぢろ」のコーヒー

「ひろしまのコーヒーは、たいてー薄すぎるよねぇ~」
○今から20年くらい前、博多に住んでいたとき、
食通の友だちに連れて行かれた純喫茶、
それが「ぱんぢろ」でした。
神社に隣接した、細い道筋にありました。
入って右に厨房とレジ、半地下と中2階に
席があったと思います。
○夏は、アイスコーヒー。
コーヒーの上に、ミルクの層でフタがしてあり、
香りや、味が封印されたまま、テープルに…。
口に含むと、ミルクとコーヒーが絡み合う、
瞬間の香りと、うまみが楽しめる一品。
濃厚なコーヒーとコクのあるミルクは、
絶品のアイスコーヒーでした。
○冬は、ホットコーヒー。
きわめつきは、あたためた水出しコーヒー。
2杯分ですが、1000円もしたので、
2度くらいしか飲んでない代物です。
水出しコーヒーも半端でなくて、
化学実験のような器具で、ひと晩かけて、
抽出されていたと思います。
○1000円コーヒーは、2杯分入ったポットに
空のカップがついてきて、自分で注ぐように
なっていました。
うろ覚えですが、ポットのまま、湯煎で、
あたためられていたかもしれません。
少しだけ、口に含むと、ふくよかなお湯の味。
しばらくすると、体が、ほわ~と暖かくなり、
体温くらいの海水に漂っている気持ちになります。
そして、香り、コク、甘みがゆっくりと体から、
感じはじめます。
○マスターは、白髪の目が生き生きとしたかたでした。
どうしても、1000円のコーヒーが飲みたくて、
でも、2杯も飲めなくて
「1杯だけ飲ませてもらえませんか?」
とオーダーすると、応えてもらえました。
そして、わざわざマスターが…。
私は、ここぞとばかり、
「ばんぢろ」方式のコーヒーのいれかたのコツを
しつこく聞きました。
ずっと「ばんぢろ」コーヒー抽出法の印刷物が、
壁に貼ってありましたが、
細かいところが、よくわからなかったからです。
○博多を離れて数年後、結婚式に呼ばれたとき、
真っ先に「ばんぢろ」に行きました。
ところが、コーヒーをひと口含んだとたん、
すごく違和感が…、妙な酸味があったのです。
これは、豆が酸化したような味でした。
マスターは亡くなられていました。
○その後、これは…、と思った珈琲店は、
取材で行った、倉敷の店。
十年以上、コーヒー豆を送ってもらいました。
しかし、あるときを境に、豆が変わってしまい、
私の好みのコーヒーではなくなりました。
○今は、偶然に出会ったコーヒー豆店に行きます。
お店は、歩いて行けるところ。
こんな近所に探し物があったなんて、「青い鳥」です。
お店は「スマイル」という名で、
うちと同じく、夫婦でされています。
○ひとり暮らしのころは、自分でコーヒーをいれましたが、
いつのまにか、いれてもらう人になりました。
今は、口だけ出すので、プロデューサーですかねぇ~。
「たまには、自分でコーヒーいれんさいや~」
そろそろ後ろから、神さんの声が聞こえてきそうな雲行き。
広島の天気も雨模様です。
*ネットで見つけた「ばんぢろ」の記事
*スペシャルティコーヒー自家焙煎珈琲豆専門店「smile」