遠い夏の日 そして 海のギャング | ひきこもりパンクスの冒険アメブロ支部

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ロックバンド ザ・サンセット ラプソディーの歌、絶叫、ギター、ハウリング 担当 リョウのブログ

オイッスー。


オレだよ、オレオレ、ヘレン・ケラー。


はい。



夏は過ぎる


儚いひとときの景色達を連れて


秋の影を微かに匂わせる風に手を引かれ ここを去ってゆく


ゆるやかな放物線を描いて陽の沈む夕刻の孤独な日暮らしの歌声を背にして


胸は満ちる 


物言えぬ寂寥に


二度と戻らない日々への哀惜に


満ちる


そんな景色達を忘れまいと心の中に焼きつけようと試みてはみるのだけれども


それでも 僕等はやがてそれらを忘れて行くことになるのだろう


忘れて行く


繰り返す日々の中で


とても静かに


そして残酷に


どうしてなんだろう


どうしてなんだろうね



けれども、この時期、夕刻に吹く寂しい風が遠い記憶の果てで忘れられたはずの一ページを何故か、ふいに開くことがある。


今日はそんな話だ。



中学時代の夏休み、僕は仲の良かった岩・・おっと、ここは何年も親交が絶えていることだし、名前を伏せてA君としておこう。


そのA君とその他、僕達共通の友人三人、総勢五人で千葉の海の近くにあるという、A君のおばあさんの家へ二泊三日で遊びに行くことになった。


中学生という多感な年齢。


青すぎる空。


眩し過ぎる太陽。


果てしなく広がる海。


その計画が発表された時から我々の胸の中でサタデーナイト・フィーバーが開催されたことは、きっと想像に難くないだろう。


そして、出発当日。


これ以上ない素晴らしい晴天の下、僕達の旅はスタートした。


電車に乗り、車窓からの景色がやがて見たことのない風景へと変わり、駅を降りてしばらく歩いてA君のおばあさんの家に到着。


まずは、これから三日間に渡り、我々の世話をしてくれるA君のおばあさんに挨拶だ。


もしも鬼のようなババアだったらイヤだなぁ、などと自分は内心思っていたのだけれど、全然そのようなことはなく、小柄で物腰柔らかな優しいおばあさんであった。


そして、早速我々は海水浴の準備に取り掛かり、今少し準備がかかるからというA君ともう一人を残して、自分を含め三名の先発隊は、おばあさんに作ってもらった弁当を持って海へと向かったのであった。


既に昼過ぎだったので海岸に到着するなり、我々三名は昼食を取った。


やたらと美味い昼食であった。


しばらくすると、頭に格好の良い紫の水中ゴーグルと、これまた洒落た紫の海水パンツを装着したA君が浮き輪を片手に携え、王者の貫録を漂わせながら残る一人を引き連れ颯爽とビーチに登場。


これで全員が集合だ。


時は来た。


そして、我々五名の終わりなき夏の冒険者達は奇声を上げ、海へと疾走しながら着水したのであった。


狂気を孕んだテンションで我々は海水を浴びせかける、バック・ドロップを喰らわせる、もしくは逆にバック・ドロップを喰らう、あるいは味方のフリをしつつ、まんまと油断したヤツにやはり裏切りのバック・ドロップを喰らわせる、などと人目を憚ることなく狂態をさらしていた。


すると、A君はおもむろに先ほどの格好の良い紫のゴーグルを装着し、潜水しつつ、我々の足を引っ張り海中に引きこむ、という荒業を開始したのである。


A君を除く我々四名はゴーグルを持参しておらず、その荒業の前では全くなすすべがなく、「やーめーろーよ-。」「卑怯だぞ、貴様ー。」などと喜び、奇声を上げる四頭の無力な子羊たちを順次に海中に引き込みながら、「絶対的な海の支配者」、いや、ここは小粋に「海のギャング」と形容しておこう、「海のギャング」、こと、岩崎君は絶好調であった。


そして、「海のギャング」の鋭い牙が僕を再び襲った。


左足を獰猛な「海のギャング」に掴まれ海中に引き込まれそうになった刹那、僕は笑いながら奇声を上げ、残った右足で海中の「海のギャング」を蹴り飛ばし、その獰猛な牙を振りほどいた。


そして、再び「海のギャング」、こと、A君が水上に姿を現した時、先ほどまでとは彼の様子が全く変わっていることに我々四名が気が付くまでに、そう時間はかからなかった。


7月の眩しい青空と対照的に「海のギャング」、ことA君は12月の灰色の空のような表情をして、鼻を押さえながら静かにこう言った。


「そうですか。鼻をやりますか。そう来ますか。」、と。


笑い顔のままでいた自分は一瞬、何のことかよく解らなかったのだが、先ほど海中で「海のギャング」の獰猛な牙をキックによって振りほどいた際、自分は胴体か何かに当たったと思っていたのだけれど、見事に「海のギャング」、ことA君の鼻ヅラにメガ・ヒットしていたらしいのである。


つまり、解りやすく言うと、A君は水中で鼻ヅラにケンカキックを喰らったことになる。


凍りつく空気。


真夏なのにね。


これは故意ではないとはいえ、自分が完全に悪いと思ったし、みんなの愉快な気分をこのようなことで台無しにしたくはない、とも思ったので自分はその場で何回も謝罪したのだけれどもA君はそれを無視して浜辺へと泳いで行ってしまった。


その場に残された我々四名は浮き輪を片手に携え、海岸を去って行くA君の姿をただ眺めていた。


終わりなき夏の冒険者である我々が奇声を上げ、着水してからこの悲劇が起き、A君と我々の間に亀裂が入るまでわずか五分ほどであったと思われる。


美しい時間というものは、あるいは長くは続かないものであるのかもしれない。


自分は「ぐっはぁあ―、やっちまっただー。」と思い、嗚呼、どないしよう、と困っていたのだけれど、残された自分以外の三名が口々にこう言い放ったのである。


「いいじゃん、あんなヤツ放っとこうぜ。」、「実は俺、あいつ嫌いなんだよね。」、「牛丼食いてえ。」、と。


まぁ、ある程度の洞察力のある読者の方ならば、「牛丼食いてえ。」、というのは嘘であることは解ると思うのだけれども、A君は常日頃からみんなに傲慢な態度を取ったり、フレンチな暴力を小粋にふるったりしていたせいでみんなにけっこう嫌われていたのである。


その流れの中で僕は自分が1200% 悪いにも関わらず、「そうだよな、何回も謝ってんのによぉ、あいつムカつくぜ!あんな野郎は鹿十をして残ったみんなで楽しもうぜ、レッツ パーリー!!」などと言い放ち、残った四名で太陽が海岸を切ないオレンジ色に染めるまでとことん遊び呆けたのである。


しかし、遊び疲れた我々が何処に帰るかわかるだろうか。


そう、A君のおばあさんの家である。


この騒動の真犯人である自分は内心、少しばかり気が重かったのであるが、どこにいるのかA君の姿は無く、おばあさんも特に変わったところは無く、夕食を作って迎えてくれたのであった。


そして、夕食が終わり、我々があてがわれた部屋でくつろいでいると、どこからかA君が帰宅したのだけれども、決して我々の前に姿を現すことは無かったのである。


しかし、夜も更け、就寝の時間になった時、ついにA君は仏頂面をして我々と同じ部屋に入って来たものの、自分はおろか、誰とも口をきくこともなく、その夜はみんな疲れて眠ってしまった。


かくして、「みんなでA君のおばあさんの家に遊びに来てみんなでA君を無視する」、という意味のわからない構図がそこで確定してしまったのである。


翌日、まだ眠ったままのA君を無視して我々は昨日と同じく海岸へ行き、陽が沈むまで海水浴を堪能。


また、A君のおばあさんの家へ戻り、A君を無視して夕食を喰らい、夜にみんなで散歩に出かけたら踏切が延々鳴り続けているという異様な事態が起こっており、何事かと思って見に行くと、どうやら置き石をした阿呆がいたようで電車が脱線している。


そして、我々より先に来ていた、どこぞのじじいが我々を見るなり何を血迷ったのか知らぬが、このガキ共が犯人だ、俺はこの目で見た、などと大嘘を言い放つ、我々は「ふざけんな。」、「俺等は様子がおかしいから見に来ただけだ。」、「嘘を吐くな。」、「逆に貴様が犯人ではないのか。」、「牛丼食いてえ。」などと応戦し、結局、じじいと我々を含む、その他、その場に居た全員が氏名と連絡先を、おまわりピョンに訊かれるという憂き目にあったのだが問題はそんなことでは無かった。


翌日に我々は帰宅するわけであるが、岩さ・・おっと、いけね、A君と一緒に帰るのか、ということである。


A君は我々と口をきかない、我々もさような態度を取り続けるのならば口をきく気はない = 超うぜぇ、という結論に至った我々は早朝、A君が目覚める前にとんずらを致そう、という非道な手を取ることにした。


まだ陽が昇り切らぬ時刻、我々は起床して、眠っている、あるいは狸寝入りを決めこんでいるA君を残して出発した。


A君のおばあさんは、うすうす事情を察していたようであったが、この時ばかりはA君と一緒に帰らないのかと心配そうに尋ねたが、我々は言葉を濁して出来るだけ丁寧に礼を言って、A君のおばあさんの家を後にした。


この時ばかりはさすがに胸が痛んだが、もうどうしようも無かった。


そして、帰り途にも館山に寄って海を眺めるなどして、僕等の旅は終わったのである。


後日。


僕とA君は同じ部活に所属しており、夏休み中の練習の期間も毎日、顔を合わせていたのだがお互い話をすることは無かった。


それに関して僕は自分達のしたことが酷いことだと自覚していたので苦い想いをしていたのだが、どうすることも出来なかった。


しかし、その年の町内の夏祭りの夜。


ある時、全く偶然にA君と出会ってしまい、目が合った。


1、2秒、目が合ったままで時が止まった。


僕は緊張した。


だが、次の瞬間、A君は照れたように笑って「なんだよー。」と言って僕に掴みかかって来た。


僕はホッとして笑いながら「なんでもねぇよー。」と言った。


そうやって、僕等は仲直りをしてその夜は楽しく過ごした。


それは素晴らしい夜だった。


まるで本来過ごすべきだった素晴らしい時間を取り戻すかのような。


そんな暑い夏の夜だった。





はい。



えー、最後の方で自身の鬼畜っぷりを綺麗に清算するかのような構成でお送り致しました。


さて、長々と書いて来ましたが本題に入りますと、近日、マスタリングもしていませんし、ラフなミックスですが2曲ほど自主デモからアップしようと思います。


その2曲は現在アップされている曲とはタイプが違うと思うのでヴァリエーションのひとつとしてとりあえず紹介しておきたいからです。


「お前が嫌い」という曲からアップすると思います。


この流れでこの曲名というのは情緒が不安定としか言いようがないですが、仕方がありません。


何故なら、仕方がないからです。


じゃ、そんな感じで。


チャオ。