津川浦防衛戦・アルナ寄り視点
北京に展開していたEDF極東方面軍・第7師団が壊滅した。
更に、極東師団を壊滅させた"フォーリナー"の白銀の人型歩行兵器の軍団が、現在日本へと進軍しているとの情報が入った。
これに対しEDF Japanは二カ所の予想上陸地点で待ち伏せ、一挙に全滅させる作戦を立てた。
それに伴い、本部は九州方面に派遣されているストームチームを呼び戻した。
~・~・~・~・~・~・~
「しかし、フェイさんも不思議な方ですねぇ。どれだけ凄腕か見せてくれだなんて」
津川浦に向かう装甲兵員輸送車の中。
ストーム5小隊長・暦アルナと我らのストーム1ことフェイ・ルーイングは向かい合わせに座り、ここ最近の出来事を話し合っていた。
「この間、ストーム4の某隊員の実力を知らずに共闘したら出番が殆ど盗られちゃってね。……ハァ」
少し疲れたような目をするフェイさん。
「ストーム4というと……ああ、ビルですか」
「そうそう。あ、そういえばアルナ隊員、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
アルナの方に振り向くフェイさん。
「なんですか?」
「あなた、ストーム5の隊長よね?」
「そうですが?」
「その割に……ヘルメットの色が赤くないんだけど」
EDFユーザーの皆さんならご存じのとおり、今作(地球防衛軍3)に登場する小隊長のヘルメットの色が赤い。
その為全国のストーム1が隊員を奪う為に広島キラーと化しているのは、もはや常識である。(ちなみに著者もである)
だがしかし、アルナのヘルメットはフェイさんと同じ。バイザーがチンガード付きのフルフェイスタイプになっているのが相違点である。
「爆発物を取り扱いますからねぇ。専用のメットを作らせて頂きました」
「いや、そっちじゃなくて」
フェイさんの目線の先には、赤ヘルのストーム5隊員が。
「メットの色ですね。私は原則として後方に下がる事が多いので、副隊長のリキちゃんに現場指揮官になってもらいました」
「そんな簡単に……」
呆れた表情を浮かべるフェイさん、それに対し歯を出してニヤリと笑うアルナ。
と、車が停まった。
「着いたようですね」
~・~・~・~・~・~・~
空はまだ暗く、星が浮かんでいた。
明けの明星―金星―の出現はもう少し先であった。
「各員展開! いそげーっ!!」
レンジャー2隊長が檄を飛ばす、それとは対照的にストーム5はゆっくりと配置についた。
「あなたの隊、何だかのんびりしてるんだけど……?」
「敵が来るのはまだ先、今ピリピリしててもしょうがないじゃないすか」
「そりゃそうだけど……」
と、アルナが水平線の一点を見つめ始める。
少し経って彼女も海岸へと降り始めた。
「どうしたの?」
「敵の移動ルートが予測できたので、トラップを仕掛けておきます」
「え!? だって敵はまだ……」
「私、目がいいんですよ?」
それだけ言って降りて行ってしまった。
「えーっ……。そこまで目がいいなら狙撃手(スナイパー)になればいいじゃない……」
……
対空インパルスをパラパラと設置し、続いてC70爆弾を設置してゆく。
それはもう流れ作業、完全に手慣れている。
「いよーっアルナさーん! 帰ったらデートしてくれーぃ!」
レンジャーチームの若い隊員がナンパし始めた、こっちはこっちで緊張感がない。
「ははっ、無傷で帰還出来たら考えてあげますよ」
そう言いつつもパラパラと爆弾を設置してゆく。
そうこうしてる内に、明けの明星が昇り始めていた。
……
「フェイさん、こちらの準備は出来ましたよ?」
「お疲れさま、じゃ後は待つだけね」
朝日が昇り始めた頃、比較的広範囲へのトラップの設置が完了した。
本当にこれでいいのだろうか、それはアルナにしかわからない。
……
水平線に陽炎を浮かべながら、太陽は昇ってゆく。
アルナ曰く「そろそろ肉眼で見える」そうだが、フェイにはまだ見えなかった。
彼女はケーキスポンジが焼きあがるのを待つのは好きだが、敵を待つのはあまり好きではない。
ぶっちゃけ待つのがもどかしいのもある訳だが……。
ぴと
「!?」
ふと頬に伝わる冷たい感触、誰だって驚くはずだ。
振り向くとラムネの瓶を持ったアルナが佇んでいた。
「飲みますか? ただ待ち続けるのは疲れますよ?」
「ありがと。……ところでアルナ隊員」
「なんですか?」
「あなたの部隊、さすがにちょっと緊張感なさすぎなんじゃ……?」
見るとストーム5の隊員たちは、どこからだしたのかトランプと洒落こんでいた。
今やっているのは七並べらしい。
「敵が見えないのにピリピリしてたら本番つらくなるじゃないすか。だから見えない内はああしてるんすよ」
「とはいっても、ねぇ?」
「……そういや、私が九州支部にいたのはご存じですよね?」
「一応」
「あの支部長アタマ硬くてねぇ~。人が被害が最小限で済むような戦術やってやってんのにそれに指図するんですからねー。
EDFに求められるのは圧倒的な戦力差の中であきらめない心掛け。だけじゃないすよねぇ?いきあたりばったりな防戦じゃ何人レンジャーが居たってたりないっすよ。
この間だってヘリ部隊が対地攻撃失敗して、市街地ギリギリの所まで迫ったのをトラップで一網打尽にした時だって……」
「あのー、もしもしー?」
「……あ。すいません」
あまりの熱の入りように、右手に握りしめたラムネ瓶を握りつぶしていた。
「そういえば、このラムネってどこから持ってきたの?」
「そこにある海山商店からですよ、お代は置いときましたから心配は…………ん」
ふと、遠くを見つめるアルナ。
「どうかしたの?」
「敵の位置がふつうの人の肉眼で見える距離に達しましたよ。……各員戦闘態勢に移行」
その声と共に、すぐさまトランプを片づけ配置に就くストーム5。大変切り替えが早い、以前からこうなのであろう。
朝日に照らされ、ギラギラと輝く複数の影。
低空をゆくのはガンシップなのはすぐにわかる、しかしフェイは問題のロボット兵器の姿を目視できない。反射しすぎて逆に見えないのだ。
「目が怖いですよ? フェイ隊員」
~・~・~・~・~・~・~
『総員戦闘開始だ! 撃って撃って撃ちまくれ!』
本部から司令官の檄が飛ぶ、戦いの幕は切って落とされた。
『レンジャー1、了解!』
『レンジャー2、了解!』
『レンジャー3、了解!』
『レンジャー4、了解!』
『レンジャー5、了解!』
『レンジャー6、了解!』
レンジャーチームが一斉にガンシップ編隊へと攻撃を開始する。
「ストーム5了解!、作戦を開始します」
前方で待機していたストーム5も動き出す。
「さて、いっちょやりますか」
アーマーの隙間から長方形の物体を取り出すアルナ。
「それって……何?」
「手製の起爆装置ですよ、これでやった方が早いですからね」
そう言い上部のスイッチを押す。
ズバァン!!
本来、一基ずつしか起爆できない対空インパルスが一度に起爆した。
そしてそれをモロに受けたガンシップ編隊は、元々多数が撃墜されていただけあり瞬時に全滅した。
「80点てとこですね」
「80点って……。あ」
フェイが声を上げた。
「どうしました?」
「あのロボット……
ダロガじゃない!!」
「ダロガ?」
『おい! あれを見ろ!』
『どうやらフォーリナーも二本足で歩いてるらしいぜ!?』
ギラギラとその体を煌かせているのは、フェイの"故郷"の四足歩行ロボットではなかった。
ひょろっとした体つきで、何故か頭を出し入れしている巨大人型ロボットであった。
「………(涙)」
「ぇー。……あ、このタイミングですね」
フェイが落胆しているのを横目に、アルナは起爆グリップの底を三分の一回転させ、もう一度起爆スイッチを押した。
大音響と共に仕掛けていたC型爆弾が一斉に爆発し、敵ロボットの殆どを粉砕した。
爆発をくぐり抜けた奴もいるが、満身創痍のごとく黒煙を噴いていた。
「って!? このままじゃ私の出番がなくなる!」
そう叫び、フェイはすぐさま海岸へと走り出した。
「フェイさんもう手遅れですって! ……あーあ」
視界には火を噴いて倒れる敵ロボット、勝利の雄叫びを挙げるレンジャーチーム。
そして砂浜に膝と手ををついて落胆するフェイさんが、朝日に照らされて黄昏ていた。
オワレ
--------
○余談そのいち。(戦闘終了後)
隊員「デート……」
アルナ「被弾したから駄目ですよ~、ていうかその体じゃ無理ですって」
不幸にも、隊員Aは敵ロボット(ヘクトル)の赤色爆発光線の直撃を受けていた。
そして病院送りとなった。
死亡フラグまがいの事言っといて、それで済んだだけ儲けモンである。
○余談そのに。(「凶蟲飛散」時)
アルナ「ケーキがここまで人を変えるものなのですかねぇ……?」
副隊長「隊長のMyフォークより怖いですって。」
ベガルタで縦横無尽の大活躍をするフェイさんを、本部のモニターで見ていたストーム5隊長陣。
この直前、以前の件からケーキをひとホール渡そうと話をしていたら出動がかかったのだ。
だが、この時のフェイさんの思考にケーキの事があったかどうかは大変疑問である。
何しろケーキがらみの時にフェイさんが発する殺気に似た「なにか」に、他ならぬフェイさん自身が脅されていたからだ。
まったく関係ないが、ストーム5に専用のベガルタが配備された。
今度こそヲワレ。
☆えむ’sコメント☆
SGF-004さんより頂きました。アルナ隊員視点でのMission09です。
こう視点や書き手が違うだけで、こうも新鮮さが違うとはw
なにはともあれ、確かに受け取りました。でもってアップさせていただきました。ありがとうございます。Σd