まぁ、下っ端とまではいかなくても、そこそこ下っ端(?)である私が言うのもなんなのだが。
太平洋上にいたマザーシップが、何を思ったのか日本近海へと戻ってきたらしい。
当然、EDF日本支部はちゃぶ台をひっくり返したような大騒ぎとなり、すぐさま迎撃すべくストームチームを含む精鋭に緊急招集がかかったわけなのだが。
ちょうどその時。私は昼食デザートタイムであった。
「フェイさん、出撃ですよ!!」
「わかってる」
「だったら早く行きましょう!!」
「ケーキが呼んでるから、ちゃんと片付けてあげないと・・・」
「えええええっ!?こんな時でもケーキ優先なんですかっ!?」
レンジャーチームの一人が呆れと驚きの入り混じったような表情を浮かべる。
ここだけの話だが、すでに私のケーキに掛ける愛と情熱の凄さは、EDF日本支部全体に知られている事実である。
「こんな時だからこそ、ケーキを食べないと。――何かあった時、悔いが残るでしょう」
「え?」
「私、この作戦が終わったら昼間に食べれなかったデザートのケーキを食べるんだ…なんてそんな死亡フラグを私に立てろと言うの?」
「あ、いや、そういうわけじゃ…」
「だったら、食べさせて。15分で食べるから」
「長っ!?」
「味わって食べるんだから当然でしょうがッ!!」
「逆ぎれしないでくださいッ(涙)」
と、まぁこんな感じで。有意義なデザート時間をすごしていたのだが―――
それが、ちょっとした失敗であった。少し遅れただけで、装備がほとんど残っていなかったのである。
それでも、これ以上待たせるわけにはいかない。仕方がないので、適当に目についた武器を手にとり、慌てて出撃したのだが、それがさらなるトラブルを巻き起こすことになろうとは……。
「なに、あれ…」
少し送れて現地入りした私の目の前に飛び込んできたもの。
それは四足のとんでもなくでかい機動兵器であった。すでにガンシップとの戦闘が始まっているため、まずは群がってくるガンシップを叩くべく、持ってきた武器その1を構える。
もって来たのはスナイパーライフルで、形式番号はMMF50。普通見かけるライフルのナンバーが40番台であることから、これは新型装備なのかもしれない。
偶然とは言え、運は良かったようだ。
高倍率スコープを覗く。これなら狙撃の腕はまぁまぁの私でも、命中率は高そうだ。
てなわけで撃ってみた。
「…」
さらに撃つ。
「…」
撃って撃って撃ちまくる。
「……当たらない。なんで?」
だが、一発も当たらなかった。狙撃は普通の腕とは言え、決して下手ではない。とりあえず精密とは行かなくとも狙った所に当てれる程度の腕はある。
なのに、その撃った弾のどれもが大きく狙いが逸れてしまうのだ。
ためしにスコープを覗かずに撃ってみたら、めっちゃ弾道がずれていた。
気になって、スペック表を見ていたら、精度がBだった。スナイパーライフルなのに。他のがほとんど軒並みS+の中…だ。
精度が悪いにも程がある。だが、不思議とぶちきれて叩きつけたりはしなかった。
あぁ、そうだ。前の世界で、精度Zと言うとんでもない武器(グロームX)を使ったことがあるからに違いない。
あれに比べれば、これくらい大したことはない。と、いつの間にか私の心は少しばかり寛大になっていたようだ。
そうこうしているうちに四足機動兵器は歩き出して、ヘクトルとやらが歩き出しているが、これはこれで困った事になった。今回の装備は遠距離仕様。でも当たらない。近づけば当たるだろうが、スナイパーライフルで近接戦など無謀の極みだ。
だからと言って、某スナイパーの相方みたいに弾道のズレを予測して当てるなんて、器用な真似は私には出来ない。
武器の射程は悪くない。火力も充分。問題は精度だけ。……もしかして銃身が曲がってるんじゃなかろうか、これ。
ふとそんな事を思った私は、両手でMMF50を持って膝をつかってぐいぐいと強引に銃身を曲げようとしてみた。
さらに、思い切って岩にMMF50を思いっきり叩きつけてみた(マテ
それらを繰り返す事数回。
改めて狙いを定めて撃ったら、真っ直ぐ飛ぶようになっていた。作戦大成功である(激しくマテ
理論としてはこうだ。曲がるのなら曲げなおせば良い。
実に単純明快な解決方法である。
どこからか「ありかよ、そんなのっ!!」とか色々突っ込みの声が聞こえてきそうな気もするけど、知った事ではない。「全ては終わりよければ全て良し」なのだ。
言い換えれば、結果オーライとも言う。
そんなこんなでMMF50の改造(?)に成功した私は、そこから狙撃による援護攻撃を開始。
それなりの戦果をあげることができたのであった。
ちなみに四足の巨大機動兵器は、とんでもない代物だった。
なんと全長百メートルものプラズマ砲を搭載しており10km先にあった市街地の数百メートルの範囲を吹き飛ばすほどの武器を持っていたのだ。
…これは色んな意味でやばいというのは、私でもわかる。
…ん? ここから10km先の市街地…? 数百メートルの範囲……?
(現在、フェイさんの脳裏ではGPS並の精度にて、位置情報が計算されております)
「!!」
間違いない。…あの四足メカの奴―――
お気に入りのケーキ屋その3吹き飛ばしやがったぁっ!!
潰すッ。あいつ絶対潰すっ!!
あ、まて。逃げるな、四足ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!
その後、すぐさま追いかけ出したフェイさんであったが、四足機動兵器に追いつけるはずはなく―――
結局逃がしてしまったのは言うまでもなかった。
だが、もしこれがEDF2の世界で、もし彼女がペイルウイングのままだったら―――
この先の四足絡みの展開は、大きく変わっていた事であろう。
To Be countinue...
☆えむ’sコメント☆
フェイさんの無茶苦茶炸裂の今回。
しかし、ここまで無茶苦茶やるのも久しぶりと言うか、なんと言うか。
でも良いんです。小説ですからw