制限時間が迫っていた。
残された時間は、わずか。それを逃せば、取り返しの付かないことになる。
全力を持って突き進む。
行く手を阻む者一つ一つと遊んでいる暇すらない。そんな時間すら残されてはいない。
持ち前の機動性を生かし、隙間を潜り抜ける。
右に左に。一瞬のミスが、全てを台無しにする可能性があるだけに、失敗は許されない。
――――抜けたっ!!
不意に目の前が開けた。
目指すべき場所は、もう目と鼻の先まで迫っていた。残りの距離はあとわずか。だが残された時間もない。
ここまでの経過で残された力は少ない。
限界ギリギリで、ここまで来たのだ。
正面の「門」がゆっくりと閉まりだした。
あれが閉まってしまえば、もはや先はない。
残された力を引き出し、最後の加速を駆ける。
閉まり行く「門」。詰まっていく距離―――。そして―――
「門」がしまった。自分の背後で。
際どいタイミングだったが、突破した。そして今までの全てが報われた瞬間でもあった。
小さな勝利を噛み締める中、一つの声が響く。
「本日は、京王線をご利用いただき、真にありがとうございます。次の駅は―――」
~おしまい~
※これは、何から何までフィクションです。作者は電車を使わないため、コレは全て創作です。
えむ’sコメント
電車の発車時間に間に合うべく、全力で走るわずかな時間を小説にしてみました。
こうやって書くと、やっぱりなにか違う物に見えてしまうから面白いですわw