FILE:02『グレイ隊員の一日』 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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ちゅどぉぉぉぉぉん




……。





 グレイ隊員の一日は、いきなり爆発する所から始まる。いや、もちろん毎日そうというわけではないのだが、高い確率で爆発する。

 理由は実にシンプルだ。彼は朝に弱い。そして目覚まし程度では起きない鋼の精神の持ち主でもあるのだ。

 いろいろな方法を試してみたが、結果は惨敗。誰かに起こしてもらうと言う確実な方法もあるが、毎日毎日頼むわけにも行かないのと、ある出来事(※)があって断念。仕方なく特製目覚ましを用意したのである。

 それがこの爆発だ。規定時間に目を覚まさなかったら自動的にHG-01Aが投下される仕組みなのである。ちなみに製作者はイーグリット隊員。もちろん、こうなることを踏まえてアーマースーツがパジャマ代わりなのは、ここだけの話だ。

「……ぐふ…。ぁー、もう朝か…」

 爆風に吹っ飛び、床に叩きつけられ、ようやく目が覚める。

 それからよろよろと立ち上がり、制服を着るだけ着れば、さっさと食堂室へ向かう。もしくは、寝坊したことに気づいて全力疾走のどちらかだが…、今回は前者のようだ。

 


 グレイ隊員は、洋食派である。とはいえ、あんまり食べる方ではない。トーストを2枚とコーヒー。その程度の軽食だ。大体来るのが遅いため、食堂で小隊仲間と会うことは少ない。他のメンツは揃って早起きなのである。

 とはいえ、交友の幅は意外にも広いのもグレイ隊員であり、適当に目に付いた知り合いのところに行ってみたりすることが多い。

 まぁ、今日は外れだったようで一人で黙々と食べる。

 だがトーストをかじりつつ、ぽけーっと外を眺めるグレイ隊員は知らなかった。テレビでやっている運勢云々の結果がトンでもないものだったことに…。




 基本的に書類整理とか苦手なグレイ隊員は、何もなければほとんど一日を訓練に費やしている。考えるより、動く。それが彼のモットーなのである。

 なんと言ってもシミュレーターの使用頻度は高い。と言うのも、重装陸戦兵として防御力は高いとは言え、移動速度などが遅い。そのため効率よく動かないと、逆にダメージを受けてしまうのである。そのため日頃から少しでも受けるダメージを減らすため、密かに特訓を重ねているのだ。

 おかげで今ではシミュレータールームの常連とまでなっており、時折新しい訓練メニューのテストをしてもらったりすることもある。

「今回もお願いしていいですか?」

「おぅ、どんと来なw」

「今回のシミュレーターは、他の隊員との仮想戦闘をするものなんですよ。別の隊員と命を賭けた模擬戦を行うことによって得るものもあると思いまして」

「なるほど」

 対人戦ではインベーダーとの戦闘に直接役に立つものは、あまり得られない。だがインベーダーとは違って多彩な攻撃を繰り出してくることから、咄嗟の状況に対応する訓練としては効果があるかもしれない。そういう考えでプログラムを組んだのだろう。

「じゃあ、今から出す仮想敵と戦闘してください」

「任しておきな…!!」

 爆発物メインの自分ならば、対人戦は強い方である。吹き飛ばしハメをすれば大抵の相手には勝てる。なんだかすごく卑怯な気もするが、「やられるまえにやる」。それが重装陸戦兵の戦い方なのだ。皆さんもわかるのではないだろうか。高難易度をクリアしようと思ったら手段を問う暇などはないと言う事実に。

 そんなわけで自信たっぷりに答えるグレイ隊員であったが…、甘かった。

「一体の誰のデータを使ったんだか。へっ、まぁ誰が来ようと―――」

 目の前に対戦相手が現れた。

「―――誰が来ようと……ぇ゛」

 その姿はグレイ隊員もよく知る人物であった。しかし、勝てない相手ではない。普通ならば。

「………(滝脂汗)」

 相手が構える。戦闘開始まで、あと数秒。しかし蛇に睨まれた蛙のごとく、グレイ隊員は動けない。同時に脳裏によぎるのは、遠い過去にあった恐怖の思い出。そして退路はない。

 相手が口を開いた。

……クモ…クモさン…クスクス………アソぼウか…!!

「いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?!」

 

 結果は敗北であった。


「な、ななななななんでっ。ハルナのデータなんだよ、しかもあの時のぉっ!!っつーか、なんでこんなデータもってやがんだ、てめぇっ!!!!」

 訓練終了後。青ざめた顔で詰めかかるグレイ隊員に、シミュレーター室のスタッフは苦笑を浮かべながら告げた。

「…あ、いや総司令部から送られてきまして(汗 試しに使ってみてくれと」

「マジかよっ?!ていうか、ハルナが知ったら後が怖ぇぞ、これ!!」

「…あ、はい。もう地獄を見ました」

「はぃ?(汗)」



 夕方。

 朝と違って、グレイ隊員は夕食の時間は来るのが早い。空いている席にすわり、適当に頼んだトルコライスなんかを食べつつ、テレビを見ているとイヅキ隊員がやってきた。

「お、隊長じゃねぇか。一緒にくわねぇか?」

「じゃあ、お供させてもらおうか」

 隣の椅子を引いて手招きすれば、イヅキ隊員はすぐにこちらへとやってきた。

 その後は食事をしつつ、他愛もない日常会話なんかを。途中、何気なくテレビのニュースを見ると、基地のすぐ傍にあるコンビニで起こった強盗事件の話が流れていた。

「…マジかよ」

「EDFの基地の近くでか…」

 自分達も利用するので、物騒な話だ……などと思いつつ耳を傾けていると、どうやら犯人は銃火器で武装した4人組のグループだったらしい。けれども、現場に居合わせたお客の手によって全員取り押さえられ、事無きを得たのだとか。

「銃火器4人相手を一人で…すげぇ」

「EDF隊員かもしれないな。アーマースーツとかあれば普通の銃は効かないし」

 それでも世の中、すごい人間もいるものだな~。などとそんな会話をかわしつつ、のんびりと夕食の時間は過ぎていくのである。

 

 夜。

 何気に実は、グレイ隊員にとって一番の楽しみな時間でもある。何もなければ自由時間に近いため、たいていそういう時は自分の武器コレクションの整備をしてみたり、なんとなく眺めてみたりするのが、ささやかな彼の楽しみだ。目標は爆発系の武器のコンプリート。だが、その道は意外と険しく、特にGランチャーUM-V2は今だ実物すら見たことがない。

 存在するのは確かなのだが、配備数がが非常に少ないらしいのだ。

 まぁ、ともかくそんな様子でジェノサイド砲の整備なんかをしていると、ドアの呼び出し音が響いた。だれか部屋に来たらしい。

「お、誰だ?」

 珍しいなー、などと思いつつドアを開けると。そこには一人の人物が立っていた。しかも女性である。

「愛しのグレイ様☆ 遊びに来ました~♪」

「んなぁっ?! て、てめぇっ?!な、なんでここにっ!?」

 女性に遊びに来てもらう。ある意味、美味しい展開な気もするが、グレイ隊員は思いっきり後じさっていた。

「お前、ここの所属じゃないだろっ!!」

「そうなんですけどね。配置換えがあって、ここの基地の所属になったんです☆ それでグレイ様と一緒になれると思ったら、もう嬉しくて嬉しくて…。いてもたってもいられなくなって―――きゃっ」

 なにやら一人で照れて、両手で顔を隠して、視線を逸らす女性。ほんと、普通に見れば一途で可愛いのだが――

「きゃっ☆ じゃねぇぇぇぇぇぇぇっ。帰れぇぇぇぇぇっ!!」

 全ての事情を知るグレイ隊員にとっては、死刑宣告にも等しい瞬間であった。

 彼女の名前はリンダ。ペイルウイング隊員である。詳しいことは前作の作戦No.37 あたりを見てもらうとわかるのだが―――「男」なのである。ある意味、女性らしい女性なのだが、でも本質は男なのである。そして、何があったかグレイ隊員一筋。

 日常面での不幸度が増した瞬間であった。




 その後、熾烈な攻防戦を経て、グレイ隊員はリンダ隊員を撃退(追い返した)。どっと疲れた様子で部屋のベッドへと倒れこんだ。

 なんだか今日も、すごく疲れた気がする。主に精神的に。何気に日常茶飯事な気もするのだが。

 気がつけば、もうこんな時間である。

「・・・・・・まぁ、いいや。寝よ――」

 ふらふらと立ち上がり寝巻き代わりのアーマースーツを着用し、そのままベッドの上にひっくり返るのであった。

 


 これがグレイ隊員の1日の大体の流れである。毎日イベント内容は変わるものの、大抵一つか二つは何かが起こるのである。

 だがそれに直面しながらも、乗り越えているからこそ。彼はいろんな意味でタフなのだ。



~おしまい~



※エリス隊員に、朝なかなか起きなかったら思いっきりやってくれ、と頼んで永眠しかけた。









~えむ’sコメント~

 日常第二段。グレイ隊員編。

 きっと彼の普通の毎日は、波乱に富んだものなのであろうと、そう思っております。

 そして、前作でのオペレーション・ブレイブサンダーの時に募集した隊員さんからゲスト出演として一人再登場させてみたり。――個人的にツボだったのです、「彼」。グレイ隊員弄れるしw(ぉぃ


 さて、次回はいよいよ女性陣。エリス隊員とハルナ隊員、どっちにしようかなぁ