日常であるちょっとしたことを、小説っぽくしてみた。
「お茶碗がっ!?」
それはいつもと何も変わらない日のこと。
その日の朝は、とてもいい天気だった。今は冬ではあるが、日が差すとそれなりポカポカ陽気で暖かい。けれども日陰だと寒い。そんな微妙かつ絶妙な、そんな天気だ。
この日もいつものように朝食の準備をしていた。
みそ汁は完成、すでにご飯の炊きあがった炊飯器が保温状態。あとはそれをお茶碗につぐだけだ。
食器棚の扉を開け、愛用の長年使ってきたお茶碗を取り出す。
失敗することは考えてもいなかった。いつもと変わらぬ動作。もはやパターン化したと言ってもおかしくはない作業だったのだ。
しかし、時には想定外の出来事と言うものが発生する。
「……あ゛」
お茶碗が手から滑り落ちた。持ち方が悪かったのか。微妙な力加減の間違いか。はたまた見えない何者かの陰謀か。
原因はわからない。
だが、一つはっきりしていることはしっかりと持っているはずだった、Myお茶碗は紛れもなく自分の手の中にはなく、重力という物理法則に倣って、落下を始めている…。
小さなミス。けれども、そのミスから生じうる結果は決して無視できるものではない。それによる損失は……あまりにも大きい。
「……っ」
まだ間に合うかもしれない。
微かな希望を胸に、落ちていくお茶碗へと手を伸ばす。でも、届かない。
伸ばした腕は、落ちていくそれを掴むこと適わず、空を掴むだけ。その間にも、Myお茶碗は静かに、けれども確実に終焉へと向かっていく。
床と言う名の終焉の地へ。
ほんの一瞬。だがその一瞬が恐ろしく長く感じる。それでも、時間が止まったわけではない。
どんなにゆっくりと時が流れようとも、止まらない限りは、その時はやってくるのだ。
「…・・・!!」
一つの音が響いた。それが何を現すかは言うまでもない。
落ちて、床にぶつかった音だ。
―――終わった。
――ごめんよ。助けることはできなかった…。
後悔の念が心を占める。お気に入りだったのだ。
とある場所にて運命の出会いを果たし、今日この日まで共に生きてきた。朝昼晩の日に三度。(食事が麺類だったりパン食だったりといった例外を除く)何度その力を借りたことか。それがあったからこそ、日本人らしく白飯を食することが出来たと言ってもいい。
それだけではない。出会いを経て、この数年間…苦楽を共にしてきたのだ。
だが、それも今…終わった…。
突然の別れに、ただ呆然とするしかない自分がそこにあった。
けれども、自分は一つ重要なことを忘れていたのだ。
それに気がついたのは、丁重に弔おうとした時のこと。
フリーマーケットで運命の出会いを果たした時価100円のお茶碗。
彼は――――
プラスチック製だったのだ。
だから今は、また苦楽を共にしている。
~完~
※あとがき
………何を書いてるんだろうボクorz
いやでも、なんか楽しかったから良しとしよう。文章ってすごいなぁw
なおこの小説は、全てフィクションです。現実とは何の関係もありません。