オリジナル小説
LostFeather/Re
第2話『出会い』
コウスケは困っていた。
理由は単純。今…目の前に白いワンピースドレスに身を包んだ金髪の女性が倒れている。山奥の古ぼけた屋敷。その屋敷の一番奥の鍵のかかった部屋の床の上で。
一応呼びかけてみたが、返事はない。眠っているのか、気絶しているのか。たぶん気を失っているのだろう。軽くつねって起きなかったから間違いない。
状況的には、さっさと介抱するなりして助けるのが当然の流れなのだろうが、コウスケはなにやら一人で頭を抱えて考え込んでいた。
元の世界で特殊部隊やってた時も、こう言う場面に出くわしたことはあった。だが、介抱などは衛生兵とか救急隊員の役割であって、アタッカーだった自分はその間に安全確保や退路確保などでドンパチするのが仕事だったのだ。
一応、応急処置やらなんやらの技能は全て身に付けているから、介抱することはできなくはないのだが……。いざ介抱しようとすると、なんか意識してしまうのである。
何か突っ込みどころがありそうな気もするが、現実にそう言う場面に出くわしたら、ほとんどの男性は似たような事になるのではなかろうか…と思う。特に恋愛経験とか皆無だと。
「救急車はあるわけないし。都合よく、医者が~とか、そんなことはないだろうし」
そんなわけでやることは決まってるのに、なかなか行動できないコウスケであった。これが怪我をしていたとか、そう言う状況だと少し展開は変わっていたかもしれないが。
元いた世界なら電話や通信一本で解決するような展開も、剣と魔法の世界ではそうはいかない。見つけた人が責任もってどうにかするのが暗黙のルールである。
「どうしようもない」
散々迷った挙句。ようやくコウスケは覚悟を決めて、その場に屈み、息があるかを確認しようと首元へと手を伸ばした。
「……ん…」
「お?」
ちょうどそこで、女が僅かに身じろぎをし、閉じていた瞼が開いた。必然的に様子を確認しようと屈みこんでいたコウスケと視線があう。
「なんだ。目が覚め――」
意識を取り戻したことに、幾らか安堵の息をついたのも束の間。
「いやっ。来ないでっ!!」
「――ごふぅっ!?」
次の瞬間、コウスケは腹のあたりに強い衝撃を感じ、身を折るようにしてあとずさった。一瞬何が起こったのかと思うが、すぐに状況を把握する。
目を覚ました女性に思いっきり殴られた叩かれたのである。グーで。しかも鳩尾。はっきり言って痛いってもんじゃあない。
「た、ただの通りすがりで、君をここに連れてきた奴らとは一切関係ないのに……」
ちょっぴり泣きたい気分になるコウスケ。なんで助けようとして、こんな痛い思いをしなくてはならないのやら。
まぁ、誰かは知らないが何者かに連れて来られたのは間違いないわけで、そんな事情の元で、ふと目を覚ませして見れば、知らない男が自分に手を伸ばしている。となれば、反抗の意味もこめて手が出るのも当然のことである。理由はどうあれ、誤解された方には迷惑な話なのだが…。
「え?」
それはともかくとして、コウスケの言葉に若い女は幾らか拍子抜けしたような表情を浮かべた。じ~っとコウスケの事を見つめ、なんだか気まずい空気が流れる。
「…………」
「…………」
「ご、ごめんなさいっ。私、てっきりあいつらの仲間かと――」
「気にすることはないさ。どーせ、そういうことだろうと思ったしさ」
もし、そうでなかったらどうしたのだろうか。それは本人のみぞ知る。
「で? こんなところで何をしてたんだ?」
一番疑問に思っていた事を尋ねる。さすがに当事者である以上、自分よりは事情なり何なりわかるだろう。
「…よくわからないの」
が、相手の返事はコウスケの予想を見事に裏切ったものだった。
「は?」
「気がついたら、ここに連れて来られてて……」
つまり本人も、事情はわかってないということ。もし知っているとしたら、連れてきた当事者しかいないのだが、近くにいるわけでもなさそうだ。
とは言え、これ以上迷っていても仕方がない。けれども、このまま放っておくほど、コウスケは冷たい人間でもない。
「とりあえず一つだけ聞くけど。ここにいたいか。それともいたくないか?」
「いたくない…。でも――」
「わかった。じゃ、ついて来てくれ。とりあえず、近くの街まで連れて行くから」
そう言ってコウスケは、持っていたアサルトライフルを直しこむと、やたら大きなライフルを取り出した。
電磁加速によって弾丸を超音速で撃ち出し、その威力は戦車装甲をも撃ちぬく。歩兵用の携行型対戦車レールガンである。連射や取り回しは悪いが、破壊力はお墨付きの代物である。
「……?」
そのままレールガンのチェックをしていたコウスケは、自分に突き刺さる視線に気がついた。何だろうと思って振り返ってみれば、その若い女がじ~~~っと目を丸くしている。
「ど、どうした?」
「そんな大きいな物。どこから出したの…?」
「……あー」
思わぬツッコミに、ちょっとばかり思考が止まる。同時に読者の方が抱いているであろう疑問の一つが明らかになる時でもある。
「えーと。空間圧縮技術と転送システムを併用した試作型の歩兵用携帯ウェポンラックから」
「……?」
「(当然の反応だよなぁ…)」
思いっきり怪訝な表情で首を傾げる相手に、がっくりとうなだれるコウスケ。読者の皆さん相手なら、蒼い狸型ロボットが持ってる便利なポケットみたいな装備と言えば一発で通じるのだが。ファンタジー世界で、空間圧縮だの転送システムだの言った所でわかるはずがない。
何か上手い説明方法はないか…と悩むコウスケ。が、お世辞にもそっちは専門外なため、思いつかない。結局散々迷った挙句に、コウスケの告げた答えはこうだった。
「…ひ、秘密だ」
「え……」
「よし、行くぞ」
「え?え?あ、ちょっと…!!」
そのままスルーしてしまう勢いで、さっさと歩き出すコウスケ。世間一般で言えば、人はこれを「逃げた」と呼ぶ。しかし問題はない。読者さんには説明できたし。
再び廊下に出たコウスケ達はレールガンを構えつつ、屋敷の玄関を目指して進む。
「そう言えば、なんて呼べばいい?」
「私? 私の名前はセレスだけど」
「セレスか。僕はアオバ コウスケって言う。まぁ、ちょっとの付き合いだろうけど、名前わからないと呼びにくいしな」
「それもそうね」
そう言ってクスリと笑みを漏らすセレス。しかし、その前方に現れた大きな影を見て、顔色が変わった。
「……っ。あれは――」
次の瞬間。キュオォォンと言う甲高い音と共に、大きな影は木っ端微塵に吹き飛んだ。
「………え…?」
あっという間の出来事に、ただただ呆然とするセレス。動く鎧もといリビングアーマーと言えば、その頑強な金属製の身体もあって熟練した冒険者でも多少手こずる、そこそこ強敵なはずなのだが。評価は人によって違えども、決して秒殺されるような雑魚ではない。
「どうした?早く行くぞ?」
「あ、う…うん」
そんなセレスの思いなどどこ吹く風。コウスケは次弾を装填し、さっさと歩き出す。
その後も何度か動く鎧(これ以降、リビングアーマーと表記)と遭遇するも、そのいずれもが1ターンキル。出会い頭の一撃で終わる。戦車装甲をも撃ちぬく対戦車レールガンである。人間の着る鎧なんか紙切れ同然である。
やがて二人は、玄関へと続く大広間へとやってきた。二階からの階段を降り、あとは正面玄関の扉まで数メートルの距離にまで近づく。
「――待て」
その声に立ち止まり振り返れば、2階から1階へと続く階段の踊り場に、今までとは違った赤一色の鎧を着込んだ男と、数体のリビングアーマーが立っていた。さらに幾つかの魔法陣のような物がコウスケ達の周りに現れ、そこからもリビングアーマーが現れる。完全包囲である。
「…待ち伏せられてたか」
そんな状況にありながら、コウスケは慌てることなく周りを見回す。そして、赤一色の鎧を着た男の方へと顔を向けた。纏う雰囲気などからしても、他とは格のが違うのがわかる。
「お前が親分か」
コウスケが問い掛ける。しかし相手はそれには答えず、逆に質問を返した。
「その女をどこに連れて行くつもりだ」
「外」
即答したコウスケの言葉に、なぜか沈黙が場を支配する。
「…で? お前は誰だ?」
「ふん、今から死ぬかもしれない奴に名乗る必要があると思うか?」
「確かに一理あるな…。…それで? セレスに何か用なのか?」
「用も何も。その女を連れて行かれると我々が困るのだよ」
「……つまり、お前がセレスをここに連れてきた張本人と言う訳か」
赤鎧の言葉に、幾らかコウスケの表情が険しくなった。そして、ビシッと相手を指差し叫ぶ。
「なんでこんなことをした!!」
「お前は関係ない部外者のはずだ。なぜそこまで過敏に反応する」
「関係ないだと? 大ありだっ!!」
コウスケは赤鎧の言葉を遮り、さらにこう言った。
「お前のせいで、僕はセレスに殴られたんだっ!!」
「…なに?」
いきなり何を…? 事情のわからない赤鎧。そしてその後ろではセレスが、唖然とした表情を浮かべている。
「しかも、鳩尾にストレート。冗談抜きできつかったんだぞっ!?」
「そ、そうか」
何かが根本的に間違っている気がするのだが、妙な気迫におされて何も突っ込めない。
挙句の果てに、コウスケはこう言い切った。
「そういうわけだから、セレスは渡さない。意趣返しだ」
「………は?」
突然跳んだ話題についていけず、思わずキョトンとした表情を浮かべる赤鎧。
しかし、すぐに頭を切り替える。理由についてはともかく、渡すつもりはないと言う事だけはハッキリしたからだ。
「…ならばその台詞後悔させてやろう」
気を取り直して、静かに告げる。渡さないのならするべきことは一つ。赤鎧は周りにいるリビングアーマーへと合図を送るべく片手を僅かにあげ、それに答えるように、リビングアーマーが一斉に身構える。
「そうか。やれるものならやってみな」
ポチッ
コウスケの言葉と共に、小さな音がその場に響いた。
と、同時に階段の基部に仕掛けられていたTNT(第1話参照)が炸裂。盛大な爆音、そして階段とその周りが崩壊する。
「のぉぉぉっ!?」
崩落に巻き込まれ、階段などの瓦礫に飲み込まれる赤鎧とリビングアーマー数体。命令が下る前に爆破されたので、周囲の連中は身構えたままだ。
「怪我はないよな。まぁ、安全距離だから大丈夫とは思うけど」
「……う、うん…」
爆発の余韻で埃などが落ちてくる中、セレスはちらりと元階段であった残骸へと視線を向けた。明らかに敵で、しかも自分を連れ去った奴の仲間だろうとは思うだが…。どうしてだろう。ちょっとばかり同情したくなるのは。
「よし、それじゃあさっさと行くか」
「待てぇぇぇぇぇぇ!!」
さっさと外に出ようとするコウスケだったが、すぐ後ろから聞こえてきた怒りの声によって制止させられた。
怪訝な表情でに振り返ってみれば、瓦礫を押しのけて現れる赤鎧。
「ちっ、無事だったか」
「姑息な真似をーっ!!」
「トラップにかかるお前が悪いんじゃないか」
「んだとぉっ!?」
血気盛んに噛み付いてくる赤鎧。どうやら熱しやすい性格らしい。もしかするとこちらが素の性格なのかもしれない。だが、すぐに大きく深呼吸をして落ち着きを取り戻した。どうやら自分が、まだ優位に立っている事実に気がついたらしい。
それもそのはず。コウスケとセレスは、未だに爆発に巻き込まれなかった待機中のリビングアーマーに包囲されているのだ。
「ど、どうするの…?」
周囲を見回しつつセレスが尋ねる。コウスケが持っている武器ならリビングアーマーなど敵ではないだろう。ただここまで見てきた限り、連射できる代物でもなさそうだ。数で攻められたら押し切られる。
不安げなセレスの表情に気がつき、コウスケは赤鎧の方を見たままに言った。
「大丈夫。僕に考えがある」
「…考え?」
「ここから脱出する良い方法だ」
ニヤリと意味深な不敵な笑みを浮かべる。一方、赤鎧もコウスケの言葉は聞こえていたが、なおも優位を確信したままの表情で告げる。
「ほぉ、この状況からだと? それは、ぜひ見てみたいものだな」
「そう急かすことないさ。すぐにわかる」
そういいつつ対戦車レールガンを直しこむコウスケ。
「ふん、ただ観念しただけか。面白くもない。…まぁ、いい。さっさと片付け――」
「―――おっと動くなよ」
自分から武器を収めたのをみて、すぐにリビングアーマーをけしかけようとする赤鎧だったが、コウスケの次の一言で中断を余儀なくされることになる。
「それ以上近づけば、この爆弾で自爆する。もちろん後ろの人も一緒に」
そう言って、コウスケは手にしていた物を掲げた。
「え?」
「は?」
いきなりの宣言に、セレスも赤鎧も動きが止まった。あまりにも突然の宣言なため、言っている意味を頭がまだ理解できていないのである。
と言う訳で、落ち着いて考えてみる事にする。
まず、コウスケが手に持っているのは爆弾の類らしい。そして、下手に近づけば、後ろの人も一緒に自爆すると言う。
問題1:青年コウスケの後ろにいるのは誰なのかを答えよ。
答え:セレス。
「「……………」」
実に簡単な問題である。そのくらい、小さな子供でわかると言う物だ。そして、納得すると同時に――――
「な、なにぃ!?」
「えぇぇぇぇぇっ!?」
―――二人とも驚いた。そりゃあ、驚くだろう。まともな思考の持ち主なら、ごくごく自然な反応であるのだが……。コウスケの反応は違っていた。驚く二人を見て、さも不思議そうに首を傾げて尋ねたのである。
「驚く事か?」
「正気か貴様!?それでは意味ないだろうがっ!!」
もっともな疑問である。セレスを助けようとしているコウスケが、セレスごとを巻き込んで自爆すると言い出しているのだから。
だが慌てる周囲を他所に、自爆すると言い出した張本人は至って真面目に答える。
「いや、そうなんだけどな。見栄を張ってみたが、やっぱり良い方法が思い浮かばなくて。でも、この状況じゃ助けられそうにない。だけどイヤなんだろう? こいつらと一緒に行くのは」
そう言って、赤鎧を指差すコウスケ。
「……そ、そうだけど」
それは事実なので、とりあえず頷くセレス。
「となれば、もう自爆でもするしかないだろ。下手につかまって大変な思いするよりはマシだ。大丈夫、一瞬だ」
「「…………」」
なんと言うか、二人とも開いた口が塞がらなかった。間違ってはいない。いちおう筋は通っている。筋は通っているのだが―――
とりあえず、二人とも次の言葉が出ずに呆然としていると、再び不敵な笑みを浮かべて告げる。
「まぁ、あれだ。お前達が近づかなければ、そんな真似しなくていいのだけどな。違うか?」
「…ぐっ……」
確かに相手の言うとおりである。近づかなければ、相手も自爆はしない。仮にも、生きてつれてこなければいけないのだ。殺してしまっては、元も子もない。
「わかった。近づかなければいいのだろう。お前達も手を出すな」
この状況では仕方がない。とりあえず要求を呑む赤鎧。
「…で?次はどうしたらいいんだ?」
「道を開けてくれと嬉しいな」
「…くっ。言ってくれる」
毒づきながらも渋々と言った様子で命令を出し、包囲の一部を解く。とはいえ、わざと逃がせば、いずれは隙が出来るはず。結局は都合の良い時間稼ぎといったところ。つまり勝負はこちらに分がある。そんな損得勘定の上での判断だ。
「じゃ行くか」
「え? …う、うん…」
そんな相手の思惑に気づいているのか気づいていないのか。コウスケとセレスの二人は、赤鎧の動向に注意しながら、ゆっくりと後ずさり始めた。下手に隙を見せれば、そこを突かれることを向こうも知っているのだ。
じりじりと後じさる。そして玄関の戸口に近づき、爆弾を持ったままの手でドアノブを開けようとしたところで、
「…あ、手が滑った」
コウスケの間の抜けた声が聞こえた。
「…へ?」
「……あ?」
ふと注意がコウスケへと向くと、手に持っていたはずの爆弾が地面へと落下していたりする。
「んなぁっ!?」
「―――――っ!!」
赤鎧の絶叫に近い叫びと、セレスの声にならない悲鳴が響く。
その間にも、しっかりとコウスケの足元に落ちていく爆弾。なぜか知らないが、世界がゆっくりと動いて見える。もちろん、止まったわけではないので、それでもちゃんと爆弾は着実に地面へと迫っている。
そして、その爆弾が地面に触ると同時に―――――
カッ!!ドォン!!
凄まじい閃光と強烈な爆音が鳴り響いた。すぐに迫り来る炎と爆風から身を守るべく、その場で身構える赤鎧。
直後。強烈な爆風が――――
「……くぅっ!?」
燃え盛る炎の熱気が―――
「…………」
来なかった。
「………?」
なんとなく目を開けて見る。涼しげな夜の空気。何の変化もない大広間。そして開け放たれた扉。顔を上げてみると、セレスを抱き抱えて走り去っていくコウスケの後ろ姿が離れた所に見えた。つまり、まんまと騙されたというわけだ。
スタングレネードと普通のグレネードの違いがわからない、この世界の住人だから仕方がないと言えば仕方がないのだが。
「………」
とりあえず、騙された相手がとる反応は大体決まっている。まして熱くなりやすい奴なら特に。
「…お、おのれっ!!本当に姑息な真似をしてくれるッ!!逃がさんッ!!」
直後、赤鎧の怒りに溢れた叫びが、夜の森に響いた。そして、すぐに後を追うべく駆け出して――――
…ドォォォォォン……
「…?」
「ふっ…やはり踏んだな」
後ろから遅れて聞こえてきた小さな爆音に、コウスケは口元にニヤリと笑みを浮かべつつ呟いた。
「…踏んだって何を?」
さすがにお姫様抱っこされているの恥ずかしいらしく、顔を俯かせたままではあるが、どうしても気になったセレスが尋ねる。
「ん?踏んだら爆発する爆弾」
踏んだら爆発する爆弾。人それを地雷と呼ぶ。スタングレネードによって視界を封じ、脱出する直前。コウスケは自分の足元に対人地雷を一個置いてきたのである。出口に真っ直ぐ走れば確実に踏むルートに。
無造作なので注意してれば気づいたかもしれないが、相手の性格からして間違いなく引っかかると確信しての行動である。結果は大成功。さすがに、すぐには追って来れないだろう。結局のところ、最初から最後までコウスケの作戦だったわけである。駆け引きと言うのは自分のペースに持ち込んでしまえば勝ちなのだ。
それはさておいて。そのまま幾らかの距離を走ったところで、おもむろにセレスが口を開いた。
「ね、ねぇ。もう歩けるから、降ろしてくれない?」
「え? …あ、あぁ。すまん」
言われて初めて意識したのか、慌てて立ち止まってセレスを降ろすコウスケ。念のために、後ろを確認してみるが他の追っ手は来ていない様子だった。無理もない。
「とりあえず、しばらくは大丈夫か」
まずは安全とわかりつつも、警戒を続けるコウスケ。そんな彼の姿をセレスは黙って見ていたが、やがて恐る恐ると言った様子で口を開く。
「…えっと。…ありがとう」
「あぁ、気にするな。事のついでだ。とりあえず街までは、もう少しあるから。それまで我慢してくれな」
そう言って、アサルトライフルを取り出すコウスケ。そんな彼をセレスは、ただじっと見ていた。
~つづく?~
※プチ独り言
致命的な誤字に気がつき、こっそり修正。気づかなったら良し。
気づいたぜ・・・って人はスルーで(ぇ