実は、以前の記事で「読んでみたい」と言うのを見てから、こっそり書いていたわけですが(ぉ
ためしの第0話が書けたので、反応見るべくこっそりアップしてみます。
内容的には、主人公がどういう奴かがわかってもらえれば光栄です。
では、どうぞ~。
オリジナル小説
LostFeather/Re
第0話『プロローグ』~
夜の闇が赤く染まった。突如静寂を撃ち砕く爆発音。
すでに時刻は朝方に近いものの、今だ空は暗い。夜が主な活動時間である者からすれば、そろそろ休息をとろうとする頃合。昼が主な活動時間であるなら、言うまでもなく眠りについている時刻。襲撃される側にとっては一番うれしくない時間だ。
「な、なにごとだっ!?」
突然の出来事に、一気に現実へと引き戻されて飛び起きる男。彼は、この辺一帯を縄張りとする取りまとめる盗賊団の頭である。
「しゅ、襲撃ですっ!!正門が破られましたぁっ」
「な、なにぃっ!?あの門が一撃でか!?」
そしてタイミングよく飛び込んできた子分の言葉に、度肝を抜かされる。
この場所は、古い何かの砦を利用しており、特に正門は恐ろしく頑丈。それこそ大砲の類でもなければ破れない強固なものだ。
「くそぅ。 おい、子分どもを叩き起こせっ!!迎え撃つぞッ!!」
「合点承知―っ!!」
頭領の言葉に、すぐに飛びだしていく子分。
突然の襲撃で不意は突かれたが、今根城としているこの場所は、難攻不落の場所。険しい断崖と川に囲まれ、ここに来るには一本の吊り橋を使うしかない。
そして、なによりも切り札もある。
今までもこう言うことは――いや、さすがに正門を吹き飛ばされたことはなかったが――あった。だが、その度に返り討ちにしている。
「くくくく…。何処のどいつか知らんが。俺様の盗賊団に手を出して無事で済むと思うなよ…?」
盗賊団の頭領である男は、不敵な笑みを浮かべて思う。いつもと何も変わらない。そう、いつものようにあしらってやればいいと。
だが、今夜の相手は少しばかり―――いや、かなりとんでもない相手であった。
「よし、突破口は開いた」
吊り橋をわたる一歩手前。その場所に半ば仁王立ちしているかのように一人の男が立っていた。 特殊部隊用の戦闘服の上からさらにポケットの付いたダウンベストを着込み、頭にはバンダナを巻いた20代くらいの若い男で、満足に頷き、手にしていた武器――対戦車ロケットランチャー――を引っ込める。
そう、あの分厚い装甲を持つ戦車をも仕留める対戦車ロケットランチャーである。とりあえず、その威力は大砲なんぞと比べるまでもない代物。それを開幕と同時に、正門めがけてぶっ放したのである。
「風向きもよし。天気もよし。わざわざ今日まで待った甲斐があったな」
動きを見せ始めた砦側を眺めつつ、今度はショットガンを抜いた。実弾ではなく硬質ゴム弾を使用した、当たると下手すりゃ意識と自分が吹き飛んですごく痛い思いはするが死ぬ事はない、そんな命に優しい鎮圧戦仕様である。
「さて、それじゃあ始めるとするか」
ポンプ部分をスライドし、男は正面からの、のんびりと吊り橋を渡り始めた。
彼の名前はアオバ コウスケ。元特殊部隊のフォワードだが、色々あっては今は傭兵という事にしている。近接戦から偵察、狙撃、爆破まで一通りはこなせる万能選手で、ロケットランチャーやショットガンなどといった各種火器の扱いも得意。今はまさに傭兵の仕事の真っ最中だ。
しかし、物語を本格的に始める前に言っておくべきことがある。
それは、この世界が――現代や近未来のような世界観ではなく、剣と魔法の世界。俗に言うファンタジーの世界であるということだ。間違っても銃弾が飛び交うような世界ではない。まして、対戦車ロケットランチャーなんか存在すらしないのが普通だ。
町や村で住民がのんびりと暮らし、冒険者が己の名を上げようとドラゴンに挑み、魔法使いが炎や雷をいきなり放つ。そんな世界である。
そもそもなんで、こんな奴がこんな場所にいるのだという疑問も浮かぶだろうが、それについては後で説明するとして、まずはファンタジー世界におけるイレギュラーな彼の戦い振りを、しばしご覧頂くとしよう。
「貴様。一人で来たのか?」
正門を抜けると、そこには大勢の盗賊がいた。人数にして約30名程度だろうか。広場となったその場所に、それぞれ手斧やショートソード、ダガーなどを持って待ち構えている。さらに、弓矢を構えている連中もちらほらと見える。
「あぁ、そうだ。近くの村で頼まれて、盗賊退治に来た」
「――魔導士の類か?」
誰かの言葉に、その場にいた全員に戦慄が走る。熟練の魔導士ならば、単独でこのくらいの数を制する事などわけがないのだ。
しかし、彼らの予想に反して、コウスケは答える。
「あー、いや。魔法は全然使えないんだ」
「………」
あっさりと認めたことに、誰もが言葉を失う。
「でも、僕は弱くはないぞ? とりあえず、お前達みたいな雑魚全員を相手に出来るくらいにはな」
そう言って不敵な笑みを浮かべ、この状況で挑発。いくら重火器があるとしても少しばかり無茶な行為である。
「はっ、その言葉。すぐに後悔させてやるっ」
瞬く間に臨戦体勢に入る盗賊。たった一人だが、誰もが油断なく身構えている。この世界では一人でも数十人に匹敵する強さを持つ者もいるのだ。恐らく、そのことがよくわかっているのだろう。それでも勝利を確信している。弓矢による援護に、これだけの数なのだ。
「やれるものなら、やってみるんだな」
ふっと軽く鼻で笑い、血気盛んな盗賊達を一望する。あたりまえのことだが、誰もが自分に注目している。当然だ。敵から目を離すなど、戦いの場では死亡フラグに等しいのだから。
「じゃあ、始めようか。どっからでも―――」
そう言いながら、懐から何かを取り出すコウスケ。
「――かかってこいッ!!」
そして、持っていたそれを敵の方へと放り投げる。その間も一斉に襲いかかる盗賊。だが―――
ボシュッ…。そんな音と共に、コウスケの投げたものから白い煙が勢いよく噴出し、その場を瞬く間に包み込んだ。
「な、なんだ? っ。げ、げほっげほっ」
「目、目が…っ。ごほごほごほっ!!」
「……くっ、げほごほがふっ!!」
途端に混乱のドツボに叩きこまれる盗賊団。暴徒鎮圧用の催涙手榴弾。それの威力は絶大であった。まして、屋外とは言え、砦の中庭。周囲は壁に囲まれているし、そんなに広いわけでもない。充分効果はある。
「く、くそっ……げほげほ。こ、姑息な……。…?」
目と鼻と喉を襲う刺激で、涙やらくしゃみやらが止まらず、とてもじゃないが動けない状態の中、毒づく盗賊だったが、ふと正面に一つの人影が現れた事に気がつく。
顔を上げてみれば、そこはガスマスクを被ったコウスケがショットガン片手に立っていた。
「悪いな、仕事なんだよ」
そんな声と共に銃声が一発。リビングアーマ―の重心の乗った右フック並の一撃(予想)を受け、盗賊は一発KO。他の連中も、ほぼ無抵抗なままにやられていく。
そして、催涙ガスの煙幕が完全になくなった時には、そこにいたほぼ全員が戦闘不能へと陥っていた。見事すぎる鎮圧である。
「…ふ。ふはははははっ」
ほぼ全員を片付けたころ、突然新たな笑い声が響いた。振り返ってみれば、一際目立つ男が一人。
「俺様の部下をこうもあっさりと。どうだ?お前、俺様の――ぐふぁっ!?」
そこでショットガンの火が吹いた。硬質ゴム弾をもろにくらって、後ろにのけぞる頭領。だが、倒れるまでには至らない。
「ちっ。距離が開いてるから、やぱりショットガンじゃ駄目だったか…」
仕留め損ねて小さく舌打ちをするコウスケ。
「き、貴様っ。人が話している途中だぞっ!?」
「いやだって隙だらけだったし…。僕の方はお前から聞く話もない」
「……う」
至って正論である。
「えぇい。それならとりあえず話くらい最後まで聞けっ」
「ぇー」
「えーじゃないっ」
「仕方がないなぁ。ほら、聞いてやるから、とっとと言え」
「……くっ」
思いっきり、やる気なさげなコメントに、青筋すら浮かぶ盗賊の頭領。
だがなんとか気を取り直せば、改めて話し始めた。
「俺様の部下をこうもあっさり全滅させるとはな。どうだ?お前、俺様の手下にならないか?」
「断る」
即答だった。
「それじゃあ報酬がもらえないし、こっちだって生活がかかっているんだ」
「俺様の財宝を譲ってやっても良い」
「それでも断る。むしろ、財宝もらって、討伐した報酬も貰った方がお得だ」
「んなぁっ!?二重取りをしようなんて、なんて奴だっ!!」
「いいじゃないか別に…」
そう言いながら、ショットガンの代わりにアサルトライフルを取り出す。しかもグレネードランチャー付である。
ちなみに余談だが、このアサルトライフルのデザインは、もっと近代的でカッコイイのをイメージしてもらえると光栄である。FN F2000とか言うのが理想に近い。あしからず。
「まぁ、いい。こうなれば俺様の切り札を見せてやる!!来いっ!!」
頭領はそう叫び、すぐ横にあったレバーをおろした。すると中庭につながる鉄格子がゆっくりと開き始める。
やがて、数メートルはある巨大な石の巨人があらわれた。ストーンゴーレムと呼ばれる物だ。
「幾ら貴様といえども、こいつには―――」
そこでいきなりゴーレムが爆発した。何の脈絡もなく。しかも爆砕。
「……はぃ? な、なぜっ!?」
「実はこっそり、昨日の夜に忍び込んでな。爆薬を仕掛けといたんだ」
「なにぃぃぃぃ!? だ、だったらなぜ今になって爆破する!?」
「その方が、精神ダメージ大きいだろ?」
ニコリと笑うコウスケ。だが、この時――盗賊の頭領には悪魔の笑みに見えていたんだとか。
しかしコウスケの言うとおり、精神的なダメージは大きかった。最後の切り札が目の前でつかえなくなったのだ。
「…ひでぇ…なんて野郎だ。…下手すりゃ俺様たちより、悪どいぞ、お前―――」
頭領の非難の声はとどかなった。アサルトライフルの銃声が響き、頭領の周りで弾が弾けまくったのだ。
「ひいぃっ!?」
「ん?なんか言ったか?」
ガチャリとアサルトライフルの銃口を向ける。
「イエ、ナンデモゴザイマセン」
「それならいいんだ。さて、二度と盗賊しないって言うのなら、これで終わりにするけど、どうする?」
最終通告が下る。けれども、頭領の返事はもう決まっていた。もうコレ以上―――嫌だっ!!
この日。世界から一つの盗賊団が姿を消した。
その後、村に戻ったコウスケは、その旨を伝え、仕事の報酬をGET。もちろん戻る際に幾らかお宝を頂いて来たのは言うまでもない。
「さ~て、これからどうするかな~」
テント道具やら色々入ったバックパックを肩に背負いつつ、空を見上げる。行く宛てなどあるわけでもない。今はただ、気の向くままに傭兵の仕事をしながら放浪しているだけだ。
本来ならば、この世界――この時代かもしれないが――の住人ではない。それこそ宇宙船だとかが飛んでいるような、そんな世界に生きていたのだ。
しかし、とある作戦時に事故は起きた。とある施設の奪還作戦時、ふとしたことから試作型ワープ装置が暴走を開始。それによる被害を最小限に留めようと、最後まで残って―――そして今に至る。
当初…いや、今でも慣れないことは多いが、驚きの連続であった。
それでも今はなんとかこうして生きていけている。だが、この先どうするかは見当もつかない。元の世界に戻れるのなら戻りたい気もするが、方法があるとも思えない。
じゃあ、どうするか。普通なら途方に暮れたりしそうなものだが、コウスケは違っていた。
帰れないなら、こっちの世界で生きればいい。一応こうして生きているわけだし、第二の人生が始まったとでも思えばいいさ。そんな感じであっさりと割り切ったのである。
装備に関しても割り切っている。せっかく手元にあるんだし。だったら使わないと損じゃないか!!と言った具合だ。
「ま、なるようになるさ」
悩んだって仕方がないと、小さく肩を竦めて歩き出す。目的地はない。ただ道に沿って、のんびりと。
この先、何が待ち受けているか。何が起こるのか。それはその時になればわかるさと…。
そして、彼は一つの出会いを果たすのである。全ての始まりとなる、重要な出会いを。
>>第1話につづく?