作戦No.51【反撃の狼煙】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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―2026年6月12日 01:15―
―アジア大陸モンゴル高原 上空5000m地点―
「マジかよ……!?」
「……さすがにびっくり」
「びっくりとか、そう言う以前の問題だな…」
 大気圏再突入を果たし、なおも降下を続けるシャトルの小さな窓から眼下を見たイヅキ小隊の面々は、そのあまりの凄まじさに言葉を失った。
 眼下には今まで見たこともない数のインセクトヒルの姿ががあった。さらに所々にはマザーシップと思しき姿も見られる。その密集度合いは半端な物ではない。例えるならば通常の作戦エリアの広さの中に20個近いインセクトヒルはあるだろうか。そのくらいの間隔で乱立したインセクトヒルが、まるで城壁であるかのように超巨大母艦を囲んでいるのだ。
 そして―――母艦自体も尋常ではない。山がそびえている。そんな表現がぴったりくる巨大な風貌をそこに見せていたのだ。縦にも横にも巨大なその姿。しかし、それを破壊――もしくは機能停止に追い込むことが、今回の作戦。
「「「「…………」」」」
 その敵の規模と母艦の威容は、気を引き示させるには充分すぎるものだった。
「そろそろ降下の準備を。降下後は各自の判断で移動。合流後、敵中枢部に突入するぞ」
 装備を確認しつつ、イヅキ隊員が全員に告げた。その言葉には、いつも以上に緊張感が漂っている。
「……了解。でも、この弾幕の中で飛び込んだら無謀」
 そう言いつつハルナ隊員が窓の外へと視線を向けた。すでに射程距離内らしく、窓の外は無数のレーザーが下から空へと走っており、シャトル自体もひっきりなしに振動が襲っている。それでも撃墜されないのは、シャトル底部に張られた鏡面装甲のおかげだろう。
 だが、もし外に出れば―――。集中砲火は避けられない。特に落ちるだけしかない陸戦兵は良い的だ。
「それは大丈夫。今回の作戦はEDFの総力をつぎ込んだ作戦だからな。あと少しすれば、強力な援護攻撃によって母艦の砲台の何割かを沈黙させることになってるらしい」
「……援護攻撃…ですか?」
 エリス隊員は不思議そうに小首を傾げた。
 外周部から母艦までの距離は、パッと見ただけでも5km分くらいはある。そんな距離を届く武器と言えば、長距離ミサイルだとかの類だろうが、それでは迎撃されるのがオチだ。
 ジェノサイド砲という手段もあるだろうが、あれの爆破範囲では母艦に対してはスズメの目に涙程度。それだけにここまで巨大な母艦の砲台を一気に攻撃するのは困難なはずだ。
 だが、その答えはすぐに明らかになった。



―2026年6月12日 同時刻―
―モンゴル高原 作戦司令部―
「シャトルの全降下を確認!!総司令部より通達。作戦をフェイズ2に移行するとのことです」
「了解。全隊へ通達。これより作戦はフェイズ2へ移行する。各方面のG装備及びA装備の部隊の主装備使用を許可する!!」


―2026年6月12日 同時刻―
―日本 臨時総司令本部―

 同じ時刻。臨時で新たに立ち上げられた臨時総司令本部の司令室に、エム総司令他、数名のオペレーターの姿があった。リアルタイムに遠い地での戦闘の様子が流れてくる中、着々と準備が進められていた。
「システム・オールグリーン。照準固定。射線確保。最終リミッターを解除」
「ジェネレーター・フルドライブ継続。チャージ率180…190……」
 モニターには人工衛星らしきもののCGと現在位置が表示されていた。直径25m口径サイズの超大型ジェノサイド砲を搭載した衛星で、EDFが現在所持する最強の切り札である。
「………前に撃ったのを別にしたら、これが最初で最後の一撃ってことになるのか…」
「そうなりますね。耐久出力値を上回る一撃を叩き込むわけですから」
「……撃てば反動に耐えられず、本体は自壊確定。その代わり、威力はお墨付き……っと。これで破壊できれば、楽なんだがな」
「『彼ら』からの情報によれば、砲台周りはともかく、本体にダメージはほとんど通らないだろうとのこと。だから、弱点を突く戦法しかなかったのでしょう?」
「そうなんだけね。言ってみただけだよ。まぁ…衛星一個の犠牲で地球が救えるなら安いものだろう」
「そうですね」
 ふとモニターを見上げると、発射準備が完了したことを知らせるシグナルが点灯していた。それを確認後、懐から一つの鍵を取り出す。余談だが、キーホルダーはダロガたんのミニ人形だったりする。
「最終安全装置解除」

「総司令。……時間です」
「わかってる」

 エム総司令は頷くと、その鍵を専用の装置に差込しこんだ。同時にモニターに「LAST SHOOT」の文字が浮かぶ。

 そのまま深呼吸を一つ。そして、鍵を持つ手に力を込め―-―


―2026年6月12日 01:16―
―アジア大陸モンゴル高原 上空4500m地点―

「これよりフェイズ2が発動する。全員衝撃に備えよ」
 シャトル内にアナウンスが響き、全員がそれに備える。その直後、窓の外を何かがよぎった。
 そして、その直後。窓の外が白く染まり、送れて耳をつんざくような轟音と、これまでにない衝撃がシャトルを襲う。
「な、なんだぁっ!?」
「グレイさん、下……すごいことなってます」
 エリス隊員の言葉に下を覗き込むと、そこには巨大なキノコ雲が出来ていた。それだけではない。外周部のインセクトヒルやあちこちで、大規模な爆発が見えている。
 下のキノコ雲はともかくとして、外周部で起きた爆発については、グレイ隊員にはすぐにわかった。

「……総力をあげて……か」
 同じく窓から下を見ていたイヅキ隊員が乾いた笑いを漏らす。今、眼下は爆発の嵐が吹き荒れている。
―――EDFの所持する最高火力の武器。ジェノサイド砲とアルマゲドン・クラスターによる一斉攻撃。
 恐らく投入された数は2桁3桁のレベルではないだろう。
 なぜ、そんなに大量にあるのなら最初から使わんのだ…。という声もありそうだが、仮にも広域破壊兵器の類である。そんなにポンポン撃ちまくっていいものではない。
 通常は、厳重に保管されている程なのだ。一部、妙なルートで流出した物もあるだろうが、それは全体の数からすればわずかだし、入手した人も良識があるらしく、滅多なことでは使わないのが普通。
 しかし今回ばかりは話は別。文字通りの「切り札」を全て投入してでも、今回の作戦は成功させなければいけないのである。
「突入部隊は全員降下を開始せよ!!」
 新たなアナウンスが流れ、シャトルの後部ハッチがゆっくりと開く。
「さぁ、そろそろ出番だな。―――絶対に作戦を成功させるぞ」
「はいっ!!当たって砕ける勢いでがんばります!!」
「いや、砕けたらヤバイんじゃね?」
「……それだと先行き不安」
「えーと……。じゃあ当たって砕く勢いで?」
 グレイ隊員とハルナ隊員から突っ込まれて、おろおろしつつ言い直すエリス隊員。

「……それなら安心」

「っつーか、それで安心できるのかよっ!!」

「まぁ、エリスさんなら本当にやりそうだしな」

「……むぅ」

 大切な作戦だと言うのに、どこか緊張感の欠けたやりとり。いつもと変わらない。よくある展開。

 けれども、なぜか肩の力が軽くなったような気がした。

「さて、漫才はそのくらいにして、そろそろ行こうか」
「じゃ、一番乗りで―――高っ!?」
「…さっさと行く」
「へ?…う、うおぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(フェードアウト)」
「じゃ、行く」
 あまりの高さにびびったグレイ隊員を後ろから突き落とし、そのまま何食わぬ顔で飛び降りるハルナ隊員。
「次は私の番ですね~」
 愛用のグローブと、今回の特別に持ってきた物を肩に担ぎハッチの方へと歩いていくエリス隊員。そこでふと立ち止まると、僅かにイヅキ隊員の方へと振り返り、そこから外へと踏み出す。
 残るはイヅキ隊員だけだ。
 個性豊かな小隊の隊長になって、はや1年。色々な事があった。たぶん、これから先も色々な事があるだろう。だが、先に進むためには、今を乗り越えなければならない。

「……よしっ」
 その場で力強く…一人頷き、イヅキ隊員もまた、空へと飛び出した。



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□えむ’sコメント□

 インベーダーとの最終決戦第2弾!!

 なぜか予定と変わってしまったけど、まぁいいさ(ぉぃ

 なお予告すると、次回の要塞外部での戦闘は大したことないです。だって砲台ほとんど壊れたし。

 その分、要塞内部~ラストに重点を置く予定です。


 次回(たぶん)最終回

 何処まで読者さん達の期待に添えるものを書けるか怪しいですが、あと少しお付き合いください。



 隠しページわかんねぇよ!!って人のため、シークレット入口ネタバレ。

でも、ここからは飛べませんよ?

 ☆ えむ’sコメント ☆

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