―2026年3月15日 12:34―
―東京 EDF日本司令部―
それは突然のことだった。いや、前大戦でもあったことなので、予想の範疇ではあった。だが、それでも予想外の事態と言うのは発生する。
そして、それは起こった―――。
「…な、なんだぁっ?」
「………警報っぽい。でも、これは――――」
突然、EDF日本司令部の基地内にて、インベーダー出現を知らせる警報が鳴り響き出した。同時に基地施設全体に、一つの通信が鳴り響く。
「緊急事態発生!!緊急事態発生!!衛星軌道上からディロイの降下を確認。降下予想地点は、この基地と思われる。戦闘可能な隊員は、全員出撃せよ!!繰り返す―――」
「んなぁにぃっ!??」
「………近年稀に見る電撃作戦。…見直した」
「そんなこと言ってる場合かぁっ!!!いくぞっ!!」
相変わらずマイペースなハルナ隊員と、まともな反応を示すグレイ隊員の二人は、すぐさま食堂から武器庫へと向かうのであった……。
―2026年3月15日 12:40―
―東京 EDF日本司令部 外―
基地の外には多数の隊員が配置されていた。そして、その中には言うまでもなく、我らイヅキ小隊の面子も来ている。
「……到達予定まで、あと2分―――」
「ディロイか……あいつ苦手なんだよな。フラフラ動いて当てにくいからよ…」
ゴリアス2Rx2とAS-22Dx2を持ったグレイ隊員が嫌そうな顔で呟く。その言葉に誰もが同意した。あのフラフラ度は実に面倒なのである。
「ディロイ…。あのディロイさんですか……。ちょっぴり楽しみです♪」
その横で、いつものように朗らかな雰囲気で告げるエリス隊員。一体何が楽しみなんだ…あんたは。とハルナ隊員を除く誰もが思ったが、それを口にする者は、そこにはいなかった。
「……ハード程度のディロイはザコ。問題ない」
レイピアGスラスト2を片手に、ポツリと呟くハルナ隊員。その言葉に、陸戦兵の誰もが思った。そりゃーペイルウイングにとってはそうだろうよ、けっ――と。
「レーダーに反応!!来ます…!!」
オペレーターの声が響き、その場に緊迫した空気が走る。同時に携帯用レーダーへと視線を落としたイヅキ隊員は、そこで固まった。
「………うわぁ」
思わずそんな声が漏れる。そこには幾つもの反応があった。それはいつものことである。けれども落ちてくる数が20を越えているのは、どういうことだろうか。
ディロイが20機まとめて落ちてくるのである。
これまでずーっと出て来なかったのは何でだろうと思っていたが、どうやら今日この日のために温存していたらしい。何とも良い迷惑である。
しかし、ディロイの知ったことではない。
「……これだけの数だとヤバイかもしれないな…」
イヅキ隊員は一人考えた。ハード程度なら勝てない相手ではない。ただ……、他の陸戦兵達にとっては、少々きついかもしれない。防衛軍2でも、多くても最大で5機前後の数しから出て来ないのだ。20機は多すぎる。
「イヅキ小隊は散開して、それぞれ他の小隊を援護すること。あと……グレイはアレックの所にいってくれ。―――もしかしたら、切り札兵器とかあるかもしれないから、とって来てくれ」
「了解っ」
「わかりましたっ」
「……ラジャ」
イヅキ隊員の指示に、それぞれが別々の方向へと走り出す。そして、イヅキ隊員もまた手にしたスパローショットM3をチェックして空を見上げると、たくさんの火球が落ちてくるところであった。
ディロイ降下後、あたりはすぐに乱戦へと突入した。照射レーザーやプラズマ砲撃に翻弄されつつも、善戦するEDF隊員の方々。
ただ、この基地にはペイルウイングがほとんど配属されていないため、それでも苦戦は必死であった。そんな中、数少ないペイルウイングであるハルナ隊員は、見事な機動を見せつつ接近し、レイピアGスラストで一機、また一機と撃墜していた。さすがはハードのディロイは雑魚と公言しただけのことはある。
しかし、それでも数が多すぎるため、こちらの被害も増えていた。
「……うわぁぁっ!?」
そして、ここにもプラズマ砲撃により吹っ飛ばされた隊員がいた。アーマースーツのおかげでダメージで済んだが、いざ起き上がろうとした所で気がつく。
傍にいたディロイが足を振り上げていたのだ。ディロイ必殺の3連踏みつけ攻撃だ。
「く、くそぅっ!!」
なんとか起き上がって駆け出すが、同時に無情にもその足が突き刺す勢いで伸びてきた。間にあわないっ?!残りHPから見て、戦闘不能は間違いないと覚悟したEDF隊員の一人であったが…。
「………?」
いつまでたっても、何も起きなかった。恐る恐る目をあけて見ると――――
「あ、大丈夫ですか?」
そこにはエリス隊員がいた。しかも、ディロイの足を受け止めていらっしゃる。まぁ、踏みつけようとしたソラスの重さに耐える彼女だから、このくらい大したことでもないのだろうが。
「は、はい……(汗)」
それでも間近で見せ付けられると、やはりこのインパクトは壮絶である。
しかし、それでは終わらなかった。その数秒後。さらにとんでもない、恐ろしい光景を彼は目の当たりにする事になる。
「よいしょ。危ないから伏せていてくださいね。……えぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」
エリス隊員はにっこりと微笑むと、そのまま大きく身体を捻った。
皆さんは、ジャイアントスイングと言う技をご存知だろうか? そう、足を掴んでグルグル振り回してぶん投げる技である。
エリス隊員は、今……それをディロイにやっていた。
とは言え、あの足の長さである。近くにいた数機のディロイも巻き込まれて薙ぎ倒されていく。エリス隊員が楽しみにしていたのは、これだったようだ。……全くもって出鱈目な方である。
そして、ハルナとエリスが大活躍している頃、イヅキ隊員もがんばっていた。
スパローショットM3とSNR-29を駆使し、一機ずつだが確実に撃破していく。時々――――
「うわぁっ?!」
稀に何の脈絡もなく躓いたりするが、決まってその時は頭上をレーザーや足が掠めていったり。さらに急所にでもあたったのか、威力的には不可能なはずなのにスパローショット1発でディロイを沈めてしまったり…と、不可解な出来事を連発させていたりする。
と言うか、今まで描写し忘れていただけで、イヅキ隊員の戦闘はいっつもこんな調子である。もちろん、そればかりではなく本人の力量も大きいので、真面目に戦っても地味に強いのだが。
やがてイヅキ小隊の活躍や、EDF隊員の奮闘もあってディロイの数は少しずつ減り始めていた。
「よし、あと2機……!!」
すでに基地のあちこちにも被害は出ているが、それでも戦況はEDF側に傾いている。
何とか凌げる!! 誰もが、そう思いかけていた時……。オペレーターの悲痛な声が響いた。
「上空に異常なエネルギーを観測……!!何かが転移してきます…!!」
「まさか、アダンかっ?!」
「いえ、それにしては質量反応は、アダンほどではありません……!!」
誰もが空を見上げる中、空間歪曲が始まり……。
「………なっ?!」
突然そこにそれは現れたのはマザーシップだった。そして、マザーシップは思いだしたように、その下に並んでいるジェノサイド砲が動かし始めたのだった。
~後編へ続く~
□えむ’sコメント□
書いたの、ちょっと久々な気もする…w
今回は珍しく、緊迫感のある展開にしてみました。突如、出現したマザーシップ。空間転移のできないはずのマザーシップが、なぜ転移してきたのか…。そして、ジェノサイド砲の発射態勢に入られ、大ピンチ。
全ての謎は、次回明らかに。……あー、次回はギャグ色つよいですよ、たぶんw