作戦No.022【地下トンネルの恐怖】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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―2025年10月23日 9:41

―イギリス ロンドン 地下鉄トンネル―

「線路は続くよー。どこまでもー」

「いや、なんていうか。淡々とした声で歌われても、なんかすっごく怖いんだが」

 イギリス特有の半円形・地下鉄トンネル。そこを二つの人影が歩いていた。

 一人は隊長なのに、今だ隊員と呼ばれるイヅキ隊員。そして、もう一人はポーカーフェイスのマイペース・ペイルウイング。ハルナ隊員である。

 今、二人は地下鉄の調査へと訪れていた。わざわざ、このためだけにイギリスまできたのか?という突っ込みはしてはいけない。僅かな間に違う場所に行かされることなど、毎度のことなのだ。

 地下鉄に入って1時間。とりあえず何も異常は何もなさそうだった。

 しかし、こう言った格言があるのを皆様はご存知だろうか。


「災難は、忘れた頃にやってくる」


そして、まさに今が忘れた頃であった。

「隊長。レーダーに敵影たくさん…」

「ぬぉ?!い、いつのまに?!」

 それこそ、それは瞬きをした僅かな瞬間のことだった。その一瞬の間に、突如レーダーにたくさんの反応が現れたのだ。しかし、これも地球防衛軍の世界では、日常茶飯のことである。

 そうこうしているうちに、赤い点はこちらへと近づいてきていた。ただ幸いにも敵は一方向から来ている。手榴弾やらをうまく使えば、そうそう苦労はしないだろう。まして、今回はこのミッションのためにバウンドガンM5(M3強化型の強化型。スペックはAS-21クラス)も持って来ているのだ。
「とりあえず迎撃するぞ!!」

「――了解」

 すぐさま二人がかりの一斉攻撃が始まった。バウンドガンとサンダ-ボウ15が一斉に発射される。乱反射する弾丸と雷光。ハッキリ言って、地下では無類の強さを誇るため、巨大生物はみるみるうちに数が減っていく。

 このまま行けば、そう苦労することもなくこの場を切り抜けることができそうだ。

「突っ込むから援護」

「わかった」

 敵の数が減ったところで、ハルナ隊員が飛行ユニットを展開。レイピア片手に敵の方へと飛んで行く。そして、イヅキ隊員は、持って来たSNR-229での援護へと切り替える。
 役割分担と言うのもあるが、二人の連携はかなりのものだった。さらにどんどんへっていく黒蟻。あっという間に、残りは片手で足りるほどになってしまう。

「なんとかなったな・・・」

 あとはハルナ隊員に任せようと、SNR-229を下げるイヅキ隊員。だが―――忘れてはいけない。

 くどいようだが、この世界には下のような格言が存在するのだ。

「災難は、忘れた頃にやってくる」


 まして、こんなにあっさり何もなく終わるようでは、小説としては三流以下なのである。

 そして、ここからが本当の戦いの始まりだった。

 黒蟻が全滅する。それと同時に、再びいきなり赤い点が現れる。

 場所は、最悪なことろにハルナ隊員の周り。つまり、いきなりハルナ隊員が囲まれると言うアクシデントが起こったのだ。

「ハルナ?!」

 やばい!!そう思って駆け出そうとするイヅキ隊員だったが、次の瞬間その場で凍りついた。

 出現したのはバゥだったのだ。バゥ…それは蜘蛛である。

「―――ぁ…」

 今回は、前回どころの騒ぎではない。突然現れたバゥの群れ。そのど真ん中にいるのはハルナ隊員である。それこそ密着距離で大量のバゥさんだ。

 蜘蛛嫌いの彼女にとって、これほど過酷な環境はない。そして、あまりにショックな事があると何らかの防御手段を無意識にとってしまうのが人間である。 ある者は、気絶する。そして―――

「…………ぅ…」

 この時、イヅキ隊員は確かに何かが切れる音を耳にした。

 そしてある者は―――壊れる。ハルナ隊員は、まさにこれである。今回は、悲鳴を上げるとか、泣くとか、そんな余裕もなく、彼女はいきなりシフトした。

「アハハはははハハハははハっ!!!」

 突然笑い出す。そして笑いながら、それこそ女神のように眩しい笑顔を浮かべたま、レイピアを滅多やたらに振り回しだす。

 ハッキリ言って、怖いなんてものではない。

「………(滝汗)」

 見る見るうちにいなくなるバゥ。その戦いぶりは言うまでもなくバーサーカー。

 しかし、問題はここからだった。―――前回の恐怖がイヅキ隊員の脳裏に浮かぶ。


 ハルナ隊員は暴走すると、敵味方見境いなくなる。そして、止まるには――レーダーに何も映らなくなるか、本人が戦闘不能になるかのどちらか以外にはありえない。

 前回は、エリスとグレイの三人がかりでギリギリの戦いを繰り広げ、かろうして撃破したのだが―――今回は一人である。さぁ、どうしたものか。


「…!!」

 ふと我に返ると、すでにバゥは全滅していた。山となったバゥの死骸の上に、一人佇むハルナ隊員。やがて、彼女はゆっくりとこちらを振り返ると、やっぱり女神のように可愛い笑顔を浮かべていた。バゥの返り血(体液?)で汚れていなければ、見とれていたかもしれないってほどの物だ。

 けど、今の状況では、とんてもなく怖い。

「…くモ、あト一匹だケネ。…ウフふふフ☆ すグ楽にしテアゲるよ?」

 ―――カシャン

 飛行ユニットが展開される。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!?!」

 こっちに来たーっ!!と、恐怖一杯の表情になりながらも手にしていたバウンドガンM5をフルオートで発射する。無数の弾丸があちこちにで目茶苦茶に跳ね返り、凄まじいまでの弾幕を形成する。だと言うのに―――

「クすくス…そンなの当たラなイヨ」

 ハルナ隊員は、その弾幕を飛行ユニットの限界を超えた機動――真ゲッ○ーも真っ青な動き――でくぐりぬけ、見る見るうちに近づいて来る。

「なぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!(泣)」

 そんな無茶苦茶なぁー?!と思いつつも、ボーっとしていればレイピアの餌食である。

 生存本能が逃げろと叫ぶ。その言葉に従い、踵を返して駆け出す。どうやら、一種のリミッターが解除されているらしく、その逃げ足は通常の10倍近い速さだった。

 


―2025年10月23日 10:51

―イギリス ロンドン 地下鉄トンネル―

「はぁ…はぁ…。な、なんとかしないと…。このままだと…」

 柱の陰によりかかるようにして、イヅキ隊員は乱れた呼吸を落ち着ける。状況は最悪だった。二回目のエンカウントで、携帯用のレーダーと通信機がレイピアで壊された。かろうじて、救急セットがあるのは幸いだが、残り数も少ない。さらに、手持ち武器の残弾もわずか。

 しかし、今も『奴』はそこら辺をうろついているのである。隠れればしばらくは時間は稼げるのだが、いずれは見つかる。野生の勘と言うかなんというか―――ほぼ確実に見つけてくるのだ。

「…い、生きて帰るんだ。なんとしても…!!」

 バウンドガンM5の弾奏を交換しつぶやく。すでにSNR-229は弾切れ。この武器が最後の頼みの綱だ。

 なんだか、どっかのホラー映画でありそうなシチェーションである。

 周囲に神経を尖らせる。相手は、何時どこから来るかわからないのだ。

「―――っ?!」

 不意に嫌な予感がして、イヅキ隊員は後ろを振り返ると―――

「…ふフ。…ふフふ♪ …ソコに…いるネ…?」

 隣の柱の陰から、『奴』がひょっこりと顔を覗かせていた。その距離、約10m。そして、その表情は獲物を見つけたライオンの如く、嬉々として輝いていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁっ?!」

 再びフルオートでバウンドガンM5を連射。今度は飛行ユニット展開前だったのもあり、全弾命中。それなのに、攻撃がほとんど効いていない。

 カチカチカチ…!!

「はっ?!」

 弾が切れた。そして、気がつけば目の前で輝くレイピアの光刃が――――




―2025年10月23日 9:05

―イギリス EDFイギリス方面基地―

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ?!―――あれ?」

 気がつくと、そこはロンドンにある基地だった。つまり、あれだ。夢オチって奴である。

「ゆ、夢か…」

 それにしてもリアルな夢だった。ていうか、もう並のホラー映画は怖くないかもしれないって思える程に怖いものだった。

 それでも夢は夢。現実ではないのなら、なんでもいい。

 と、そこで部屋の電話が鳴った。すぐにその電話に出る。

「もしもし?」

「イヅキ隊長か。実は、緊急で悪いのだが君に頼みたいことがある」

「なんでしょう?」

「実は地下鉄で巨大生物がいたと通報があってだな。その調査にハルナ隊員行ってもらいたい」

「…え゛」




―――悪夢再来。




☆予告
 イヅキ小隊の面々が一人を除いて全員風邪でダウンした。無事だったのはエリス一人。

 しかし、そんな中…ソラスが出現。それを迎撃するため、エリスは一人巨大(すぎ)な敵に挑むこと。

 一見勝ち目のない戦い。しかし、エリスは打倒ソラスを目指し、密かに特訓を重ねていた。

 今、必殺の一撃がソラスへと向けられる!!

 

次回――作戦No.023【拳と巨獣】

 宇宙怪獣『ソラス』登場!!


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□えむ’sコメント□

 夢オチと思わせといて、どんでん返しと言う脅威の二段返し♪

さてさて、現実ではイヅキ隊員はどうなったのやら。まぁ、さすがに死にはしないでしょう(マテ

 それにしても…マジで怖いですこう言うシチェーション。ホラー系が駄目なえむには耐えられません。