―2025年10月02日 16:47―
―東京郊外 どっかの住宅街―
エリス隊員は、指をくわえてぽけーっと空を見上げていた。
上のほうにはUFOキャリアーが一機。でもって、お約束の如く巨大生物のバゥがポトポト落ちてくる。
会敵滅殺と言わんばかりに、それらバゥを倒し続けて、すでに3時間が経過している。彼女は、こう見えても蜘蛛さんは嫌いではない。格闘戦主体である以上、蜘蛛は天敵のはずなのだが実はそうでもない。
糸を飛ばしてきたら、その糸を掴んで蜘蛛ごと振り回して、周囲を一掃するくらいの無茶苦茶が可能なのである。さすがにかこまれたら、ちとやばいが。
だが、それでも空飛ぶUFOキャリアーには、文字通り手も足も出ない。試しに蜘蛛さんを投げつけてみたが、効果は全くなかった。だから、とりあえず被害を減らすため、ひたすら蹴る殴る振り回す投げるを繰り返し、がんばっているのである。
最初は、あんなのが来る予定などなかったのだ。それなのに第1陣撃退後、いきなりひょっこりあらわれたのである。恐らく地球防衛軍2の「凶虫大挙」にて、同じような経験をした人もいるに違いない。作者のえむは、まさにその一人だ。
まぁ、いずれにしろ。エリス隊員はがんばっていた。と言うか3時間ぶっ続けで動き続けてもなお、平然としている彼女のスタミナには戦慄すら覚えるが、それは何の関係もないので割愛する。
「うぅ。やっぱり陸戦兵なのに銃が撃てないってのは問題ですねぇ…」
今までなんとかなったが、それは仲間のおかげ。だが、単独任務も増えるとなれば、この先はつらいかもしれない。
「―――なんとかしないといけませんねぇ」
ガックリと肩を落とし、飛び掛ってきた蜘蛛さんを、上段回し蹴り一発で横へと蹴り飛ばす。
「ここは――やっぱり隊長さんに相談してみましょう!!」
よし。と一人頷く。それからエリス隊員は、再び戦闘開始した。とりあえず、誰か来るまでがんばるつもりである。
その後、帰ってこないエリス隊員を心配してやってきたハルナ隊員によって、UFOキャリアーは撃墜された。ついでを言うと、その時はちょうど蜘蛛殲滅直後を言う絶妙なタイミングだったので、バーサーカーと化すことはなかったらしい。
―2025年10月05日 09:08―
―山梨 EDF日本支部第7演習場―
数日後。EDFが抱える演習場の一つに、エリス隊員を筆頭にイヅキ隊員とイーグリット隊員の三人がいた。
あの作戦直後。エリス隊員は速攻で、イヅキ隊員にお願いにいき、少し前からイヅキ隊員も気にしていたことだったのもあって、すぐに対策を兼ねた特訓(エリス曰く)を行なう事にしたのである。
イーグリット隊員を連れてきたのは、いちおうこれでもチームの中では、一番頭はいいからである。
「まぁ、遠距離攻撃と言えば…やっぱり銃火器なんだが…」
「ルクシエル君は、致命的なほど扱いが下手…というわけだな?」
「…あぁ、身をもって思い知らされたよ」
かつてSNR-299で撃ち抜かれそうになった事を思い出す。あの時は、マジで生きた心地がしなかった。詳しくは作戦No.005 を参照。
「ふむ。とりあえず前に立たないようにして、一通りの武器を試してみてはどうだ?」
「そうだな。じゃあ、それで試してみよう」
もしかすると何か使える武器があるかもしれない。まずは、それを探してみようと、一通り使わせてみることにした。
では、一連の様子を体験したイヅキ隊員の記録によるダイジェストでお楽しみください。
実験その①:ASシリーズ
全て的には当たらなかった。しかもバウンドガンでもないのに跳弾して、弾丸がこちらを襲ってきた。とてもこわかった。
実験その②:ゴリアスシリーズの場合
いきなりロケット弾が後ろ(こっち)に飛んできた。どうやら前後を間違えて持ってしまったらしい。
撃った本人は、それに気づきもせず弾がでないと首を傾げていた。とりあえず、一番持たせてはいけない武器に違いない。
実験その③:SGシリーズの場合
散弾ならば狙わなくても当たるだろうと撃たせてみる。結果は、全弾はずれだった、
適当にばらつく散弾とはいえ、何発撃っても的だけ当たらないと言うのはすごい。試しに的をたくさん密着させ並べてみたら、それでも的だけ避けて弾が後ろに当たっていた。もはや、すごいの一言に限る。
実験その④:GランチャーUMシリーズの場合
撃って外れた弾が壁に当たって跳ね返って、真っ直ぐこちらに寸分の狂いもなく飛んできた。しかも、こちらは後ろ。死角にいたのにだ。ここまで来ると、すごいどころか一種の才能を感じる。味方潰しの才能なんかあっても困るのだが(溜息)
実験その⑤:誘導ミサイルの場合
もはや言うまでもない。なぜかこっちに飛んできた。アレック(イーグリット隊員の事)によれば、自動照準装置の誤作動だろうとのこと。けれども俺が撃っても何もおきなかった。まさか、エリスさんはなんか、「飛び道具は使えない」と言う呪いでもかけられてるんじゃないのだろうか・・・と思えてきた。
実験その⑥:バウンドガンの場合
跳弾しない武器で跳弾するのなら、最初から跳弾する武器で!!と思って使わせてみた。結果は言うまでもなし。
「駄目だな…」
「うむ。まさか、これほどまでとは、この僕も思わなかったね」
「あぅ…」
一部始終で何度も危ない目にあった二人に、ハッキリキッパリ言われ、エリス隊員はその場で肩を落とした。
それを見て、なんとかならないだろうか…と頭を悩ませるイヅキ隊員を尻目に、イーグリット隊員は済ました表情で尋ねた。
「意外と、すでに人間場慣れしているルクシエル君のことだ。それこそ某格闘ゲーム張りに、気功波を撃ったり、拳圧による衝撃波を撃ったりできるのではないかね?」
「そんなぁ。さすがに波○拳とかあんなこと出来ませんよ~。それに衝撃波は撃っても10メートル程度しか届かないですよ?とてもじゃないけど、空を飛ぶキャリアーさんには届きませんよ」
「……ふむ。確かに」
「じゃあ、やっぱり何か武器を考えるしかないな……」
なんか微妙に引っかかる物を感じつつも、何か方法はないかと頭を悩ませてみる。
ペイルウイング装備を使わせると言う提案もあったが、エリス隊員の言葉によると、あれではうまくダメージを与えることができないとの事で却下だった。
「あと残るはHGシリーズか・・・」
けれどもそれは手榴弾。普通は投げても届かないのが関の山だ。普通は―――
ここでふとイヅキ隊員は思った。じゃあ、普通じゃない人ならどうだろう? ここは一つ試してみようか。
「エリスさん。これであの的を狙ってもらえます?」
「へ? …あ、はい」
「全力で投げてください」
「わかりましたー」
イヅキ隊員からHG-01Aを受け取ると、エリス隊員は持ち場へとついた。的までの距離は約200mである。
「じゃあ、いきま~す」
エリス隊員は声高らかに宣言すると、数歩の助走をつけつつ、思いっきり投げた。
見事なピッチングフォームから繰り出されたHG-01Aが、エリス隊員の手から離れる。
微かに響く風切り音。
そして吹き飛ぶ的。ただし爆発によってではない。信管が反応するより早く、HG-01Aは的を粉砕。爆発したのは的より後ろの位置で。投げた軌道もすごかった。放物線ではない。地面と並行一直線である。
「ふむ。時速300kmか…。これなら、空にも充分届くな」
「――――時速300kmって……。というか、その速度計はどこから…?」
どっから取り出しのか、速度計を片手に頷くイーグリット隊員に、脂汗を浮かべながら尋ねるイヅキ隊員。もちろん、どこにもっていたのかは聞いてはいけないルールなので、完全にスルーされたのは言うまでもない。
とりあえず、遠距離攻撃の方法がみつかった事には違いない。投擲がちょっとした狙撃並の射程と言うのは、何とも言えないすごさと怖さがあるが。
「と、とりあえず…。エリスさん。次からは手榴弾を携帯しとくといいよ。届かない相手がいたら、投げればいいから。それでなんとかなるはずだ。あとは、コントロールさえできれば…」
「わかりました♪ ありがとうございます隊長さん♪ それにイーグリットさんも♪」
とりあえずなんとかなるとわかって、嬉しそうなエリス隊員。
その後、さらなる特訓によってエリス隊員の投擲コントロールは、命中精度B+程度にまで跳ね上がり、実戦でも通用するだけのものとなった。
ただ――――
戦闘時は力を出すことを意識しているため、たまに勢い余って握り潰し、そのまま自爆してしまうと言う新たな問題が発覚したのは、そのすぐ後の事である。
現在、そっちの特訓も始まっているが、そちらは思うように行かないのが実状である。
☆予告
中央アジアに建造中のレーダー基地。そこは周囲を砂漠に覆われ、巨大生物やインベーダーからの攻撃を受けない場所として選ばれた場所であった。
しかし、そんなEDFの予想を裏切り、大規模な巨大生物の集団が基地に迫る。
戦力を配置していなかったため、危機を迎えるレーダー基地。だが、その危機を救うべく、たまたま視察に来ていたエム総司令が立ち上がる!! 果たして、総司令の実力とは!?
次回――作戦No.021【EDF総司令の実力】
黒色・羽・赤色甲殻虫・蟻さん詰め合わせセット登場!!(マテ
□えむ’sコメント□
ほぼ予想通りな展開に終わりました。さすがに波動○はちょっと(滅
ちなみに火炎放射は、対キャリアー戦には向かないと言う事で最初から除外しております。あしからず。
それにしても、エリスさん。どんどん人間離れしていくな…(汗←え?元からそうじゃないかって?