作戦No.005【○○は銃より強し!?】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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―2025年6月18日 13:54―

―東京 EDF日本支部司令部―


「あっ…。はじめまして。今日からお世話になるエリス・ルクシエルと言います。どうか、よろしくお願いします…」

 その日、イヅキ小隊に三人目の仲間がやってきた。

 パッと見、いるだけで空気が和むような―――独特の空気を持った女性である。

「あ、いえ。こちらこそ……」

 丁寧な口調で深々と頭を下げるエリス隊員に、つられて頭を下げるのは隊長になったはずなのに、いまだ隊員と書かれるイヅキ隊員である。

「あの…。それで、とりあえず何をしたらいいんでしょう?」

「え?く、訓練するなり、のんびりしとくなり、適当に時間でも潰したらいいんじゃないかな…?」 

 とりあえず今は待機時間。言い換えれば外出できないだけの自由時間とも言う。

 真面目な隊員は訓練してるし、そうでない隊員は適当に部屋で寝てたり、MGダロガ 1/40スケール・プラモデルを作っていたりと、千差万別。特にこれをしないといけないと言う決まりは―――ない。

 あと、本人の名誉のために言っておくが、イヅキ隊員は先ほどまで訓練してて今は休憩中。決して、遊んでいたわけではない。

「じゃあ、のんびりしますね」

 エリス隊員はニコリと笑うと、適当な椅子に腰を下ろし、ぼ~っと窓の外を眺め始めた。

「………え、えっと…」

 そんなエリス隊員を見て、なぜか言葉に詰まるイヅキ隊員。

 理由はよくわからない。強いて言えば、何か突っ込まないといけない気がするのだが、どう突っ込んでいいかわからない…。そんな感じである。

「ま、まぁ良いか…」

 何か納得のいかないものを感じつつ、コーヒーを飲む。

 ポカポカ陽気の昼下がり。ふと窓の外を見ると、今日もとてもいい天気だった。

「はぁ、良い天気ですねぇ。こんな日は、お昼寝したくなりますねぇ」

 窓の外を眺めていたエリス隊員がおもむろにつぶやく。

「あぁ、わかる気がするな…。芝生の上とかで寝たら気持ちよさそうだな…」

 確かに今日は、お外で昼寝とかするには最適な環境だろう。

 エリス隊員の言葉に同意して返事を返すイヅキ隊員。だが、なぜかその後の返事が来なかった。

 一体どうしたのだろうか?と気になって振り返ってみると――――

「………すぅ…」

 いつの間にやら…というか、気がついたらテーブルに突っ伏して気持ちよさそうに寝息を立てていた。あの短時間で一瞬にして寝つく。この速さ、もしかすると某ネコ型ロボットがお世話している昼寝の天才にも匹敵するかもしれない。

 しかし一つだけわかっていることがある。それは自分のリアクションは完全に無駄だったいうことだ。

「…………orz」

 再びなんとも言いようのない気持ちになって一人頭を抱えるイヅキ隊員。

 なんだか一人振り回されている気がする。 いや、たぶん気のせいだろう…と自分に言い聞かせる。そうでもないとやってられない。

 しかし、考えてみれば彼女も今度から自分の部隊の一員なのである。と言うことは、今度もこういうことは十分に―――いや、確実にあると言うことだ。何度も。

「………俺、本当に大丈夫かなぁ…」

 個性豊かな隊員たち。けれども全メンバーのうち、まだ二人。なんとなく、先行きが心配になるイヅキ隊員。

 その直後。巨大生物の出現を知らせる警報が基地内に鳴り響いた。



―2025年6月18日 14:20―

―東京 都心部―

 現場に到着するや否や、突然に黄色い液体が降ってきた。

 すぐにそれに気がついて、回避行動をとったイヅキ隊員とエリス隊員だったが、重装陸戦兵の名にふさわしく、グレイ隊員は回避に失敗。まともにそれを受けてしまう。

「――大丈夫か!?」

 すぐ体勢を立て直し、AS-21RLで傍にいた黒蟻を倒し、グレイ隊員の下へと駆け寄るイヅキ隊員。

 どうやら普通の陸戦兵の物よりも頑丈な(それでも市民用のものに比べるとかなり劣る)アーマースーツらしく、グレイ隊員はたいした怪我もなかったようだった。

 ただし、しばらく呆然とし――

「こ、これは…」

「?」

サンダァァァァ!!(酸だぁぁぁぁぁ!!)」

 突然、大声でそんなことを叫び、同時に驚いたイヅキ隊員が思いっきり後ずさる。

「うわぁ、何だ急にっ!?」

「いや、なんとなく言わなきゃいけない気がして」

「…は?」

「いや、気にすんな。それよりも今回、酸蟻なんだな」

「みたいだ」

 レーダーを見ると、とりあえずすぐ傍にはいないようだった。だが、一つの塊が近づいていることから、あまりのんびりしている暇もないようだ。

「あ、あの~…。これ、どうやって使うんですか?」

 そんな中。おもむろにエリス隊員ののんびりとした声が響いた。

「これって……、安全装置外して引き金引けば良いじゃねぇか。 あんた、陸戦兵なんだから使い方は最初に習っただろ…?」

「え~っと…。あ、そんな気もしますね…」

 ふと視線を空に向けて、しばしの沈黙の後。静かに答えるエリス隊員。

 ちなみに、基本的に女性は不思議とペイルウイングに配属されることが多いのだが、彼女は意外にも陸戦歩兵部隊の所属だったりする。だから、重火器のレクチャーは最初に受けているはずなのである。

「……なぁ、隊長。本当に大丈夫なのか…?」

 首を傾げつつ、手に持っているSNR-229をいじるエリス隊員を横目で見ながら、グレイ隊員がささやいた。

「……ごめん。自信ない」

 仮にもEDFにいるのだから・・・と思っていたが、さすがのイヅキ隊員も不安で一杯だった。とりあえず、雰囲気と言い性格と言い、とてもじゃないが戦闘出来るような人間には見えない。なんで、こんな人物が遊撃部隊の隊員なのだろうか?

 そうこうしているうちに、酸蟻の群れが目視できるまでに接近して来た。

 すぐに気持ちを切り替え、向き直る。

「とりあえず戦闘開始だ。まず正面の敵を三人で片付けるぞ」

「了解っ!!」

「はい、わかりました」

 並んでそれぞれに武器を構える姿は、それなりに様になっていた。

「よし…。撃――――どわぁっ?!」

 すぐに攻撃命令を出そうとしたイヅキ隊員だったが、次の瞬間…悲鳴に近い声を上げて思いっきり身体を後ろにそらしていた。

「あぁぁぁぁ…!? す、すみません…!!」

 両手を口に当てて、慌てたように謝るエリス隊員。どうやら―――イヅキ隊員を狙ってしまったらしい。

「………し、死んだかと思った」

「っつーか、よくかわせたよな。今の―――(汗)」

 激しく動悸する胸に手を当てて、肩で息をするイヅキ隊員。その後ろではグレイ隊員が唖然とした表情を浮かべている。

「わ、私。射撃がとっても下手なんです…」

「……まじかよ?!」

「いや、グレイ。いまさら驚くことでもないと思うけど…」

 エリス隊員の告白に驚くグレイ隊員。そして、冷静に突っ込むイヅキ隊員。

 まぁ前を狙って横の仲間を撃つほどだ。これで下手じゃないと言われた方が驚きである。

「…とりあえず聞かせてくれ。君って、本当に対インベーダー戦とかしたことあるのか…?」

「え?ありますよ。ただ……その時は違う物を使っていたので。それでいいのなら、ちゃんと戦えますよ?」

 にっこりと笑うエリス隊員。が、今までが今までだっただけにイヅキ隊員は不安で一杯。心なしか、胃が痛い気すらしてきた。これは後で、胃薬を買っておいた方が良いかもしれない…。

 いずれにしても、本人がちゃんと戦えると言うのなら、それを信じてみようと自分に言い聞かせ、どこか疲れた様子でイヅキ隊員は静かに告げた。

「……それって、今も持ってきてるのか?」

「あ、はい。ちゃんと持ってきてます」

「じゃあ、それでいいから。頼む」

「はいっ」

 小さく頷いて微笑むエリス隊員。そして、彼女はおもむろにもっていたスナイパーライフルSNR-229を放り捨てると、懐から黒の手袋を取り出した。

「……は?」

 何をするつもりなのかも、さっぱりわからないイヅキ隊員とグレイ隊員を尻目に、それを両手にはめ、パンッと右手の平に握り締めた左手を軽くたたきつける。

 そして――――

「じゃあ、行ってきます…!!」

 彼女はにっこりと微笑むと――――

「え? あ、ちょっ……!?」

 正面から近づいてくる酸蟻へと駆け出していき――――

「えーいっ!!」

 ―――酸蟻の真下にすばやく入り込み、掛け声一つと同時に握り締めた拳を下から真上へと、それこそ天を突くかのように突き出した。
 直後。なんだかすごく痛そうな音と共に、一匹の酸蟻が大きく空に舞った。

 宙を舞うこと約5秒。そして落ちてきた酸蟻は地面に激突し、そのまま動かなくなる。

「「えぇぇぇぇっ!?」」

 声をそろえて驚くなか、エリス隊員は地面を蹴って、通常の陸戦兵の倍くらいの高さに飛び上がり、今度は次の酸蟻の頭に踵落とし。直撃を食らった酸蟻は、そのまま頭を地面にめり込ませて動かなくなる。

 しかも降り注ぐ酸の間を縫って、さらに距離を詰めていき、一匹。また一匹と沈めていく。

「……隊長。僕さ…。素手で巨大生物倒す人なんて始めてみたんだが」

「いや、俺もだから。っていうか、人は見かけによらないって本当だな…。と言うより、なんだかものすごく怖いんだが」

 今、イヅキ隊員とグレイ隊員は、これまでにない戦慄を覚えていた。

 まぁ、色々時になることはある。なんで、素手で巨大生物を吹っ飛ばせるのか…とか、それ以前に彼女はどんな馬鹿力を持っているんだ…とか。そもそも人間なのか?とか。

 ただ一つ言えることは、彼女は射撃が下手で、そのかわり素手で巨大生物を倒すような人なのだと言うことだ。

「とりあえず…。あっちは、任せといてもよさそうだな」
 一匹ずつ、 宙に舞ったり地に沈んだりする酸蟻を眺めつつ、ポツリとイヅキ隊員がつぶやく。微妙に、エリス隊員がどんな表情で戦っているのか。見てみたい気もしたが、怖いのでやめておくことにする。

「じゃあー、グレイは東のグループ。俺は西側のグループをやるから」

「お、おう」




 作戦終了後。どーしても気になったイヅキ多員は、さりげなくエリス隊員に聞いてみた。

「もしかして…。くしゃみした時に、お茶碗を握りつぶしたりとかしたことない?」

「ふぇ?!な、なんでそれを?!(汗)」
「…………やっぱりか」


☆予告

 市街地のど真ん中にインセクトヒルが出現した。

 直ちに破壊のために現地へと向かうイヅキ小隊。そして、羽蟻の怪しい動きの翻弄され、苦戦を強いられるイヅキ小隊の面々の前に現れた人物とは!!


 

次回――作戦No.006【初めての危機?】

 羽蟻型黒色甲殻虫「フェザーアント」・登場!!


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□えむ’sコメント□

 はい。三人目の仲間エリスさんの登場です。

 ……完全に地球防衛軍から逸脱した、とんでもないお方(オリジナルキャラ)です。

 ぶっちゃけ彼女は強いですが、対空戦闘ではからっきし。さらにビルの壁に上られても攻撃できないという極端な人です。一応解決手段もありますが、それはいずれ…。

 ちなみに、題名の○○には「素手」の文字が入ります。