イグアスの滝のボートツアーは遊歩道からかなり下に降りたところにある。
悪天候のせいだろうか? お客さんはほとんどいないようだ。
やっているのだろうか・・?
乗り場のスタッフに尋ねると、笑顔であと10分で出発すると教えてくれた。
ボートツアーと言ってもラフティング用のボートにエンジンがついたようなもの。
川に落ちた時のためにライフジャケットをつけるらしいが、川の中にはワニやピラニアもいるだろう。
(最初は穏やかな船出だった・・・)
桟橋のある乗り場は、蛇行している川のカーブの内側にある。
そのためだろうか、出発してすぐは流れも穏やかであれた様子はほとんどない。
ところが、少し上流へ向かうといきなり流れが急になって、大きな流木が濁流の中を流れてくる。
(滝の方に近づくと流れが荒くなってきた・・)
ボートはその濁流の中、大きな波や渦そして流木をよけながら、大きくジャンプして上流へと向かっていく。
それは、さながら海辺のリゾートでジャンプするバナナボートのようだが・・
ちょっと違うのは落ちたら助からないと思うからだろうか・・?
斜めになりながら大きくジャンプするたびに聞こえる大きな悲鳴もバナナボートのそれとは違って聞こえてくる。
(必死にしがみつかないと・・・)
“これ、すごく危ないですけど・・・旅行保険効きますか・?” と先輩と一緒にやってきた課長が懸命にロープにしがみつきながら聞いてきた。
大丈夫・・と答えたが どうだろう?
やがてボートは滝の近くの、さらに荒れた場所にやってきた 。
ジャンプして前にもまして大きく左右に揺れるながらボートはさらに上流に進んでいく。
(もう、生きた心地はしません・・・)
ボートが波を切り裂くたびに茶色く濁った川の水は、細かな水しぶきとなって全身に降りかかってくる。
そして、ようやく滝つぼの近くまでくると今度は上から土色の水しぶきが豪雨のように容赦なく降り注いできた。
(降り注ぐ泥水を全身に浴びて‥)
滝つぼでUターンするとボートは一気に川を下りはじめた。
復路は川の流れと同じ方向に進むせいだろうかあまり揺れない。
ボートを降りてズボンを触ってみると細かな赤茶色の泥が混じった水のせいだろうかヌルっとして気持ち悪い。
そんな時、泥水を飲んでしまったのだろうか、ミネラルウォーターで口をゆすぎながら不安そうにこっちをみる先輩と目が合った。
大丈夫、カイピリーニャの強いお酒を飲めば大丈夫ですよ。
たぶん・・・・
(念のため2杯飲んでおこう・・)