最後にミスのメカニズムをまとめておきましょう。
一つの行為の背後では、たとえそれがどんなに単純に見えたとしても、四肢身体のいくつもの動きと、認知のいくつもの働きが同時に連合して遂行されています。そして、その全タスクと全機能のコントロールセンターが「意識」です。
たとえば、ピアノを演奏するという一つの行為は、
右手
左手
左右十本の手指
ペダルを踏む右足
楽譜を認知する視覚
自分の音を認知する聴覚
という、四肢身体のまったく異なる動作と視聴覚の同時的な連合によるものです。
ミスは、これら複数の運動的タスクと認知的タスクが上手く同時に噛み合わないときに発生します。
それでは、なぜタスク同士の不整合が起こるのでしょうか?
主たる原因は3つです。
1つめは、コントロールセンターである「意識」が、必須タスクのうちのいくつかを意識することを、うっかり忘れてしまった場合。
2つめは、ある行為を遂行するために必須な諸タスクが、「意識」によってすべて完全に把握されているとは限らない場合。
3つめは、ある1つの行為を遂行するために必須な諸タスクを、同時に意識上に展開し制御できるレベルまで、そもそも「意識」の器が大きくない、PCで言うならメモリ不足、CPUのクロック不足の場合。私の場合はこれでした。
つまり、ミスは「意識」によるタスクの認知のしくじり、もしくはコントロール不全に起因するのです。
よってミスを防ぐには、ある1つの行為を正しく遂行する時に、自分の身体と自分の知覚と自分の意識上で何が起こっているのか、コントロールセンターとしての自分の「意識」に逐一把握させる作業を、練習として日々行えばよいということになります。そして、その練習こそがイメージ記憶なのです。
つまり、何十何百もの異なったタスクの一々を分解された状態で一挙に把握することは、人間の認知能力の構造上不可能なので、すべてのタスクが綺麗にかみ合った状態を一幅の絵のようにイメージで記憶し、そのイメージを意識上に再現することで、そのかみ合った状態が導く行為をいつでもできるようにしようという訳です(※)。
※ 「練習/勉強の本質」
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ただし、もし自分の中で何が起こっているのか気にかける習慣がそもそもないのなら、まずそこから始めなければいけません。