映画を観ながら小説を読む――。
朝井リョウ『何者』で実験して味をしめた。
今度はぜひミステリーで試してみたいと、東野圭吾『麒麟の翼』を選んだ。
映画は土井裕泰監督で、2012年に公開されている。
映画『祈りの幕が下りる時』(2018)を先に観たので、日本橋署の加賀恭一郎刑事(阿部寛)と警視庁捜査一課の松宮脩平刑事(溝端淳平)のコンビが日本橋界隈を歩く映像には既視感がある(『新参者』というシリーズらしい)。
全体2時間あまりのうち、最初の40分を観て、事件の謎は出そろった。
とくに、被害者(中井貴一)が毎週末に日本橋で続けていた行動が、何か罪滅ぼしのようで、不可思議である。
何かとても重い過去が物語の背後に隠されている予感がある。
そして、新垣結衣演ずる被疑者(三浦貴大)の恋人が、つらい運命をどう乗り越えていくのか、これから物語の中でどんな役割を果たすのか、なども気になる。
その期待感を持ったまま、映画は約40分で一度中断し、原作本を読み始めた。
原作は、文庫本(講談社文庫)で約370ページ。
日本橋の風景も、登場人物たちも、映画で観た豊富な視覚的記憶を材料にして、すんなりとイメージの世界に入ることができる。
まさに“映画を観ているみたいに”、読むことが楽しい。
どんどん物語の中にのめり込んで、映画を中断したところをいつのまにか越えてしまっても、そこに切れ目はなく、心の中では映画の続きを見ている気分。
映画で観たのは文庫本では160ページあたりまでだが、あっという間に270ページくらいまで読み進んだ。
残り100ページで、いよいよ隠された真実に近づいていく、と感じたところで、ぐっと堪えて踏みとどまった。
そのまま先を読みたかったが、“映画を観ながら読む”のが今回の実験である。
そこで、Amazon Prime Video に戻って、映画の続きを見始めた。
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