高校の国語教師である私は、自分が中学生・高校生だったころから国語の授業に疑問を感じていました。
一方的に説明するだけの先生は言語道断。それでも当時はけっこういました。
生徒たちに発言を求める先生でも、突飛なことを言う生徒には困り顔。最後にできそうな生徒にあてて、うれしそうに「正解です」と言って終わりです。
けっきょく、先生が求める答えを探すだけだからつまらないし、読む力もつかない……。
それならお前はどんな授業をするのだ? そう自問自答して長年、試行錯誤と失敗の連続で実践を重ねてきました。
「カットイメージ」はその最大の成果ですが、他にもいろいろなアイデアが生まれ、生徒たちと取り組んできました。
私のホームページ「教育エジソン」の「国語授業」のコーナーに一部を紹介しています。
その中で、今回お知らせしたいのは、「夢診断士になって夏目漱石『夢十夜』を読む授業」。
高校1年の国語教科書に載っている『夢十夜』(第一夜、第六夜)を、もちろん、最初は「カットイメージ」で読むのですが、その後の展開に工夫を凝らしました。
生徒一人一人が夢診断士となって、2つの夢を「夢分析」し、「診断書を書く」という課題。
「夢は深層心理の表れである」という考え方で、小説に描かれた夢を吟味することにより、結果的に作品の読みを深めるのがねらいです。
「百年待っていてください」と言って死んだ女を待ち続ける『第一夜』では、自由に夢診断させた結果、漱石自身の恋愛体験や恋愛観にメスを入れた生徒たちの作品が目を引きました。
明治の代(現代)の護国寺で仁王像を刻む運慶の姿から芸術の意味を考えさせる『第六夜』では、夏目漱石自身の“相談”を受ける設定を用意しました。
実際に漱石が直面していた、「大学教授になるか、新聞社専属の小説家になるか」という悩みに、生徒たちが『第六夜』の夢を診断してアドバイスします。
グループでの作品交流やクラスでの発表、ロールプレイなど多彩な学習活動に、生徒たちは嬉々として取り組みました。
事後のアンケートでは、作品の読みが深まっただけでなく、自分を見つめるきっかけになったという感想も見られました。
次の論文にまとめてあるので、興味のある方はご覧ください。
今後、「カットイメージ」のセミナー(ZOOM)」では、『夢十夜』を体験教材に取り入れて行きたいと考えています。
「カットイメージ」については、拙著をご覧ください。