私は母親が怖くて怖くて仕方がない。
母親は私を管理したがる。箱入り娘なのね、と人は笑う。大切にされているのね、と。箱の中は冷たくて暗い。早くここから出たい。私はラプンツェルじゃない。美しくなければ、騎士は、王子は、誰も助けに来ない。
反抗期、大人たちは言った。大きくなれば分かるわよ、親も人間だって。ずっと知ってた。でも、小さい頃はどこかで親が全能だって感じていた。私の法と規律は母だった。いずれ分かる、私が間違ってるのだ、母が正しかったといずれ公後悔する、母は私にそう教え続けた。
親の文句を言うのはダサい、親には感謝しなければならない、だって育ててもらっているのだから。愛がなければ子育てなんてできないのだから。
親がただの人間だと思えば思うほど、私は母親が怖くなる。私と彼女は他人なのに、彼女は立派な人間だったのに、産みの苦しみを経験してしまえば人は鬼になる、娘を自分の身体の一部だと思いこむ。失うのが怖くて、自分の価値観で動かなければ許せない。私は子供なんて産みたくない。
誤解のないように言っておくが、私は母のことが大切だ。なるべく傷付けたくないし、傷ついて欲しくない。心から幸せにしたいと思っている。母の為だけに生きることは出来ない、それだけだ。
母は私のことを愛している、まるで自分のチャームポイントのように。人から貶されれば腹がたつし許せない、だけど、自分ではまるで価値のないように扱う。お前はダメだ、偽善者だ、怠け者だ、お前の言ってることは全て間違っている。だけど、他人に貶されるのは私にとってなんともない。母親から認められてみたかった。
母親は昔、私を、「やさしい子、それだけ。」と嬉しそうに言った。優しいことが唯一にして最大の美点だと。他に褒められたことなんてなかったから、私はそれだけを自己肯定の根拠にしていた。私は"優しい自分"を守る為になんでも許容した。私の中での法と規律は"母"から、"優しい私"に変わった。母の言う悪口に同意できなくなった。母親は遂に言った、「お前は綺麗事しか言わない、偽善者だ。」優しいふりなどするな。と。
私はもう、無価値なんだと思った。母親のことを全肯定出来ない私は、それだけで気分を逆撫でしてしまう。他人に優しくしたって無駄なのだ。母は私から肯定されたかったのだ。否定し続けても肯定してくれる、そういう存在でなければならなかった。私は、お前の、お母さんじゃない。