日本でも温暖化の影響が出ていますか

今後も温暖化が進むと、世界中で影響が出てきます。とくに熱帯・亜熱帯域にある途上国での影響は深刻なものになるでしょう。現在でも大気汚染や水質汚濁などの環境問題に悩むこれらの国々では、温暖化が追い討ちをかけてしまうおそれがあります。
 日本でも、高山植物の生息域が縮小したり、南方系の昆虫(チョウやクモ)が北方へ移動するといった現象が観測されています。また生物季節のデータから、サクラの開花や満開時期が全国的に早まっていること、紅葉などが遅くなっていることが確認されています。2002年の春には、全国的にサクラの開花が10 日から2週間早まり、地域の春のイベントが中止になるなど、人々の生活にも温暖化の影響が現れてきています。

$みんなで守ろう地球環境-温暖化の影響の 全体像 (日本への影響)
温暖化によってどんな現象が現れているのでしょう

 現在、すでに現れている温暖化の影響としては、次のような現象があげられています。

 ・氷河の縮小と、永久凍土の融解
 ・河川や湖沼の結氷期間が短くなる
 ・中・高緯度地域の植物の生長期間が延びる
 ・動植物の生存域が極方向、高地へ移動している
 ・動植物種の生育数が減少
 ・開花、昆虫の出現、鳥の産卵の時期が早まる

このような温暖化の影響が確認された地点を地図上で見てみましょう。ヨーロッパ、北アメリカに多く、アフリカ、アジア、南アメリカにはほとんど事例がありません。これらの地域では、温暖化の影響が出ていないというのではなく、科学的に判断できるだけの論文が出ていなかったにすぎません。
 日本に事例がないのは、英語の論文として科学者の目に留まらなかったということです。実際には、気象庁によって1953年以降、約50年間に及ぶ貴重な生物季節のデータが蓄積されています。今日、このデータは温暖化が進んできたことを知るために非常に貴重なものとなっています。
 ごく最近の例としては、北極の海氷やヒマラヤなどの山岳氷河が融けていることが報告されています。また、北極協議会(ACIA)が 2004年11月に公表した北極圏気候影響アセスメント報告書によると、過去50年間にアラスカとカナダ西部で、3~4℃の気温上昇、氷河や海氷の融解、永久凍土の融解、積雪期間の短縮などが観測されています。とくに北極の氷は速い速度で融けていて、過去30年間で氷の厚さは半分に、面積は10%減少したことが明らかにされています。(第1部1「地球温暖化のきざしは?」“北極海の氷の変化”参照)このまま温暖化が続くと、北極の氷が融けて、イヌイットなどの周辺の住民や生態系に深刻な影響が現れると危惧されています。


$みんなで守ろう地球環境-温暖化の影響が 確認された地点
温暖化の影響かどうかを科学的に評価する

温暖化の影響が現れていることを科学的にどのように明らかにするかは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル) が第3次評価報告書の検討をはじめた1998年ごろから問題となっていました。
 山岳の氷河が後退したり、北極海の海氷が薄くなったりしていることは、自然の中での現象であり、また衛星による観測データも使えるので、温暖化の影響が 出ているかどうか比較的容易に判定することができます。しかし、人間が住んでいる地域や、活動している地域では、たとえば植物に温暖化の影響が出ているか どうかを確認するのは難しいのです。そのような場所では人間活動の影響も同時に受けていて、気候が変化したための影響か人間活動の影響なのか、はっきり区 別できないからです。
 そこでIPCCでは、気候変化にとくに敏感な雪氷や自然生態系についての研究論文をできるかぎり集め、それらを詳しく調べることから始めました。集めら れた論文数は2500編以上。それらを、地域の気温変化との関係を扱っていること、観測期間が長い事例(20年以上)、という2点を基準にして絞り込み、 最終的に約50の研究について詳細に検討しました。その結果、温暖化すると当然生じると予想される現象とは逆の現象を示す例も少数ありましたが、大半は温 暖化による現象であることが、統計的な方法によって確認されたのです。
 その後、IPCCの第4次評価報告書(2007年)でも、577の研究から選ばれた約29,000件のデータに基づき、全ての大陸とほとんどの海洋において多くの自然環境が地域的な気候変化、特に気温上昇により、影響を受けていることが確認されました。
 
 

高解像度気候モデルによる気温の予測

 国立環境研究所では、東京大学気候システム研究センター、海洋研究開発機構と共同して2100年までの気候変動を予測しています。この見通し計算は世界最大規模のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」で行ったもので、解像度は大気が100km、海洋が20kmと、世界最高のレベルを達成しています。将来の世界をIPCC排出シナリオの化石燃料と新エネルギーをバランスよく使う社会(A1Bシナリオ)と仮定すると、全地球平均気温は4℃上昇することになります。

高解像度気候モデルによる年平均地表気温上昇の分布
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100年後の気温上昇は1.1c~6.4c

IPCCの排出シナリオに基づき、推定したCO2などの排出量を与えて、世界のさまざまな気候モデルを用いて将来の気温上昇を予測した結果を見てみましょう。循環型社会(B1)が達成できれば、1980~1999 年を基準とした気温上昇は1.8℃程度におさえることができますが、石油や石炭を使いつづける化石燃料依存型社会(A1FI)では、4.0℃(最大で 6.8℃)まで気温が上昇してしまいます(IPCC第4次評価報告書による)。
 ただし、IPCCの排出シナリオでは、京都議定書の削減約束(「概要」 http://www.env.go.jp/earth/cop6/3-2.html)を達成するといった温暖化対策を仮定していません。温暖化対策が加われば、気温上昇はより低い値になるはずです。

$みんなで守ろう地球環境-排出シナリオによる 気温の予測
21世紀の世界はどう発展するのでしょうか

 人為的な温暖化の進行は将来のCO2の排出量に左右されますが、これは世界がどのように発展していくかによって違ってきます。そこで、IPCCでは人口、経済、エネルギー利用、技術開発などを想定して将来の道筋(シナリオ)をえがき、これをもとにしてCO2の排出量を推定しています。このシナリオをIPCCの「排出シナリオ」と呼んでいます。
 排出シナリオの道筋は、「グローバル化するか、地域ブロック化するか」の方向と、「経済重視か、環境重視か」の方向の4つに大きく分かれます。これらを「A1、A2」「B1、B2」と呼んでいます。
 A1は高成長型社会で、さらに、今後も化石燃料を使い続ける社会 (A1FI: Fossil Intensive、化石燃料集中利用)、非化石燃料や新エネルギー技術(たとえば、太陽エネルギーやバイオマスエネルギー)を利用する社会(A1T: non-fossil energy sources)、化石燃料と新エネルギーをバランスよく使う社会(A1B: Balanced across all sources)の3つに分かれます。
 A2、B1、B2はそれぞれ多元化社会、持続的発展型(循環型)社会、地域共存型社会と呼ばれています。


$みんなで守ろう地球環境-排出シナリオの 考え方
気候モデルによるシミュレーション

地球の気候は大気、海洋、陸面などの複雑な相互作用によってつくられています。そこで、その相互作用を再現できるようなシミュレーションモデルをつくり、これを将来の気候を予測するために使います。このモデルを「気候モデル」と呼んでいます。
 気候モデルは、大気を中心とした大気大循環モデルから始まり、より多くの要素を取り入れた複雑なモデルへと発展してきています。その研究は各国の研究所で進められていますが、モデル化の違い、たとえば雲や氷の効果、計算の単位となる格子間隔(空間分解能)の違いなどのために、得られる結果が異なっています。そこで、温暖化の影響を研究するときには、一般的に複数の気候モデルの結果が用いられます。

$みんなで守ろう地球環境-気候モデルの発展
温暖化は人間の活動が原因

このように、産業革命以降、ことに20世紀後半になって、温室効果ガスの主役である大気中のCO2濃度が著しく増加したことがわかってきました。他方、地球の46億年にわたる歴史をかえりみると、大きな気候変動の波があることがこれまでの研究で明らかにされています。この100万年の間には、氷期と呼ばれる寒冷期と間氷期と呼ばれる温暖期とが10万年おきに繰り返されています。現在は、約1万年前に最後の氷期が終わったあとの間氷期にあたり、比較的暖かい時期に該当します。
 現在の温暖化の原因は、こうした大きな気候変動や火山の噴火や太陽活動の変化などの自然要因は関与しないのでしょうか。複雑な気候の動きを完全に解明して、温暖化の原因を特定することは簡単ではありません。実験して調べることができないからです。しかし、ようやく最近になって、「大気大循環モデル」とよぶ気候モデルを使って、原因を推定することが可能になりました。
 まず、火山の噴火や太陽の活動などの自然要因に限って計算した場合、気温の変化はどうなるかをグラフにしてみます。さらに、CO2などの温室効果ガスの増加という人為的な要因だけだったらどのような気温の変化が現れるかをグラフにします。どちらも、実際の観測データとは一致しませんでした。ところが、双方を考慮して計算すると、過去の実際の気温の変化を高い精度で再現することができたのです。
 このほかのさまざまの研究成果も考慮して、20世紀後半に観測された地球温暖化現象は人間の活動よってもたらされた可能性が非常に高い(90%以上)、と研究者たちは結論づけました(IPCC第4次評価報告書[2007年]より)。


$みんなで守ろう地球環境-最近50年間の 気候変化
大気中に増える二酸化炭素

自然起源の水蒸気を別にすると、温室効果ガスの主役は二酸化炭素(CO2)です。私たちは地下に埋蔵された石炭や石油などの化石燃料を産業活動や生活に利用してきました。化石燃料は、地球上の微生物や植物から生じたものであり、地球が長い時間をかけて地下に貯えた太陽エネルギーと考えることができます。
 化石燃料を燃やすとCO2が発生します。その一部は海洋や森林に吸収されますが、残りは大気中に貯えられます。また、森林の大規模な伐採によって、光合成で樹木に貯えられたCO2が大気に放出されます。とくに20世紀の後半、人類は活動を拡大し、それにともなって大気中のCO2濃度も大幅に増加しました。
 現在、世界の総人口は66億人を超えています(総務省[世界の統計])。1960年の30億人からわずか40年あまりの間に倍増し、21世紀の今も増加し続けています。1971年と2005年のデータを比較すると、一次エネルギー消費量およびCO2排出量も約2倍に、経済発展を示す実質GDPはおよそ3倍に増えています(EDMC/エネルギー・経済統計要覧2008年版)。この間の経済発展をもたらしたのは化石燃料の消費を基盤にした人間の活動です。
 さかのぼって、産業革命このかた大気中のCO2濃度がどう変化したかを調べてみましょう。南極の氷(アイスコア)をとって調査し、各年代の層に含まれるCO2量から当時の値を推定します。その結果、産業革命前の1750年のCO2濃度は280ppm程度で産業革命まではCO2濃度の急激な増加は認められず、その濃度は安定していたと考えられます。ところが、現在のCO2濃度は380ppmと3割以上の増加を示しているのです。
 1990年代の10年間に大気中に排出されたCO2の総量は炭素に換算して年間64億トン。そして森林伐採や焼き畑などの土地利用に由来するCO2排出量が16億トン。このうち26億トンは植物や土壌に吸収され、さらに22億トンが海洋に吸収されるので、残りの32億トンが毎年大気中に貯蔵されたと推定されます。その後の2000~2005年では、化石起源のCO2の排出量は年あたり炭素換算で72億トンに増加し、海洋と陸上生物圏に取り込まれた量を差し引くと、大気中の増加は年間41億トンと考えられています。CO2は簡単には分解しない物質なので、大気中のCO2量は年々増え続けることになるのです。
 地球の毛布の保温力を高めるガスとして、CO2のほかに、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、フロン類などのハロカーボンなどがあり、対流圏のオゾンも温室効果をもたらします。しかし、なんといってもCO2は量が多く、温室効果ガスの主役の地位を占めているのです。

$みんなで守ろう地球環境-人間活動の拡大

$みんなで守ろう地球環境-大気中の二酸化炭素 濃度の変化

$みんなで守ろう地球環境-地球の炭素収支の 推定

$みんなで守ろう地球環境-温室効果ガスと 放射強制力
地球をとりまく大気は毛布

左の写真は私たちの地球の姿です。地球は全体が大気の層にすっぽりと包まれています。言うまでもなく、地上の多くの生物が大気(空気)の存在によってその生命を維持しています。また、大気に含まれる水蒸気、二酸化炭素、メタン、フロンなどのいわゆる「温室効果ガス」の存在が、地球上の気候を生物の生息に適したものにするのに役立っています。
 もし温室効果ガスが全くなかったら、地球の状態はどのようなものだったでしょうか。太陽からの放射エネルギーを受けて地球は常に暖められていますが、その温度を適度に保つのが温室効果ガスの重要な役割です。温室効果ガスの存在しない地球は、毛布をはがされたようなもの。いま、地球全体の平均気温は約 14℃に保たれていますが、温室効果ガスが全くなかったとすると平均気温は-19℃に低下すると推定されます。極寒の天体となっていたはずです。もしこんな過酷な環境だったら、地球の現在のような生命/人類の繁栄は到底ありえないでしょう。
 人間が快適に暮らすことができるのは、実はこの温室効果ガスのおかげなのです。

$みんなで守ろう地球環境-上空から見た 地球の姿