「れいわ新選組」の山本太郎代表が「税は財源ではない」と対談で述べたとのことでツイッター等で疑問や批判の声が集中していました。
そのことについて実務的な点からアプローチしてみたいと思います。
下のグラフは2022年度の予算表です。
上のグラフをみますと、歳入の総額は107.5兆円、その内訳は税収が65.2兆円、国債36.9兆円、他が5.4兆円になっています。・・・既に国会では、この予算案は実質的には承認されていますので、2022年度はこの予算で運営されることになります。
1.スペンディングファースト(まず政府支出、そして後になって税として回収)
2022年度は4月1日からスタートします。
しかし、4月のスタート時には、政府の金庫には当該年度の税金は一銭も入っていません。
このままではお金がないままに国の運営が行われることになります。
当然のことながら、4月1日からは各種費用も発生しますし、月末が近づくと公務員の給与の支払いも必要になります。
それでは、政府はどうしてお金を調達しているのでしょうか?
実は・・・
財務省は、下記のように4月1日から国債と国庫短期証券(満期は1年未満)の入札を行い、お金を確保しています。これらの債権購入者は日銀当座預金を利用できる金融機関です。
尚、国庫短期証券は日本銀行が直受けできることになっています。
下表は、財務省ホームページの「入札カレンダー」(2022年4月分)のものです。
(不鮮明ですので「入札カレンダー」をリンク先でご確認ください)
財務省は、年度を通して国債(36.9兆円)と、国庫短期証券(70.6兆円)発行によって予算額107.5兆円を確実に確保しているのです。
そして、年度途中でそれら支出されたお金の一部が税金として回収され、日銀内にある政府預金口座に入金され、国家短期証券の償還に充当されていくことになります。
つまり、①政府は先に国債と国庫短期証券の発行によりお金を確保→②必要な事業等に支出→③後から税金としてお金を回収していることになります。
ちなみに基幹税(所得税、法人税、消費税)の納期期限はバラバラです。(消費税は3月末日)最も遅い法人税の最終納期は2023年5月末日と次年度に入ってしまっています。・・・政府の事業年度は3月末日までなので税収を待っていては年度中に政策を実行できないことになってしまいます。
しかも、国会議決通りの税収(65.2兆円)が確保できるのかどうか? 次年度2023年5月末まで誰にも分かりません。
繰り返しますが、財務省としては、国会で議決された予算を確実に確保して事業執行する為に、上述のように計画的に国債や国庫短期証券発行して一円も不足することなくお金を確保しているのです。・・・仮に、年度途中に不測な事態があって税収が極端に減ったとしても事業計画に支障がでない制度になっているのです。(税収減になったとしても政府は何も困ることはありません)
以上のような仕組みから「税は財源ではない」、あるいは「スペンディングファースト」とも呼ばれています。
参考動画 安藤 裕氏(前衆議院議員・税理士による解説)
「税は財源ではない 順序が逆である」
2.税金は景気調整(インフレ対策)と格差是正
税金が財源でないとすると、税金は何のために徴収されるのでしょうか?
広く知られていることは、税金は主に景気調整(インフレ調整)と格差是正の為にあるということです。
景気調整(インフレ率調整)
景気が悪ければ、実体経済の中でお金の回りをよくするために、政府が回収するお金の量は減らさなくてはなりませんし(減税)、逆に、高インフレならば実体経済の中からお金を多く回収して景気を冷やさなくてはなりません(増税)。
現在は「失われた25年」から脱却できていませんので、回収するお金の量を減らさなくてはならないのですが(減税)、政府は「財政健全化」という誤った財政論に基づいて、財政支出を抑制するとともに、消費増税というアベコベの政策を行ってきました。
さらに加えて、このコロナ禍で経済は瀕死の状態になっているのに、減税という選択の気配は微塵もありません。
格差是正
所得税や法人税の基幹税は累進税率が適用されています。高所得者に対しては高税率が適用され所得の再分配機能を持つようになっています。
しかし、我が国では消費税が導入されてから、5%、8%と税率が引き上げられる度に、所得税と法人税の税率が共に引き下げられ税制の目的(格差是正)とは真逆なことが行われてきました。
与野党から「消費税は社会保障充実の為に必要」と聞かされてきましたが、真っ赤なウソだったのです。
その結果は下表の通りです。・・・法人税もと所得税からの減収分を消費税が穴埋めしていることが分かります。
財政健全化がそんなに大事だ、というならば所得税・法人税の税率を元のままに維持しておけば一層多くの税収が確保できたことになります。・・・つまり、消費税導入の目的として、富裕層や企業の利益確保があったと言うことにほかなりません。
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→消費税の真実もご覧ください。
3.無税国家は可能か?
国債や国家短期証券によって、年度予算の歳入が確保できるならば、税金がなくても国家運営は可能ではないかとの考え方もでてきます。・・・たしかに、2022年度予算の総額は107兆円ですので、この金額程度ならば税金として全額回収しなくても高インフレにはならないと思われます。(この場合のインフレとは、デマンドプルインフレのことです)
しかし、2(税金の目的)で述べたように、格差是正という目的は実現できずに放置されてしまうことになります。これでは、公平・公正な社会づくりという普遍的な命題に背くことになります。
ちなみに、望ましい税制とは・・・
逆進性の強い消費税は廃止するとともに、所得税、法人税、金融所得税等は累進性を強めるとともに、それでも不足する分は国債発行で賄えば良いことになります。
ここも参考にして下さい→国債についての認識は180度勘違いだった
以上


