スラド「小学館の図鑑で毒キノコを「食用」とする誤記載」より
小学館は20日、「小学館の図鑑NEO きのこ」で毒キノコを「食用」とする誤記載があったとして、同書の回収・交換を発表した(プレスリリース、 YOMIURI ONLINEの記事、 日本経済新聞の記事)。
誤記載があったのは25ページ左下、「キシメジのなかま①」の「ヒョウモンクロシメジ」の説明文で、「毒」とすべきところが「食用」になっているという。誤記載は監修者からの修正指示を編集者が見落としたことが原因とのことで、今後は編集・校了体制を一層強化して再発防止に努めるとのこと。
現在までに誤記載による健康被害は報告されていないが、ヒョウモンクロシメジを発見した場合にも食べないよう呼び掛けている。(略)
有毒の「ヒョウモンクロシメジ」が食用になっているという話題だが、この話には続きがあって掲載されている写真は「ヒョウモンクロシメジ」ではないという指摘がある。
まず産経ニュースにある問題のページの写真を見てほしい。
産経ニュース@Sankei_news
小学館、毒きのこを「食用」と誤記載 図鑑を回収 https://t.co/3G3ec0m5qq #小学館の図鑑NEOきのこ #ヒョウモンクロシメジ https://t.co/4qczTEs6kS
2017年10月20日 20:02
農林水産・食品産業技術振興協会「きのこの種類」によると、ヒョウモンクロシメジは
傘は初め半球形で後には開いてまんじゅう形から平らになる。表面の色は灰白色で銀ねずみ色の鱗片におおわれる。ひだは柄に上生からやや湾生し、 並び方は密で色は白色。柄は白色で表面には銀ねずみ色のささくれがある。
とあるのだが、産経新聞掲載の写真にあるキノコの柄は白色ではなく、全体的に黒っぽい。
そのため
牛研@gyukankin
この写真ヒョウモンクロシメジじゃないです https://t.co/GfLz6trgT5
2017年10月21日 07:18
ତ.Fungi.ତ@fungi0323
NEOのヒョウモンクロシメジについて: あの写真の子実体、クロゲシメジなのでは? だとしたら食用で合ってる。解説にも違和感はない。
2017年10月20日 22:13
つまりページにある写真と説明は食用の「クロゲシメジ」ではないかという指摘だが、これを紹介するだけならブログにする意味はない。
ググって調べたところ、この図鑑の問題が露見するずっと前に、きのこおしゃべりボードで「ヒョウモンクロシメジ」の話題が出ており、ヒョウモンクロシメジの類似種として3種類挙げられていた。
Tricholoma pardinum(ヒョウモンクロシメジ)
ヒダはパールイエロー~白色。柄は平滑
胞子6.7-10.3×5.0-7.5μm。Ave.8.1-8.7×5.5-6.5μm。 Q:1.1-1.8 Ave.1.35-1.47
Tricholoma bresadolanum
ヒダはパールグレイ~白色、胞子5.9-9.0×4.4-7.5μm Ave.6.6-8.0×5.1-6.6μm
Q:1.1-1.5 Ave.1.22-1.31
Tricholoma squarrulosum
ヒダはパールグレイ気味の褐色~類白色、傘中心部は濃灰褐色~殆ど黒色の棉毛状~繊維状鱗片で被われる。柄はダークグレイまたは黒色の繊維状鱗片がある。
胞子4.8-10.5 ×2.8-6.4μm Ave.5.2-8.2×3.6-5.1μm。Q:1.1-2.1 Ave.1.35-1.72
Tricholoma scalpturatum
柄は平滑
胞子3.9-6.8×2.5-4.5μm。Ave.4.9-5.6×3.2-3.8μm。Q:1.2-18 Ave.1.40-1.54
柄に鱗片があり、胞子サイズなど最も近いのはTricholoma squarrulosumではないかと思います。
これを読むと、どうやら Tricholoma squarrulosum ではないかという気さえ起きる。そして Tricholoma squarrulosum でググると「和名なし」(きのこおしゃべりボードのある「気分はきのこ」ページ)ということなのだが、参照先の 「日本産きのこ目録2016」 をみると、どうも「クロゲシメジ」(別名ササクレシメジ、オオクロゲシメジ、クロゲシメヂ、ニセクロゲシメジ)を指すらしい。なぜ「らしい」と濁したかというと、学名が Tricholoma atrosquamosum (Chevall.) Sacc. となっているせいだが、squarrulosum と astrosquamosum の違いは大きさ。そして両方の亜種ともに食用。そして
They can be confused with darker specimens of the poisonous T. pardinum, which is generally a larger mushroom and lacks the peppery aroma.
この両方ともヒョウモンクロシメジ (T. pardinum)の暗い標本と混同される恐れありか。

キノコの世界はややこしい・・・が、おそらく今回の訂正箇所は毒か食用かということではなく、「ヒョウモン」を消して「クロ」と「シメジ」の間に「ゲ」を挿入すれば済む話じゃなかろうか(ぉぃ

# 雑でスマナイ![]()
なお「ヒョウモンクロシメジ」の山梨県の中毒体験談が「きのこ中毒」にまとめられているが、後日談がなかなか興味深い。
「私の知る限り、これはまだ日本では発見されていないきのこである。欧米ではつとに毒きのことして有名でTiger Tricholomaと呼ばれている」
これには驚いた。
「だから、あなたがきのこのことをよく知らないから中毒したというわけではない」と奇妙な慰められ方をした。
欧米では有名でも、日本で自生が知られるようになったのは近年の話で、日本の毒キノコ界ではまだマイナーらしい。
ちなみに「きのこ(概要、全般) - 日本中毒情報センタ―」によると、
1.きのこは種類が多い上、同種でも地域や季節により外観が異なることもあり、 その鑑定は容易ではない。
2.複数の種類のきのこを食べている場合もあるため、鑑定のため提出されたきのこが中毒の原因となったきのこであるとは限らない。
3.潜伏期の長いものもあり、きのこ中毒との診断さえ難しい場合もある。 実際、細菌性食中毒と思われた症例で、後にきのこ中毒と判明した例もある。
4.本来食べられるきのこであっても、状況によっては中毒症状が出る場合がある
野生キノコを食べてみようという場合には、キノコの見分け方はもちろんのこと、吐き気や腹痛などの具体的症状が出たときの応急処置くらいは知っておくべき(体験談の人も「とにかく胃を洗わなければならない」と咄嗟の判断をしているし)。
それができないなら、キノコは見て楽しむものにとどめておくべきではないかと、ありきたりな結論でスマン。




