（アルジャジーラより）チュニジアで起こった反政府暴動が近隣のイスラム諸国（ヨルダン、スーダン、イエメン）に飛び火していますが、25日に鎮圧部隊によりデモ参加者が死亡したエジプトでは、日本時間28日午前中よりエジプト政府が「国全体を完全にインターネットから切り離し、国民がFacebook、Twitter、 Blackberryなどのソーシャルメディアサービスにアクセスできないようにした」と伝えられています（TechCrunch の記事、ブルームバーグの記事）。記事によると、固定電話は生きているようですが、テキストでメッセージをやりとりできる携帯電話も停止している模様です。
ギズモードの記事によると、エジプト政府のサービス遮断命令に応じたのは国内大手ISP4社(Vodafone Egypt、Link Egypt、Telecom Egypt、Etisalat Misr)で、唯一 Noor Group は接続サービスを提供しているとのこと(国営なんですかね？)
Arbor Networks Security より引用Egypt Loses the Internet | Security to the Core | Arbor Networks Securityによると、
Between 3 and 5pm EST, Egyptian traffic rapidly climbed to several Gigabits. At 5:20pm, the all Egyptian transit providers abruptly withdrew the major of Egypt’s several thousand BGP routes and traffic dropped to a handful of megabits per second.
（略）
Egypt also serves as a major terrestrial fiber optic crossing point for traffic to other countries in Africa and the Middle East. Traffic to other countries using these links through Egypt has not been impacted.
一瞬のうちにトラフィックが絶たれたことが分かります。ちなみにエジプトはアフリカ・中東諸国への光ファイバの地上中継地としての役割も果たしていますが、こちらは影響が皆無。完全に国内のみ遮断した模様です。
そのため現在エジプト国内のサイト(http://*.eg)には到達できません。
なおThe Register の記事によりますと、Vodafone Egypt は次の声明を発表していたそうです。
The mobile giant said: "All mobile operators in Egypt have been instructed to suspend services in selected areas. Under Egyptian legislation, the authorities have the right to issue such an order and we are obliged to comply with it. The Egyptian authorities will be clarifying the situation in due course."
エジプト国内のすべての携帯電話事業は、選択されたエリアでのサービスを停止するよう命令を受けている。エジプトの法律では当局は命令を出す権利があり、我々はこれを遵守するのみです。エジプト当局は追って状況を明らかにするでしょう。
それからダイヤルアップ接続ですら Twitter に接続できない件ですが、
Vodafone Egypt on Twitterによりますと
لم نقم بوقف تويتر - دي مشكلة فنيه عامة في كل مصر واحنا منتظرين الحل
26 Jan
We didn't block twitter - it's a problem all over Egypt and we are waiting for a solution.
26 Jan
「Twitterのブロックはエジプト各地の問題であり解決策を待っている」、やはりエジプトの反政府暴動という国内問題に絡む国策だったようです。
【1/30 7:40追記】エジプトのネット完全遮断：その詳細 | WIRED VISIONによると
「エジプトは、中東では、そしてアフリカでは確実に、インターネット・インフラの規模が大きい国の1つだ。衛星や光ファイバー、無線など、接続経路も多岐にわたる。数多くの大手プロバイダーだけでなく、小規模なプロバイダーも何百と存在する。エジプト経済は非常に発展しており、インターネットへの依存度が高い。政情不安になった後にネットのフィルタリングや遮断が行なわれたビルマとは、その点大きく異なる」とLabovitz氏は述べる。
そのため実際には完全遮断にいたらず、エジプト政府は証券取引所など最小限の政府サイトを生かしている模様。
THE EGYPTIAN EXCHANGEなおアルジャジーラのブログ記事「Live blog 29/1 - Egypt protests」によると、ムバラク大統領が続投宣言をした同日後刻
9:28pm According to Vodafone, cellular phone networks have started to resume functioning across Egypt's capital.
Vodafone の携帯電話ネットワークがカイロ市を中心に復旧しつつあるとのこと。ただインターネットの接続遮断がいつまで続くのかは定かではない。
【1/31 11:30更新】Vodafone Qatar が1月30日から2月3日まで全エジプトへの通話料を一時的に値下げする（99→55Dirhams/分）とアナウンスしています。またエジプトローミングを使用中の Vodafone 全ユーザーには大使館発の緊急情報がSMSを通じて提供されているとのこと。
デモ続くエジプト、携帯電話の使用が再開[2011年1月30日 1:50]
【1/31 13:50追記】エジプト（詳細） | エジプト（目次） | 国別に見る | 世界情報通信事情によると、インターネット加入者は300万人足らずで、3G携帯の商用サービス利用者が1165万人。ほとんどの利用者は3G携帯電話経由でインターネットに接続しているとみられる。なお固定電話の普及率は15%ほどで都市部に集中。そのため携帯電話が使えないと、ほとんどの人にとって連絡手段がないのがエジプトのお国柄。CNETの記事によれば、国外とのメッセージのやりとりにはアマチュア無線（しかもモールス）が使われているそう。
【2/3 10:40追記】エジプトで発掘作業をされる考古学者Twitter @yukinegyによりますと、日本時間で2月2日夕方エジプトのインターネットが復旧したそうです。ただし接続状況は断続的とのこと。
【2/4 10:30追記】時事ドットコムの記事によれば、「経済協力開発機構がエジプトで約５日間にわたりインターネットの回線が遮断されたことによる経済的損失を試算したところ９０００万ドル（約７３億円）」と発表したそうです。なお中央廣播電台新聞頻道によれば、一日あたり１８００万ドルで、エジプトの国民総生産（GDP)の3-4%に相当するとのこと。この試算に長期的な影響は含まれていないそうですが、エジプトのムバラク政権にとってインターネット鎖国は大きな代償を払う価値があったのでしょうか。
【2/7 7:30追記】スラッシュドット経由でエジプトの夜明け～新たな一頁へ｜フィフィ オフィシャルブログによると、今回のエジプトの事件の背景は「アメリカが作った･･･親米政権にウンザリなんです」とのこと。民主化運動とは違うこと。
アメリカのパワーバランスももう崩れてきているわけで、その証拠にいまアラブの火薬庫から次々に噴煙が上がっているにもかかわらずそれを消火できずにいる。わたしはまさに世界地図が描き変えられる瞬間を目にしているようで身震いの連続なわけだが。