<キタムラ>屈指のカメラチェーンが仕掛ける「人間力EC」のユニークさ | Eコマースに関する情報

<キタムラ>屈指のカメラチェーンが仕掛ける「人間力EC」のユニークさ

インターネット上(EC)でも実店舗でも分け隔てなく買物ができる「オムニチャネル」化への動きが加速するなか、“人間力EC”というキーワードを掲げ、他社にはないユニークな戦略で注目を集めているのが大手カメラチェーンの株式会社キタムラだ。全国の店舗を支えるインフラとして、「ネットで注文、店舗で受け取る」形での送客に成果をあげている。同社EC事業部長の逸見光次郎執行役員と同部の柳沢啓営業部長に話を聞いた。

EC子会社ピクチャリングオンラインを統合し事業部発足


キタムラEC事業部の逸見執行役員(右)と柳沢部長

 キタムラは昭和9年に高知市で創業し、今年80周年を迎えた老舗企業。カメラや機材の販売、写真プリントを行う「カメラのキタムラ」を全国に887店舗を展開するほか、スマートフォン(スマホ)の販売や米アップル社製品の修理を行う正規サービスプロバイダも運営する。

 また、子ども向けの写真館「スタジオマリオ」の382店舗を合わせると、全国に約1300の実店舗を持つ日本屈指の大手チェーンだ。

 同社のEC事業は、子会社のピクチャリングオンラインが2004年に「キタムラネットショップ」を開始したことに始まる。

 12年には子会社を統合してキタムラのEC事業部が発足。デジカメや家電など、商品分野ごとに分かれていたECサイトも一本化を図った。

 現在、自社が運営するECサイトに加え、楽天市場やアマゾン、Yahoo!ショッピングといったモールにもEC店を出店する。

EC事業部の最終目標は実店舗を支援すること

1000を超える店舗数を生かし、ネットで注文した商品の店舗受け取りを積極的にアピールしている

 新たに発足したEC事業部は、新横浜駅前のキタムラ本社内と、旧ピクチャリングオンラインが本社を置いた四国・高松にあるキタムラ西日本物流センターの2カ所に拠点を持つ。

 同事業部は、ECを運営して売上を上げることだけにとどまらず、その最終目標を実店舗の支援に置いている点が大きな特徴だ。オムニチャネル戦略でも、EC(オンライン)から実店舗(オフライン)へ相互集客する「O2O=Online 2 Offline(オーツーオー)」の取り組みを最重要視している。

 そのため、ECに携わる社員であっても、大半が一度は店舗での勤務を経験しており、実店舗で勤務する社員がEC事業部に移ってくるケースも多いのだという。

 同社ECで商品を購入したユーザは、一般的な形態である「ネットで注文→宅配で受け取り」という形はもちろん選べるが、「ネットで注文→キタムラ店舗で受け取り」という形を選択するケースがもっとも多い。

 それは数字にも現れている。2013年度の同社EC事業の売上規模は435億円だったが、このうち約66%にあたる289億円が店舗受け取りによるもので、14年度にはこれが70%にまで上昇する見込みとなっている。

ネットと実店舗の販売価格一本化に成功

店舗受け取りでの売上は年々増えている(キタムラの2015年3月期 第2四半期累計期間説明会資料=11月19日発表より)

 EC事業部を統括する逸見執行役員は「キタムラには、EC店と実店舗が売上を競うようなことはない。また、お客さまが店頭で商品受け取る際も、ネット価格と店頭価格のどちらか安い方を適用されるようになっている」と話す。

 一部の家電店などで見られるように、実店頭とECサイトの価格がまったく異なるため、顧客が店頭で価格交渉をしなければならない、というようなことがキタムラにはない。ECも実店舗も同じバイヤー(仕入担当者)が価格を管理しているためだ。

 たとえ「価格コム」の上位に食い込ませるような挑戦的な値付けを行った場合も、それはそのまま店頭にも適用される。同社店頭で展示されているカメラなどの値札は、日々変化するため何重にもなって分厚い。

 ユーザにとっては、価格面での心配がなくなるだけでなく、カメラ操作などの疑問を、その場で専門家である店員に聞くことができるのも店頭受け取りのメリットとなる。EC注文であってもカメラ専門店のサービスが受けられるわけだ。

 キタムラ側にとっても、来店時にカメラバッグなどの関連商品や写真プリントなどを薦めることができるため、店舗の売上向上につなげられる。

 これは、全国に900店近いカメラ店を持つキタムラならではの取り組みといえるだろう。EC利用者の近隣に実店舗があるケースが多い。

 EC事業部の柳沢啓営業部長は、「07年ごろはEC店と実店舗のシステムも異なっていて連携が取りづらい状況で、店頭受取の比率は5%ほどだった。自分自身バイヤーをしていた経験から、どうしたらECと実店舗が連携できるかを考え抜いた」と明かす。

「店頭注文→店頭受取」という“第三のEC”も

 店頭での質の高い接客や対応力によってファン化を図る、そんなオムニチャンネル戦略について、キタムラでは実店舗による「人間力EC」と呼んでいる。

 その象徴的な存在が、実店舗の店員が持つタブレット端末による「店頭注文→店頭受取」という“第三のEC”の流れだ。このタブレットを通じ、カメラや関連用品はもちろん、全国の店舗で在庫している中古カメラもその場で探して発注し、後日店頭で受け取れる仕組みとしている。

 たとえば、店頭に在庫がない一眼デジタルカメラの新製品を受け付けた場合、店員が持つタブレット画面には、液晶保護フィルムやカメラバッグなどの関連商品の一覧が表示されるため、店員はそれらを薦めることができる。

 また、中古の買い取り価格もすぐに調べることを可能としており、買い替え需要の場合は、中古品の買い取りにもつなげることができるわけだ。

実店舗への売上配分にも配慮した仕組みに


キタムラのWebサイト

 社内的には店舗それぞれに売上目標が設定されているため、その“利益配分”にも工夫が行われている。

 「中古は買い取り店により多くの利益分配を行い、受取指定店は少ないながらも利益が入る事と、受け取りに来たお客さまがリピータになるメリットがある。そもそも店受取分の売上は全て店舗に付く。ECの取り扱い分に関して売上がつかないと、店舗スタッフはECを活用したがらなくなる」と逸見執行役員は話す。

 ECのチャネル(流通経路)と店舗のチャネルを統合するには、こうした配慮が必要となる。実店舗側に“ECは店舗の顧客を奪うだけ”という考えを持たれないような社内体制にしていかなければ、オムニチャネル化は難しいのだ。

 EC業界ではオムニチャネルの成功事例と見られているキタムラだが、課題はある。特に利益率の高い写真プリントの分野をいかにEC化し、伸ばしていくかに注力している。

 現在、写真プリントはスマホのアプリを通じて注文すると店頭価格より安価であり、かついつでも注文可能なため、利用者は増えつつある。これをチャンスと捉え、「写真のオムニチャネル化」をどう実現していくかを模索している最中だという。

 来年(2015年)1月29日(木)の12時15分からは「イーコマースEXPO 2015 東京」(東京ビッグサイト)の会場で、「オムニチャネルでECの役割が変わる~カメラのキタムラECと店舗の成長事例」と題して逸見執行役員が講演を予定 している。同社のオムニチャネルについて、さらに詳しい内容が聴ける絶好のチャンスとなりそうだ。



http://itnp.net/story/1077