泊まっているシャレーの持ち主はチーズ熟成工場の社長さん。
PACCARDという会社名です。
お隣に工場があります。工場といっても木造シャレーなんですけど・・・。
週に2回見学ツアーが開催されているので、行ってきました。
最初は画像によるここのフロマージュの歴史や製造過程の説明。下知識を頭にいれてから実際にカーヴに眠っているフロマージュを見学します。
PACCARDはフロマージュを製造しているわけではなく、ファームで製造されたものを仕入れてアフィナージュ(熟成)し、それを販売できる商品にし、専門店に卸している会社です。
40℃以下の熱でゆっくりチーズのもとになるカードを作り、それを手作業で固めて形になったものが運ばれてきます。それをここの初代経営者の技術経験などをもとに、独自のノウハウで熟成するわけです。PACCARDの主力商品はルブロッションというカマンベールよりも中身がトロっとした感じのもの。
12℃のカーヴに常時湿気を与えるためにミストで充満し、毎日2回づつフロマージュをひっくりかえして行きます。そのときにフロマージュの状態を見て、保存する高さを調節するんだそうです。最初から最後まですべて人の手で作られるフロマージュ。機械化すると現在できているのと同じもの(品質が守れない)が作れないのでしないのだそうです。
卸先もフロマージュの品質管理がちゃんとできるフロマージュリー(チーズ専門店)に限っているそうで、あとはネットの直接販売のみ。カルフールなど大型消費店らも仕入れるために交渉しにくるそうですが、たとえ買値が他の店よりも高かろうと品質管理ができなければ売らないんだそうです。徹底した品質への誇りですね。お金よりも大切なものがあるって主張できるのは素晴らしいことだと思います。
お得意様はフランス国内に続き、スイス・ベルギーなど近隣国。あとは輸出です。輸出の筆頭国はカナダ・アメリカ・日本!日本から仕入れ先がツアーを組んで見学にきたこともあるそうですよ。さすがグルメの国ニッポン!!
ボーフォーという名の硬系フロマージュ(コンテに類似)
このボーフォーはひと固まりが8KG、1年、2年と寝かしたほうがより美味しくより高価になっています。
古いチーズのカーヴになると、普通に息してられません・・・臭いので。
大人は口呼吸にして鼻から息を吸わないという芸当ができますが・・・
ひととおりカーヴを見学したら、お待ちかねのデグスタシオン・試食の時間!
手前にアボンダンス14€キロ
奥にボーフォーの夏仕込み 23€キロ
ボーフォー ダルパージュ(夏季、高度1200m以上で過ごした牛の乳だけを使用するもの)
試食は白ワインと一緒に頂きました。この地方のフロマージュには軽い白ワインが合います。
フロマージュ=赤ワインという決まりはないようで、そのフローマージュによって合うワインも変わります。
ワインが飲めない人や場合には、りんごジュースと一緒に試食するといいんだそうです、りんごジュースは口の中と舌をニュートラルな状態にしてくれるらしい。
あと豆知識として、手作りフロマージュの周りの皮(カマンベールなら白い皮)は食べて弊害はないどころか、健康にとってもよいとのこと。質のよい乳酸菌が凝縮されているので、捨てるとか、ペットに食べさせているのはもったいないと言われました。(注;日本で製造されているチーズは規定上プロセスチーズなので状況は違います)
牛育成から乳搾り、フロマージュ製造、熟成まですべて手作業。フロマージュもどれがどこの家の牛で作ったかをすべて把握しているという、ほんとに職人のつくるフロマージュになっています。BIO(オーガニック)認定の申請もしようかと考えたらしいですが、申請の手続きの煩雑さ・期間の長さ・費用の高さから考えて申請はしていません。けれども製造過程をみるとBIO以上の品質であることは間違いないです。知る人が知っていればいいと、良いものはマークに頼らなくてもよい、という確固たる自信に共感を得ました。
はじめてフロマージュ工場の見学をしましたが、とてもためになって勉強になりました。
熟成・発酵の厳格さが日本の発酵食(酒・醤油・味噌など)とも類似するところがあり、あらためて発酵食のよさを発見したのでした。さ、フロマージュ食べよっと!