創立の思いをお伝えいたしますね。
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鎌倉の自然の中で、遊んで育ちました。
引っ込み思案だった私が、小学校の先生に
連れていってもらった裏山で、
「わあ、江里子ちゃん、その赤い実見つけたの?
すごいね、きれいだね! みんな、見て!」と
赤い実を宝物のように掲げてくれたあの瞬間が、
今も目に焼き付いています。
口の周りを真っ赤に染めて甘いクワの実を食べたり、
泥んこになってセリ摘みをしたり。
「こんなの見つけた!」「こんなところ登れた!」と
誰もが主役になれる、輝く瞬間を、自然にたくさんもらいました。
大きくなって、ずっと親しんできた裏山の森が、
開発の危機にあることを知り、
自分自身の心の根底が失われそうな、
どうしようもない気持ちに陥りました。
多くの方々の長年の思いと努力が実り、
その森は、保全されることが決まりました。
土の香りや草花に包まれ、保全作業に参加したとき、
心の底から感じた安らかな気持は忘れられません。

生き物である人間は、土、水、野生生物など、
その生存基盤である自然を守り育てながら暮らすことが、
本来の姿なのではと思います。
その自然を守る力のおおもととなるのは、
「好き」「大切にしたい」という気持ちなのではないでしょうか。
楽しい思い出をたくさんくれた自然にお返しをしたいと、
自然を守るボランティア活動に参加し、
子どもの自然体験を、ライフワークとしてきました。
人間が形成される幼少期の自然体験は、
その子の心の核となり、
人生の価値観をかたちづくる「原体験」となる…と、
身をもって体感したためです。

子どものころ、小学校の先生が連れて行ってくれた
あの楽しい自然の中へ、自分の子、
これからの未来を担う子供たちも連れていってあげたい。
キラキラ輝く小川や青く広がる海、生き物あふれる自然の中で、
たくさんの感動や発見をさせてあげたい。
そんな思いから、てくてく鎌倉子ども自然楽校を、
創設させていただきました。
泥んこになり、びしょぬれになり、
輝く瞳でたくましく大地を駆ける子どもたち。
自然の中でのびのびと遊びながら、
四季の自然の細やかな表情、野生の命を感じ、
自分の命を守る術、
転んでも立ち上がり、笑って前を向く「生きる力」を、
自分の力でつかみとっていっていると感じます。
自然の中での、子どもたちのいきいきとした表情は、
人にとっての自然の意味を、私たちに教えてくれます。
これからの未来を担う子どもたちには、
自然の中で五感をいっぱいに使い、発見し、感動し、
笑ったり泣いたりしながら、自然や仲間とともに、
たくましく生きる力をはぐくんでいってほしいと思います。
このてくてく鎌倉子ども自然楽校が、子どもたちにとって、
豊かな人間の根っこをつくる、
かけがえのない幼少期を輝かせる場になればと、願っています。
村田江里子
