Dearあなたへ


アンネ.フランク


その少女の名前を知ったのは、多分小学校4〜5年生の頃ではないかと思う


自分とそう違わない歳頃の少女がドイツ軍のナチスに追われる中、隠れ家で日記を綴っていたと。

けれど隠れ家が見つかり家族と共にユダヤ人収容所に送られ、そこでの過酷な強制労働と虐殺行為の中命を落としていったと


その物語を読んだ時に思った事は忘れもしない

なんでアンネは日本に逃げて来なかったんだろう

日本に逃げて来たら良かったのに

日本に逃げる事はできなかったのかな

泣きながらそう思った事を、最近思い出した


その後高校生になり日本史を授業で受け、第二次世界大戦時の世界情勢を知る事となった

アンネが迫害されながら生きていた時代、それは第二次世界大戦中であった

そしてその時日本は、日独伊三国軍事同盟を結んでいたのだと


アンネ達ユダヤ人

ユダヤ人を大量虐殺するドイツ

そのドイツと日本の連帯関係

世界が戦争をする中で置かれた、日本国家の状況


それら全てがハッキリと歴史の爪跡として

自分の中に刻まれた


無知で子供だった自分が恥ずかしくなった

そういう事だったのか

現実は


逃げて来たらいいのに

かくまえたらいいのに

そんな願い全てが、幼い子どもの考える夢物語だったのだと


10数年前に沖縄に旅行で訪れた

ドライブをしながら観光地を巡り

南国の明るい太陽の下、ひめゆりの塔に赴いた


映画やドラマで観ていたひめゆり部隊

その悲劇的な状況を覚悟はして資料館に入ってはみたが、想像以上に悲惨な現実がそこには展示されていた

そしてまた沖縄が戦場になった悲劇がどこにあったのか

やっとわかった


沖縄の戦いは地上戦だったのだ


本土決戦を防ぎ、引き延ばす為に

女学生を含む一般民間人までが

上陸するアメリカの軍人と戦ったのだ


今のウクライナも

攻め入るロシア軍相手に

一般の男性市民が戦闘防衛状態を続け

まさに市街戦、地上戦である


去年コロナ禍の中、自粛解除がされた時期に

用事方々広島に行って来た


終戦記念日に、毎年テレビで見るだけだった

広島の慰霊碑と原爆ドームを訪れた


初夏の日差しの中、その原爆ドームは

当時のまま

時間が止まった状態で建っていた


すぐそばの広島平和記念資料館には

原爆投下時の被爆状況が

写真やパネルに残され

焼け残ったボロボロの衣類や靴や手紙が

ガラスケースに展示されていた


数々のむごい痛みを残した展示物は

静かに戦争の悲惨さを訴えてきた

その静かな沈黙の中

大きなモノクロの映像が目に入った


そこに映し出されていたのは、ドーム周辺の商店街の風景だった

原爆が投下される前までの、賑わいを見せる広島の街並みだった

人々は笑い合い

路面電車が走り

穏やかな日常生活がそこにはあった


その風景がガラリと変わった

原子爆弾が投下されたその一瞬で

同じ場所は瓦礫の山と化し

人々が泣き叫びうごめく地獄となっていた


さっきまであった屋号が並ぶ商店街

人々が楽しげに行き交う姿

学生服姿のお兄さん

着物姿のご夫婦

子供を抱っこするお母さん


その風景が一瞬で消えた


日常生活が一瞬で消える

全てがことごとく破壊され

跡形もなくなる


それが戦争なんだ


今それと全く同じ光景が

炸裂する爆弾の音と共に

連日テレビ画面に映っている


戦車が踏み込み

銃が乱射され

建物が崩れ落ち

人々は地下シェルターに逃げ込む


まさに地上戦だ


ほんの2週間前までは

ウクライナの人々は

穏やかな生活を送っていたというのに


資産凍結、経済制裁、日本政府のウクライナ避難民の受け入れ承認

ウクライナに武力参加以外で、日本政府がどんな援護射撃をするのか

ニュースを見る度に、固唾を飲んで聞き入っている


今この状況下で、私達一般国民ができる事とは


避難民として逃れて来るウクライナの人達への

できる限りの生活の援護支援だろう


それと共に忘れてはいけないのが

かつてアンネ達がされたような

民族敵視、迫害をしない

そういう事ではないかと思う


日本国内に住むロシア人に対する

誹謗中傷、いじめ、排除迫害行為等

ロシア人の精神と命を脅かすような事が

現実に起こっているというニュースを聞いて愕然とした


ロシア人が国籍を偽り

身を隠して暮らさざるを得ない

不穏な空気が流れ始めているという


そんな卑劣で酷い事を、私達日本人がしているなんてと信じられず

ニュースを聞いて悲しくなった


戦争はロシア政府や国家がしている事であり

日本に住む一般市民のロシアの人達が

殺戮行為をしている訳ではないのだから


今国内在住の、そしてこれから避難して来るウクライナの人達同様に

在日ロシアの人達も今まで同様

日本で安心して暮らして欲しい


ロシア人という事だけで敵視される事なく

日本人に囲まれて平常な日常を過ごせるようにと


怒りの鉾先を在日ロシア人に向けるのは

履き違えた憎悪でしかないと思う


戦争は政治指導者が決行させている事であって

国民の意志とは別の軍事行為だと思うから


せめて日本国内だけでも

日本人

ウクライナ人

ロシア人

みんなが助け合って生きていきたい

生きていけたらと


戦争終結と共にただただ願うばかりだ