こちらの本を読んだ感想です。

 

 

「林眞須美死刑囚の長男」が書いた本です。

 

2009年に林眞須美被告の死刑判決が確定したものの、未だ刑は執行されず、冤罪ではないかとの見方もあるようです。

 

 

1998年7月25日に発生した「和歌山毒物混入カレー事件」

 

この地域は、何十匹もの犬が毒殺されたとか、

 

畑に毒を撒かれたとか、物騒な事件が多かったそうです💦

 

 

両親が逮捕された後、小5年から高3まで養護施設で暮らし、

 

高校卒業後、就職して現在は一人暮らしをしているそうです。

 

 

児童養護施設では女性職員から性的虐待を受けたり、

 

高校ではバスケの試合中「死刑囚の子ども!」と言われたり、

 

高3の時に父親が刑務所を出所して注目を集めたせいで、

 

学校から「卒業はさせてやるから、もう来なくていい」と言われたり

 

長い間、散々つらい思いをしてきたそうです。。

 

家は放火され、施設ではいじめられ、学校は来なくていいと言われ、よく非行に走らなかったなと思いました…💦

 

 

高校卒業後、アルバイトをしてアパートを借りて、車の免許も取り、

 

真面目に働きつつも「林眞須美の息子」と知れるとクビになり、

 

また新たな職場を見つけるという過酷な日々。。

 

 

結婚寸前までいった相手もいたけれど、

 

「大事な娘を死刑囚の息子にやれるか!」と言われたそうです。。

 

 

「犯罪者の家族」がどれほど肩身の狭い思いをして生きているか

 

ということがよく分かり、胸が痛むと同時に、

 

「どんなに深い業を背負っていても自分次第で人生は変えられる」

 

というのは本当だなと思いました。。

 

 

保険金詐欺で逮捕され、刑務所に入っていた父親が

 

「受刑者の90%が想像もできないくらい悲しい生い立ちだ」

 

と言っていたそうですが、父親自身も不幸な少年期だったようです。

 

 

終戦の年に生まれ、父親は戦争に行き、母親には捨てられ、

 

生活保護を受けていた伯母に育てられたという著者の父。

 

戦争から戻ってきた父親は暴力団の一員となり、刑務所にも入っていたそうです💦

 

 

ヒ素を飲んで、20日間意識不明になり、生死の境をさまようほど

 

「自分の体と引き換えにしても豊かな生活が欲しかった」そうで、

 

億単位の保険金を受け取るために、高額の掛け金を払い、

 

「体を張って」保険金詐欺を繰り返していたと書いてありました。。

 

 

「父のお金に対する執念は、貧困に対する恐怖心ではないか」

 

という言葉から、どのくらい悲しい体験をしたのかと想像しました。

 

 

「根っからの犯罪者はいない」というのが父の持論だそうですが、、

 

家系学の視点で見ると、この祖父と父を持つ著者が

 

犯罪者にならずに、まっとうに生きていることに感心しました。
 

家族の「負の連鎖」を断ち切って、浄化する役割を持って生まれてきたのかな?

 

 

著者の父は、見た目は強面でも、人懐っこく、話好きだったそうで、

 

逮捕前は、記者を寝泊まりさせて一緒に食事をしていたそうです。

 

 

そして知っていることをペラペラ話しているうちに、

 

自分がやった保険金詐欺のことまで話してしまったそうです…💦

 

「悪いこと」だと思っていないので、自慢話として話してしまったそうです。。

 


妊娠した眞須美被告と再婚するため、妊娠9ヶ月の前妻と別れたり

 

暴力団ともかかわりを持っていたという非人道的な父親ですが、

 

今も妻の無実を信じ、裏切らない「良き夫」でもあるようです。。

 

 

16歳で父親と決別し、自転車に乗って大阪に行く途中、

 

深夜に農家でもらったおにぎりが「涙が出るほどうまかった」

 

とも書いてあり、辛く貧しい子ども時代を過ごした著者の父が、

 

人の優しさと愛情を得ることができて良かった!と思いました。

 

 

この状況で強盗殺人に至る人もいることを思うと、

 

「人は出会いや環境によって、善人にもなれば悪人にもなる」

 

という言葉の重みを感じました。。

 

 

この「カレー事件」は今から20年以上前のことになりますが、

 

当時、保険金詐欺に協力した医者たちの罪は不問に付されたり、

 

「妻にヒ素を飲まされたと書いたら、保険金詐欺は見逃してやる」

 

と言われたり、共犯者が被害者に仕立て上げられたり、、

 

戦前?と思うような様々な裏工作が行われていたようです。。

 

 

母親が保険金詐欺をしたことを泣きながら謝罪した映像は、

 

カレー事件の犯行を謝罪しているかのように編集して放送され、

 

テレビや新聞は本当のことを伝えているだろうと思ったら大間違い

 

ということがよく分かりました。。

 

 

「犯罪者の家族」が、知り合いのいない土地に逃れて暮らしても

 

どこまでも追いかけてくる記者。。

 

 

「犯罪者の息子」として、迷い、苦しみ、理不尽と向き合いながら、

 

それでも逃げずに生きていくことに決めた著者。

 

取材を受けるのは、他の姉妹を守るためでもあるそうです。

 

でも残念ながら、姉(長女)は今年娘を連れて自殺してしまったとか。。

 

 

「カレー事件」の犯人の血縁だという理由で、

 

配偶者から離婚したいといわれた親戚もいたそうです。。

 

 

「犯罪者やその家族をさげすむ意識が新たな不幸を生み出す」

 

「自分は善人(悪くない)と思い上がっているような偽善者が

 

新たな犯罪者を生み出す」のだと思いました。。

 

 

「犯罪者の数だけ、苦しんで生きている家族がいる」ということが

 

この本を読んでよく分かりました。。

 

 

「本人→息子→彼女→その家族、友人」と次々に苦しむ人を

 

増やさないためにも、事件や事故を起こしてはいけないし、

 

憎しみや恨みを買うことのないようにしなければ…と思いました。

 

 

犯罪を犯さなければ「善人」だと思っていたけれど、

 

それは間違いだったと痛感しました。。

 

「自分は悪くない(正しい)」と思うのは思い上がりなんですね。。

 

人身受け難し

 

「無財の七施」

 

画像はこちらからお借りしました。