こちらの本を読んだ感想です。

 

 

 

こちらで紹介した、元タカラジェンヌ、東小雪さんの著書です。

 

裕福な家庭に生まれ、幼い頃からバレエやピアノを習い、

 

一人娘として、大事に育てられたように見えて、

 

実は「実父から性虐待を受けていた」という衝撃の告白本です。

 

 

小2から不登校になり、卒業するまで小学校には通えず、

 

拒食症、難聴、視力低下など、様々な体調不良が表れるも

 

忌まわしい記憶を封印しているため、原因は不明とされ続け、、

 

 

高2の時、自分がレズビアンであることに気づいたけれど、

 

「同性愛はダメだから、隠さなくてはいけない」

 

「これは誰にも言ってはいけないことなんだ」

 

と自分に言い聞かせ、これも封印することに。。

 

 

宝塚歌劇に憧れ、宝塚音楽学校に合格するため、

 

毎週末、金沢から宝塚の受験スクールに通った結果、

 

高校を卒業した2003年の春、91期生として合格。

 

 

「すみれ寮」の過酷な生活について、詳しく書いてありましたが、

 

満足に食事もとれず、常に睡眠不足、お風呂にも入れず

 

生理も止まるなど、「嫌がらせ」がすごかったようです。。

 

 

人は不条理な環境に長くいると、自分たちを苦しめている

 

環境のおかしさを「おかしい」と思わなくなるらしい。

 

この「指導」という名の暴力を、「宝塚ならではの厳しさ」として

 

私は疑いもせずに受け入れていた。

 

と書いてありました。。

 

 

予科生時代、そんな環境で「被害者」として過ごした著者ですが、

 
翌年、本科生になると、今度は自分が「加害者」となり、
 
自分たちが「された」のと同じことを予科生に「した」そうです。。
 
 
相手はこちらに絶対服従で、何を言っても泣きながらついてくる。
 
相手を意のままに操れることの快感や全能感に私は浸っていた。
 

と、虐待をする側の心理が書かれていました。

 

 

著者は、今も予科生時代の悪夢を見ることがあるそうですが、

 

「被害者」としての体験は忘れられなくても、自分が予科生にした

 

「加害者としての心の痛みや罪悪感は、時々思い出される程度」

 

なのだそうです。。

 

 

加害者は被害者の痛みが分からず、

 

時には加害自体を「なかったこと」にしてしまう。

 

しかし被害者の痛みはいつまでも残る。長期間苦しむことになる。

 

 

泣きながら謝る予科生を見るとき、私は思考停止状態で

 

罪悪感を覚えず、「支配する快楽」に酔っていた。

 

 

この2つの矛盾する「被害者と加害者」の感じ方について、

 

冷静に分析して語っているところがスゴイなと思いました。。

 

 

すみれ寮で行われていた「暴力」は「伝統」という名で浄化される。

 

「笑い話」や「苦労話」に変換され、罪悪感は薄れ、

 

「これは暴力なんだ」という認識すらできなくなってしまう。

 

と書いてありました。

 

 

「被害者」が「加害者」になり、「やられたことはやってもいい」という

 

考えになり、虐待が繰り返される仕組みがよくわかりました。。

 

 

2006年に宝塚を退団し、実家に戻った著者ですが、

 

リストカットや自殺未遂、精神病院に入院したりしていたそうです。

 

 

父親がガンで亡くなった後、LGBTの活動に参加するようになり、

 

その流れで岩本令子さんに出会い、カウンセリングを受け、

 

実父からの性虐待の記憶を取り戻し、癒していったそうです。

 

性虐待は暴力の中の一つでしかなく、「どんな体験をしたか」よりもそれを本人が「どう受け止めたか」が問題だと言ってました。

 

 

性虐待は、昔から多くの家庭で繰り返されているらしく、

 

著者の場合、中2で生理が始まるまで続いたそうです。。

 

 

幼稚園の頃からお風呂場で行われている娘への性虐待を

 

母も同居していた祖母も気づいていたはずなのに、何も言わず、

 

「何事もなかった」ように、家族で夕飯を食べていたそうです。。

 

怖すぎる💦

 

 

カウンセリングに同席してもらい、母親にこの話をしたところ、

 

その場では認めたものの、「お父さんは性虐待なんかしていない。

 

私は知らなかった。」と今も否定し続けているそうです。。

 

 

「誰にも言えない。隠さなくてはいけないこと」と思い、

 

何よりも自分自身が「なかったこと」にしたかったという著者。

 

 

 

1998年の調査では、18歳未満の女の子の39%、男の子の10%が

 

何らかの性的被害を受けているという調査結果があるそうです。

 

 

こちらは実の兄による性被害に遭った女性が描いた漫画です。

 

親に虐待された子どもの体験談が書かれた本。

 

 

学校内でのいじめよりも、家庭内で起きている虐待は

 

外には気づかれにくく、否認されたり、秘密にされるもの。。

 

 

職場のセクハラやパワハラと同じで、

 

「なかったこと」にしないためには、事実に向き合い、

 

世間に公表するしかないのかもしれないと思いました。。

 

 

「悩み苦しむ中で得られたこと、自分の経験から学んだことを

 

他の人に伝えることで、それらの経験は大きな意味と価値を持ち

 

あなたの人生を輝かせてくれるのです」

 

とこの本に書いてあったように、

 

性被害から立ち直るきっかけを与えてくれるのは、

 

同じ苦しみを味わった人の言葉や経験だと思うので、

 

この本は、これから出会う人にとても役立つと思いました。

 

 

傷ついたすべての人が癒されますように。。