タイナニアとの狩りは、そこそこスムーズに続いた。
俺がヒールを飛ばすからというのもあるが、彼女のセンスがそれなりにあったからというのが一番大きい。
俺が憑依している盾はウッドシールドだが、使い慣れているとはいえシールドの曲面を使ってバウの牙を滑らせてかわす戦法は相当センスが無ければとっさにはできない。
ウッドシールドでソードストッパー並みの使い方をする奴がいるとはな。
今までいろんな奴の狩りを見てきたが、かなり珍しいタイプであることは確かだった。
ただ・・・・・・俺が止めないとすぐに複数のバウに突っ込んでしまうのが玉に瑕か。
「・・・・・・次ぃっ!」
「待て、草の向こうにもう一匹いる。離れるまで待て。」
目線で構えたレプリカソードを腰の高さまで降ろし、乱れた息を整える。その間に俺がウッドシールドからヒールする。
「・・・・・・なかなかいい動きをするようになったじゃないか。」
「そうですか?」
「あとは切り返しの際に、手首の返しが遅くて負担がかかる。その癖を直せば無駄が無くなる。」
俺の言葉を受けて、レプリカソードを持った右手に視線を移し、何度か返しながら感覚を確かめている。その瞳は真剣で、やや紅に染まりかけている。
獲物を貪欲に求める瞳・・・・・・本来なら俺が持たなくてはならないもの・・・・・・。
ウッドシールドから、その姿にそぐわない瞳の光をそっと盗み見た。恐らく、軽い羨望を込めて。
と。
その瞳がふと、木陰の向こうに注がれた。その視線の先にあるものは・・・・・・誰かが拾い損ねた「肉」。
あれだけ狩って、まだ一つしか拾えていない転職のための必須アイテム。
無意識のうちにか、タイタニアの歩みはその肉へと向いていた。
「・・・・・・待て、そっちはまだっ・・・・・・!」
先程消えていった冒険者が残したバウの群れが・・・・・・!
ピュキーン。
ピュキーンピュキーンピュキーン。
未だ消え残る獰猛な闘争本能は、気力を使い果たしたタイタニアをあっさり捕らえていた。
当のタイタニアは、まだその敵意に気づいてもいない。
「バカ!!行くな!!!」
はっと立ち止まったタイタニアの眼前には、既に血を求める唸り声が帯をなしていた。