先日の『女騎手』と一緒に借りたのが、
『 W (ダブル)』 (本城雅人 著)

2人の若き調教師がいる。その一人、大企業の次男坊・内陽介は調教師試験合格後、単身アメリカに渡り、
日本で旋風を巻き起こしたサンデーサイレンスの孫・クラウディーサンデーが所属するウーゴ・マルティネス
厩舎で研鑽を積む。
そんなとき、誰もいないはずの厩舎に立ち寄った内は、そこで侵入者と遭遇、名誉の負傷を負って
クラウディ-をはじめとする馬たちを守る。しかし、名誉の負傷は思いのほか重症で、内の右足の自由を
奪う。
一方、内と同期の若き調教師、古矢琢哉は、長年調教助手としてお世話になった橋元調教師について、
所属馬・シュンセツのケンタッキーダービー挑戦に同行していた。シュンセツの主戦騎手・竜見秀行と、
その後輩でレース中の斜行で騎乗停止をくらったところを「ヒマだったら手伝いにこい」と橋元に誘われた
大迫海斗も調教助手として同行していた。
シュンセツの調教相手は、ウーゴ・マルティネス厩舎からクアキという馬。クラウディーサンデーと同馬主でも
あるクアキの鞍上におさまった海斗は、その柔らかい乗り心地に、
「さすがクラウディーサンデーの厩舎だけある」と変に感心する。
ケンタッキーダービーは、大本命・クラウディーサンデーに、なんとシュンセツが競りかけるマッチレースの
様相を呈したが、残り1ハロンで地力の違いが出てクラウディ-が見事人気に応え快勝。シュンセツは
ゴール前で2頭にかわされ4着。それでも鞍上・竜見のファインプレーから見せ場充分なレースだっただけに、
大健闘したといえた。しかし、みんなでお疲れ会を開いたその夜、竜見はホテルに戻らず、翌朝遺体で発見
された…。
!!ご注意!!
【本作はミステリー作品で、以下の記述には若干ネタばれも含まれます】
作者の本城雅人はスポーツ新聞社で野球担当や競馬雑誌のデスクを経て作家に。
『ノーバディノウズ』で2010年サムライジャパン野球文学賞大賞に、さらには同作品で松本清張賞候補作
にもノミネートされた期待の実力派だそうで。
前述のクラウディ-サンデーは大方の予想通り見事に三冠を達成する。しかし、その年のブリーダーズカップ
で、2着に敗れる。勝ったのはほかでもない、ステイブルメイトのクアキ。
実はキーポイントはこのクアキという馬だったんですね。
そして、これに関わる馬喰・小津の存在も重要なポイントでした。
なるほど、タイトルのW(ダブル)とはそういう意味であったか、というオチですね。
実際の競馬、とりわけ様々なチェック、セキュリティが強化されている現代競馬にあって、こうした
血統の偽装~しかも日本産馬を南米産として出走までするトリックが可能か、というとちょっとどう
なんだろう、って思います。
ただ、この偽装された日本産馬クアキが米三冠馬をブリーダーズカップで下して勝利する、ってのは、
物語の中とはいえ、なんとなくうれしいものですね(笑)しかも、父馬は日本のGⅠ馬ではあるものの、
国内サイアーランキングでも低迷した種牡馬(架空の馬)。
確かに、競馬というものは「ブラッド・スポーツ」と言われるように血統で左右されることが大きい。
でも、ときどきそうした規定路線とは違う突然変異の強い馬が出てくるのはアメリカでも我が国でも同じですね。
オグリキャップしかり、ミホノブルボンしかり(ちと違うか!?)、アメリカでも前述のサンデーサイレンスのほか、
映画化されたシービスケットもそうですね。だから競馬は面白い♪♪と思います。
ラストは、一応はハッピーエンドになるのかな。内陽介は全てを公表しなかったのだから、勘当は解いて
もらえたんでは……やっぱり香乃さんと♡♡♡ってことかなぁ……とかいろいろ妄想するところですが、
そんな妄想を断ち切るように、素敵な言葉で締めています。
“A bad day at the track is better than a good day at the office”
Red Smith
~競馬場で過ごす悪い一日は、他のどんな場所で過ごす良い一日よりいい~
ときどき人生で一番悪い日と思うことも……(^_^:)