「沖で待つ」は先日の記事(袋小路の男)でも触れた、絲山秋子女史の作品。なんといっても、
| 第134回芥川賞受賞作 |
でありますです。
文藝春秋にも掲載されていましたが、先日単行本が発売されまして、早速読んでみました。

冒頭は、「私」と「太っちゃん」主人公2人の、日常よくありがちなやりとりからはじまる。
が、その段落の最後には・・・
「太っちゃんは3ヶ月前に死んでいるのです」
地方出身で東京の大学を出て住宅設備機器メーカーに就職した「私」に、「福岡配属の及川さん?」
と話し掛けてきた牧原太=太っちゃん。以来、二人は性別は違えども、友情という深い絆で結ばれる。
その後、二人は福岡から転勤し、離れ離れになるが、あるとき東京で再開し、酒を飲みながら太っちゃんが
| 「おまえさ、秘密ってある?」 |
と問い掛ける。そこで二人は、もしどちらかが死んだら、生き残った方は死んだ方のパソコンのHDDを
破壊しようと約束する。
しばらくのうちに、太っちゃんの訃報が届き、「私」は約束を守ろうと……
まずこのお話で大前提であり、大きなテーマでもあることが、
| 男女間で成立する友情 |
先日記事にした「袋小路の男」でもそうだったのだが、女性、特に20代から30代にかけての
独身OLの心理を細かな心理描写と環境設定で表現しています。
前にも書いたけど、その年代の女性には非常に受けそうな文だなぁ、と感じました。
すごく重々しいところがなく、さらにはこの作品もそれほど長くないので、非常に読みやすいです。
心の声の表現としても、個人的に非常にビンゴな感じ。若すぎず、年寄りすぎず。
正直なところ、芥川賞受賞作っていうから、どんな長編大作なのかとおもってたんですが。
最後のほうで出てくる会話の中で、
| 「同期って不思議だよね」 |
| 「え」 |
| 「いつ会っても楽しいじゃん」 |
これには、不覚にもちょいと感動を覚えました。「うんうん、その通り、その通り(_ _(--(_ _(-- 」
みたいな感じ。
アタクシにも同期入社の人間が何人かいるのですが、まさにこの「私」と「太っちゃん」のような
関係ですね。気の置けない間柄、というか。
だから、アタクシのような30代中間管理職、ちょっと人間関係に疲れが見えてる人(笑)にも
オススメですね、この本。
なお、単行本には本作品のほか、「勤労感謝の日」も収録。