最初はただの気まぐれだったのだ
気まぐれでとある少年の”願い”をかなえてしまった
そのただの気まぐれが一つの世界を作り出した
それはそんな世界のお話
何もない青く透明な世界にポツンと一つの夢が転がり落ちました
夢は何もない空間をふわふわと漂っていました
ここはどこなんだろう なぜ自分はここにいるんだろう そもそも自分とはなんなのだろう
そんな事を考えながらふわふわと長い間漂っていました
ある日 夢は気づいてしまいました
ずっと側にいてくれた何かが足りない事を
夢は寂しいに気がついてしまいました
そして夢は泣き始めました
みるみる涙は溢れ大きな大きな水たまりになりました
それでも夢は泣き続けました
水たまりはやがて湖にそして海となりました
それでも夢は泣きやみませんでした
胸にぽっかりと開いていた穴
いままで忘れていたそれに気づけなかった自分に腹が立って
それでも思い出せない自分が悔しくて
体が沈んでもずっとずっと
涙は夢を囲むよう静かに包んでいきました
長い年月が過ぎました
そのうちに夢は大きな穴を抱えぽっかりとうつろになっていきました
そんな時 何かが空から落ちてきました
それは種でした
種はその涙の海に触れると
夢を包み込むように大きく根を伸ばしました
樹の腕の中はとても暖かでした
そのぬくもりは胸の中に空いていた穴を埋めるように夢を癒していきました
そして泣き疲れていた夢は眠りにおちました
波に揺られて樹に抱かれてゆらゆらと
まるで 胎児のように
意識が溶ける間際 夢は願いました
この時が永遠に続きますように と
眠りにおちた夢からトロリとすべての色が抜け落ちました
それは混ざり合い黒となりそして全てを包み込むような深い闇に姿を変ました
闇は夢と樹を優しく撫でるように滑り降ると水の底へと沈んでゆきました
それから暫くして樹はつぼみをつけました
それから美しい花をいくつも咲かせそして実がなりました
その実はとてもとても赤く甘い香りがしました
その熟した実の一つが地に落ちるとそれは美しい緋色の瞳を持つ女性の姿に変わりました
樹は女の頭をそっと撫でたあと眠りにつきました
女は樹の表面に手を当て目を閉じると上に手を掲げました
すると その手からまばゆいばかりの閃光があふれ出しました
女はそれに口づけました
その瞬間 光は輝く翼をもつ大きな烏になり天高く昇っていきました
それは樹の周りを大きく弧を描くように旋回し全体を暖かく照らしました
樹の周りを1000回 回ると烏は樹の頂上にとまり少しの間眠りにつきます
烏が眠りにつくと起きているものも皆眠りにつきますそれと同時に闇が水底から起き上がるのです闇は皆の寝顔をそれは優しい顔で眺めながら撫でていくのでした
烏が目を覚ますとまた闇は密かに消えて行きます
そして烏は樹の周りをゆっくりと旋回するのでした
烏が羽ばたくたびに世界樹の葉がざわめきキラキラと輝きます
その輝きがいつしか小さく半透明の羽をもった子となりました
女はその小さき子とともに樹の実を見守りました
二つ目の実が地面に落ちると それは屈強な身体を持つ大柄の男性の姿となりました
そして彼もまた女と小さき子とともに樹の実を見守りました
彼は気づきます
足場がないため 何人かの小さき子が水の中に沈んでしまってるのを
そして樹もゆらゆらと不安定に水上を漂っていることを
そこで彼は足場を作ることにしました
彼は樹の枝と葉 そして自らの血を混ぜたものを練り上げそれをどんどん樹の周りにくっつけていきました
それはやがて樹を中心とする大きな島となりました
そして皆は緩やかに日々を過ごしながら樹を見守ります
ある日 一人の小さき子が思います
あの実をかじってみるとどうなるのだろうと
そして 1つ口にしてしまいました
すると小さき子の身体はみるみる大きくなり青年の姿へとかわりました
そしてつむじ風一つ姿がみるみる溶けてしまいました
女ははその子を呼びますが存在している感覚はあるもののその姿は見えず触れられもしませんでした
その風で一つの青い実はおちてしまいました 受け止めた女の腕の中で少女の姿へと変化します
しかし 収穫が早すぎたせいで弱って今にも消えそうでした
女はなんとか救おうと力を込めます
少女に光が集まりやがて少女は全てを覆い尽くす程の大きな炎となりました…