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ご当地グルメと小さな旅

全国各地には、町おこし、活性化のために、郷土料理を発掘したソウルフードやB級グルメを開発している町が数多くあります。
そんなご当地グルメを訪ねて、街歩きの記事をアップしていきます。ご当地グルメを巡る小さな旅の記録です。

 

昭和の巨匠たちが青春を過ごした

マンガの聖地・トキワ荘通りを歩く

東京都豊島区南長崎(椎名町)駅前にある交番はトキワ壮を模したデザインになっている。

 

●サブカル聖地巡礼の嚆矢・トキワ壮跡地

 「聖地巡礼」という言葉が、いつの頃からかマンガやアニメの舞台となった町やゆかりの場所を訪ねるファンたちの間で用いられるようになりました。本来は、信仰の場所を巡ることだったはずですが、マンガやアニメなどのサブカルチャーなどの創作者を、まさに万物の創造主になぞらえて「神」と讃えたことから、そのゆかりの場所が「聖地」となり、そこを訪ね歩くことを「巡礼」と呼ぶようになったのだと思います。

 

 そんなサブカルチャーの聖地巡礼の元祖ともいえるのが、東京・豊島区南長崎(旧町名・椎名町)にかつて昭和30年代に、マンガの神様とも言われた手塚治虫をはじめ、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄ら、今日のマンガの隆盛の礎を築いた巨匠・有名漫画家たちが、若き日に住んでいたアパート・トキワ荘です。

 トキワ荘跡地モニュメント 今は出版社の敷地になっている場所に建てられている

 

トキワ荘は、昭和27年(1952)年に建てられた木像モルタル2階建てのごく平凡なアパートでしたが、翌28年に、雑誌『漫画少年』の編集者の紹介で手塚治虫が入居し、その後同誌の漫画コンクールの常連投稿者で手塚を慕っていた『忍者ハットリくん』『まんが道』などの藤子不二雄A、『ドラえもん』『パーマン』などの藤子・F・不二雄、『サイボーグ009』『仮面ライダー』『左武と市捕物控』などの石森章太郎(のちに石ノ森に改名)、『おそ松くん』『天才バカボン』などの赤塚不二夫、『星のたてごと』など日本の少女漫画家の先駆けとなった水野英子をはじめ、寺田ヒロオ、鈴木伸一、森安なおや、よこたとくおら地方出身の若い漫画家たちがいつしか移り住んでくるようになり、同世代の若手漫画家たちが集まってきて、まさに梁山泊のごとき様相を呈していました。もちろんトキワ荘時代は、若く無名であった彼らですが、トキワ荘時代にお互いを励ましあって切磋琢磨したことが、後にそれぞれ日本漫画史に残る名作・傑作を生み出す源となったのです。

 

60年代から70年代にかけてマンガは月刊誌から週刊誌の時代を迎え、第一次のマンガブームとなっていきますが、そのブームを支えたのも手塚、石森、藤子、赤塚らトキワ荘出身のメンバーでした。そして彼らの影響を受けて地方からやってきた新人漫画家たちにとっての聖地となっていったのです。その多くが、憧れの先生たちが住む豊島区や練馬区などの西武線沿線に住んだのも、トキワ荘があったからに違いありません。

 

当時、椎名町と呼ばれた町は、現在南長崎3丁目となっています。目白駅から続く目白通りが、山手通りを越えてから千川通りとに別れる二叉交差点を右に入ったあたりに、トキワ荘はありました。

 

かつて目白通り二叉商店会から南長崎ニコニコ商店街に続く通りは、鉄道の駅はなかったにも関わらず、全長500メートルも続く、生活に必要なものが何でも揃う映画館まである賑やかな町だったといいます。現在は、西武線の椎名町駅、東長崎駅の駅前商店街に比べるとやや寂しくなった印象ですが、昭和30年代の面影を残す懐かしい町並を保っています。近年この通りは「トキワ荘通り」と呼ばれるようになっています。

 

1982年にトキワ荘は老朽化のため取り壊されましたが、2010年、マンガの聖地として、地元商店会や町会と豊島区が協力して、区内南長崎花咲公園に「トキワ荘のヒーローたち」という記念碑が建てられ、米屋さんの建物を改装して「トキワ荘通りお休み処」がオープンしました。ここは、誰でも無料で利用でき、トキワ荘の住人だったマンガ家たちの単行本や雑誌を自由に読むことができるほか、2階には、トキワ荘のマンガ家たちの兄貴分的な存在だった寺田ヒロオの部屋の様子が再現展示されています。

 

商店街の「トキワ荘お休み処」に再現された、寺田ヒロオ(テラさん)の部屋。焼酎をサイダーで割ったトキワ荘特製の「チューダー」や、出前をとっていた中華料理・松葉のラーメンの丼など、リアルに再現されている。

 

藤子不二雄ら漫画家たちが通った町中華「松葉」のラーメン&チューダー

    

トキワ荘の住人たちは、この中華料理・松葉からラーメンの出前を取った。

「松葉」

住所: 東京都豊島区南長崎3-4-11

営業時間: 午前11時~午後3時、 午後4時~9時

休日: 月曜日 電話:03-3951-8394

アクセス:都営地下鉄大江戸線・落合南長崎駅から徒歩約10分、西武池袋線・椎名町南口より徒歩約12分、東長崎駅より約15分

 

同商店街では、トキワ荘のマンガ家たちが通った中華料店・松葉の黄色い看板がひときわ目立ちます。藤子・F・不二雄の『まんが道』などに、同店でラーメンを食べるシーンが描かれ、聖地巡礼をする現役マンガ家やファンたちが、必ず立ち寄るスポットになっていています。店内には藤子・F・不二雄さんが訪ねてきたときに撮影された写真が飾られています。ほかにも有名マンガ家たちの色紙がズラリと並んでいます。松葉の中華そばは、すっかり当地の名物のひとつになっているのです。

 

玉子麺に東京ラーメン独特の濃い醤油味で、素朴ながら飽きの来ない懐かしい味です。餃子もソース焼きそばも、当時のものと変わらない味に違いありません。有名マンガ家たちが食べたラーメンを同じ場所で食べているのだという感覚は、ファンならずとも思わず感激するはずです。現在は、先代の息子さんに嫁いできた山本麗華さんが、ご主人が8年ほど前に亡くなったあと、一人でこの懐かしい味を守っています。

   

 

商店街には、このほか、ゆかりの銭湯や映画館、喫茶店などの場所にモニュメントや案内板が設置され、スタンプラリーなども行われています。

 

2020年3月には、モニュメントの建つ公園内に、実物大でトキワ荘を復元し、「マンガの聖地としまミュージアム」(仮称)がオープンする予定でしたが、コロナ禍でオープンが遅れ、7月7日に開館することができました。

現在は、コロナ感染対策で、事前の予約が必要になります。

 

 

 

 

 

 

・「トキワ荘交番」

西武池袋線東長崎駅前には、漫画の巨匠たちがかつて暮らした「トキワ荘」をモチーフにした警視庁目白署東長崎駅前交番が、2019年3月「トキワ荘交番」となって開設された。駅の改築にともなって交番も建て替えすることとなり、豊島区が「トキワ荘の外観デザインを取り入れて、地域安全のシンボルに」と警視庁に要望して実現したもの。1階は交番機能のスペース、2階は警察官の休憩室。

  

 

西武池袋線東長崎駅構内にある「レオ&ライアモニュメント」。手塚治虫はトキワ荘にいた頃に描いていた『ジャングル大帝』を記念したもの。

   

東長崎の公園や地下鉄の駅などにゆかりの漫画家たちの記念の絵が飾られている。