8月16日の福井新聞に、「新幹線と観光」という論説記事が載りました。
「もてなす心を醸成したい」とサブタイトルをつけ、北陸新幹線の「県内延伸までのブランクは県民の「もてなす心を醸成する期間にすべきだろう。」と結んでいました。
このブログでも、福井の観光行政については何回か取り上げてきたのですが、全面的に同意できます。
記事では、次のように分析していました。
「おいしいものを食べ観光スポットを回るだけのありきたりの旅行では満足できないというように、観光旅行自体のニーズも変化してきた。なにげない日常の地域の魅力をづ観光客に感じてもらえるか。新たなニーズのこたえる取り組みは欠かせない。」
全くその通りで、観光旅行のニーズの変化にどのように対応するかが今後の課題になってくると思います。
特に、旅慣れてくるほど目や舌は肥えてくるので、どうしても観光施設や土産物などにはさほど魅力を感じなくなっていくものです。
せっかくなので、観光旅行のニーズの変化について考えてみたいと思います。
基本的に、観光に最も求められているのは土産話であり、これは昔から変わらないと思います。
要するに自慢話であり、いやらしいい方をすれば、いかに自己顕示欲を満たしてあげるかがポイントになります。
以前は観光地に行ったこと自体が土産話になり、写真や土産物を見せびらかすことでその欲求を満たすことができました。
ところが、多くの人が旅行に出かけるようになり、ありきたりな場所ではその欲求を満たせなくなってしまいました。
さらに、インターネットの普及で、画像や映像を眺めるだけで観光した気分になり、ネット通販で大抵の土産物は入手できるような時代になりました。
そして土産話をする場所も、ブログやFacebookといったネット空間に変わりつつあるのが今の時代です。
つまり、よほどの景色や歴史的な空間でもければありきたりな情報にしかなりえず、自己顕示欲を満たすことが難しい時代になっているわけです。
このような時代の観光に求められるのは、自分だけの経験や体験であり、現地に行かないと経験できない事柄や知りえない情報をいかに提供できるかだったりします。
ちょうど、8月18日放送の「ほこ×たて」で離島観光について取り上げていましたが、見慣れた感のある沖縄よりも新鮮に映った北海道が勝利した所以であろうと思います。
現地で触れ合う人々から受ける「もてなしの心」が重要になるのは、基本的にこうした需要の延長線上にあると思ってよいと思います。
それは、自分だけの特別の思い出であり、自分だけが知っている旅行先の魅力になり得るからで、それは当人の自尊感情を大いにくすぐってくれるからです。
逆に言えば、嫌な想いをすれば、それもネット上にUPされることになるため、観光地での対人サービスがかなり重要になってくるわけです。
観光地としてはマイナーな福井の場合、旅慣れた人が訪問することが多いと思われ、目の肥えている人が訪問するだけに粗の方が目立ってしまいかねません。
特に嫌がられるのは、無愛想・事務的・無関心、といった要素で、これは社員教育ですぐにでも改善できる分野です。
実をいうと、福井の観光地を訪れていて一番気になるのはこの部分だったりします。
以前の記事で書いたスタッフ同士の私語などはその典型なのですが、訪問客に対する基本的な配慮を欠いていると感じる時が多々あります。
県民性かとも思ったのですが、他の商業施設ではそうでもないので、おそらく社員教育の分野ではないかと思います。
商業施設の場合、客にリピーターになってもらわないといけないので自然と接客態度に表れており、大手ほどしっかりとした対人サービスが行われているように見受けます。
ところが福井の観光業界では、現場レベルでの意識がまだまだ低いと感じる場面によく遭遇してしまいます。
このままでは対人サービスを重視している他のメジャーな観光地との差は開く一方で、早めに意識改革をしていかないと完全に負け組になってしまう気がするのでした。
今回書いたのは基本的な接客マナーの問題で、「もてなしの心」にはほど遠いのですが、観光地に求められる最低限度の事柄であろうと思います。
福井新聞のいう、「一般市民のもてなしの心」も分かるのですが、まずは観光の現場からという気がします。
良い機会なので、次回は福井で経験した「もてなしの心」について書いてみたいと思います。