翌日の面接会場を何とか地図を頼りに探し当てた後、私達は、一路主人が若い頃住み込みでボランティアをしていた、ブレイジアスパーク という施設へと向かいました。
そこがその晩、私達が泊まる場所だったからです。
昔主人がここでボランティアをしていた頃、ある一人の日本人男性がいたのですが、私達が再び訪れた時には彼は日本に戻っていました。
彼には私も結婚する前に一度、この場所を訪れた時に会った事があり、よく覚えています。
それというのも、不思議なことに、彼と私の田舎が同じ所だったのです。
こんなイギリスの人知れない場所で、日本人と出会うのでさえ稀なのに、しかも同じ田舎出身の人で、それが主人の知り合いの一人だなんて、偶然にしても出来すぎた話としか言いようがありません。
この時、本当に神様は私を主人と一緒にさせたいんだ、という思いが私の心に浮かんだのを覚えています。
さて、実は主人には思惑があり、もし仕事の面接に受かった時には、住む場所が見つかるまでこの施設に住み込み、ここから仕事に出かけるというものでした。
私は、この主人の考えを面接をすることが決まってから聞かされ、ますます不安が募っていて、そんな思いを抱きながらも私は、主人と幼いヨシヨシと三人、この施設で一夜を過ごしたのです。
果たしてこの施設、以前来た時も思ったのですが、古い建物のせいかあまり良い感じがしません。
あの時は宿泊はしなかったので、それほど強烈には感じなかったのですが、この時は確かにこの場所一帯に存在する霊的なものの存在を強く感じました。
この建物の構造のせいもあるのかもしれませんが...。
主人にその事を伝えると、確かに彼が昔働いていた時にも、不思議な現象が起こっていたことや、そのような話も聞いた事があるとのことでした。
やっぱり...。
そんな事も手伝い、ますます私は束の間の住まいだとしても、この場所に越して来るという主人の考えには、どうしても同意できないでいたのです。
まー、霊というものはどこにでも存在する訳で、気にしなければいいのでしょうが...。
しかし、とりあえず今回は一晩だけの宿泊です。
いくら私があがいたとしても、主人が面接に受からなければ話は始まりません。
何も決まっていないのに、心配などしても取り越し苦労もいいところです。
色々な思いが頭の中を堂々巡りしながら、なかなか寝付けない夜を私はそこで過ごしたのでした。