さて9月に入り、両隣の子供達ケイルブとジャックは、半日だけのナースリーに通うようになっていました。
そんな一時的な静けさがまだ続いていた11月5日。
そう、11月5日といえばボンファイアナイト。
その日の朝から、私達長屋の道路を挟んだ真ん前にあるパブの周辺で、ロープを張り通行止め用の三角ポールを置いて、何やら作業をしている人達がいました。
私はそれを見て、「パブで何かあるのかなあ?」くらいにしか思わなかったのですが、夕方になり、今度は一台の消防車がパブの駐車場内に待機しているのが見えたのです。
うーん、これはもしかすると、いやもしかしなくても、パブで今晩花火を揚げる準備をしているに違いありません。。
しかしです。
こんな民家の近いパブの駐車場で、花火を揚げるなんてどんなもんなのか疑問に思いましたが、でもまあ、消防車も待機していることだし、もしもの時にはすぐに消火してくれることでしょう。
という事で、そんな疑問もどこへやら、夜の7時過ぎぐらいから花火が打ち揚げられました。
通りには、結構沢山の人だかりが出来ています。
花火が揚がる前は、民家の前だからそれほど大きな花火は揚がらないだろう、などと思っていたのですが、とんでもない。
どでかいのが、どんどん引っ切り無しに空高く飛ばされていくではありませんか。
それに、火の粉も一緒にそこら辺りに舞い落ちて来ます。
「おい、おい、おい。ちょっと近すぎるんじゃないかい?」
そんな私の心の叫びとは別に、私達家族三人は、リビングの大きな窓にへばりついた状態で、その華やかに舞い散る花火を見入っていました。
あまりに近すぎて、首が少々疲れましたが...。
勿論、ヨシヨシにとっては生まれて初めての大きな花火で、とても嬉しそうに夜空を見上げていたのを覚えています。
日本にいたら、絶対こんな体験は出来なかったことでしょう。
その夜、周辺の民家の庭では、真夜中頃まで花火が揚げられていました。
果たしてこの花火が、この家に引っ越して来て唯一、「良かったかも」と思える出来事だったのではなかったでしょうか。